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イオンスタイル有明ガーデンの売場から感じた“脱GMS”の意識

イオンリテール(千葉県)は5月15日、東京・有明エリアの大型商業施設内に「イオンスタイル有明ガーデン」を開業した。都内屈指の人口増加エリアにオープンした同店。前編では生鮮3部門の売場を解説した。後編では、注目の総菜売場のほか、日配、加工食品、菓子、酒類などの売場を見ていく。(調査日7月10日、19日)※本文中の価格はすべて本体価格

「潜在力」を秘めた総菜売場

 注目の総菜売場は、駐車場に通じる入口の近くに配置する。

 壁面にピザコーナーを6尺、量り売り総菜の「リワードキッチン」を18尺で展開するほか、焼き鳥や揚げ物、焼き魚などで48尺のスペースを割いている。

 ピザコーナーでは、「マルゲリータ」(1ホール580円、1/4カット148円)など6品目を販売。「リワードキッチン」では「濃厚デミグラスソースのまんまるハンバーグ」などおかずメニュー15品目のほか、サラダ11品目、ミートデリ10品目を扱う。

弁当コーナーで販売する「魚屋の焼魚弁当(銀鮭)」

 そのほか、壁面では、「グリルチキン照焼」(298円)、「豆乳入りだし巻玉子」(450円)、「餃子」(6個200円、20個597円)、「焼鳥」(10本598円)、「とんかつ」(398円)、「コロッケ」(50円)など各種総菜を販売している。

 島陳列では、「寿司」「サラダ」「麺」「弁当」などを並べている。とくに力を入れているのが寿司で、多彩なラインアップを提供する。調査日は「10貫」(698円)、「まぐろづくし9貫」(1480円)、「七種の海鮮魚河岸丼」(498円)などを販売するほか、週末は「紅ズワイガニを楽しむ魚河岸丼」(598円)もラインアップに加えていた。ほかにも「お稲荷」「中巻」「穴子にぎり4貫」などを揃えており、品揃えは多様だ。

5貫入りのような食べきりサイズの寿司も充実させている

 総菜売場のスペースは広く、対面販売(リワードキッチン)のようなきめ細かなニーズに応える商品政策も導入しており、機能的な売場と言える。ショッピングセンター全体にお客が入るようになれば、こうした取り組みが力を発揮すると思われる。潜在力を持った売場と言えよう。

トップバリュをベースとした豊富なラインアップ

 日配では、和日配は青果、総菜と併設させるかたちで売場を展開、洋日配はエスカレーター側の入口から見て右サイドでゾーンを形成する。

 和日配は「漬物」「水物」「練物」「揚げ・豆腐」「納豆」という順でそれぞれコーナーを展開。基本はトップバリュ商品にこだわり商品を絡めた商品構成となっている。たとえば、豆腐では「相模屋食料・絹400g」(75円)をベースに、「京とうふ藤野」、「むつみ高尾にがり」などのこだわり商品を差し込んでいる。納豆も「タカノフーズ」やトップバリュ商品をベースとしつつ、こだわり商品を扱うことで品揃えに幅を持たせている。

 加工食品も豊富なラインアップが特徴だ。ナショナルブランド(NB)の売れ筋商品とトップバリュ商品を基本としつつ、全国の銘品や輸入商品、健康食品などを豊富に揃える。

 たとえば調味料売場の醤油コーナーでは、北海道の「はぼまい昆布しょうゆ」、群馬の「正田醤油」、埼玉の「柴峰醤油」、石川の「ヤマト醤油」など全国6地区の有力メーカー商品19品目を品揃えする。ポン酢やドレッシング、つゆなどについてもローカルメーカー商品、外国産商品を豊富に揃え、お客の選択肢を広げている。

 菓子も同様に品揃えにバラエティを持たせており、スナック菓子やチョコレート、グミなどは輸入品コーナーをそれぞれ設けており、クッキーや米菓では国産のこだわり商品も充実させていた。

 健康関連商品では3尺8本の売場で「ヴィヴィーガンの方に- for vegan」(完全菜食主義)」「カラダをキレイにする、自然の力。グリーンアイオーガニック」「プロテイン足りてますか」と記したパネルを掲げ、各テーマにあわせ商品を配置していた。どの売場にもトップバリュ商品が差し込まれているのが特徴的だ。こうした商品ラインアップは強力な調達力とバラエティ豊かなPBを持つイオングループだからこそ実現可能であり、ほかのチェーンはなかなか真似できるものではないだろう。

ワインの品揃えは圧巻!

