ヨークベニマル(福島県/大髙耕一路社長)は2月28日、福島県郡山市に「ヨークベニマル西ノ内店」をオープンした。旧「イトーヨーカドー郡山店」の退店跡にヨークベニマルが開業した大型商業施設「ヨークパーク」の核店舗で、初年度年商目標42億7000万円という意欲的な目標を設定した注目店舗だ。食品については日常からハレの日までを地域No.1の品揃えで対応すべく、チャレンジングな商品政策(MD)を各部門、各売場の随所に取り入れている。西ノ内店の食品売場の全体像を写真を中心に速報する。※文中の価格は税抜
年商目標40億円超の新たな旗艦店

西ノ内店はJR各線「郡山」駅から北西へ約2㎞、2024年5月に閉店した旧「イトーヨーカドー郡山店」を承継し、ヨークベニマルが新たに開発した大型商業施設「ヨークパーク」の1~2階に位置する。1階が食品売場、2階が衣料品売場となっており、食品売場が2月28日に先行オープン、衣料品売場は3月14日の全館グランドオープンと同時に営業を開始する。
なお「ヨークパーク」には、「ロフト」「赤ちゃん本舗」などセブン&アイグループの専門店のほか、「ユニクロ」「DAISO」「ABCマート」「JiNS」など人気テナントが出店する。館全体で広域からの集客が見込めるため、ヨークベニマルとしても週末は20㎞圏内からの来店を想定する。
周辺は市内でも交通量の多い「うねめ通り」と「内環状線」が交差する場所であり、アクセスは良好。足元商圏は市内でも比較的所得の高い住民が多いエリアで、「近