 「イオンリカー」の屋号を掲げる酒類売場は、約40坪(歩測)で展開する。

 圧巻だったのはワインの品揃えで、「フランス」(ボルドー赤・ブルゴーニュ・フランス白)をはじめ、「イタリア」「スペイン」「ドイツ」と、欧州産を充実させており、それぞれコーナーとして展開。そのほかにも「イオンワイン販売員推奨ワイン」「イオン直輸入ワイン」「有機ワイン」「ロゼ」「スパークリングワイン」「大容量ワイン」といった具合に、非常に細かい分類で各商品を陳列している。

 冷蔵のワインセラーは12尺のスペースを割き、フランス産をベースに高額商品約180種を揃える。価格帯は5000円~13万円までで、1万円前後の商品を豊富に揃えているようだ。

東京産の酒類を充実させているのも特徴の1つ

 ワインと同じく力を入れているのが日本酒で、壁面で「一ノ蔵」「七賢」「初孫」「加賀鷹」「福寿」など地方7銘酒を配置する。平場では、3尺棚1本も使って「越乃寒梅」「久保田」「八海山」などの銘酒をコーナー展開する。そのほか、国産・輸入ウイスキーの品揃えも豊富だ。ビール系飲料や缶チューハイなどは売れ筋中心のラインアップとしているようだ。どのコーナーからも商品へのこだわりが感じられ、買物を楽しむことができる売場となっている。

 銘店コーナーにも注目だ。サービスカウンターと合わせて約15坪(歩測)のスペースで展開する同コーナーは、外国人向けの土産コーナーとしての役割を持たせているようだ。コロナショックによりその役割を十分に果たしているとは言えないが、「常盤堂」「東京風月堂」「文明堂」「栄太郎本舗」「中村屋」「ひよこ本舗吉野堂」など、各銘店の商品を常時豊富に揃えており、インバウンドが戻ってくれば強力な武器になるはずだ。

各売場から感じる“脱GMS”の意識

 「イオンスタイル」屋号の店舗は、売場すべてが直営のケースが多い。だが、この有明ガーデンはテナント出店であり、食品に特化した店であるため、ほかのイオンスタイル店舗とは多少状況が異なるようだ。「総合スーパー(GMS)の食品売場」でも、「食品スーパー」でもない、イオン独自のスタイルであるように思う。

 イオングループの食品売場の多くは、GMSとしての「量感」を重視しており、単品販売が目に付くが、この店は「質感」と「商品選択」を重視した商品構成であり、各カテゴリから“脱GMS”の意識を感じた。「食品専門店」をめざしているのだろうか。「都市型」の食品売場を構築するには、「質」と「選択の幅」が重要であると認識しているのかもしれない。売場からは「食品スーパー企業が運営する食品スーパー」との違いをアピールしたいという意志を感じた。

店舗周辺には高層マンションが建ち並ぶ

 コロナショックで開店が延期し、インバウンドも期待できないうえ、併設するマンション部への入居も遅れているようで、状況はとてもよいとは言えない。ただ、店舗周辺には高層マンションが多く、同じくタワーマンションが建ち並ぶ豊洲地区にも近い。週末は多くの来店が期待のできる地区である。インバウンドが戻り、マンションの入居が進めば、有明の新たな「顔」となる店になるのは間違いない。

開店日 2020年5月15日
所在地 東京都江東区有明2-1-8(住友不動産ショッピングシティ有明ガーデン1階)
アクセス ゆりかもめ「有明」駅徒歩2分、東京臨海高速鉄道臨海線「国際展示場駅」徒歩4分
店舗面積 約2285㎡
店舗構造 鉄骨5階建て
営業時間 8:00~23:00
駐車台数 約1900台、駐輪台数約1700台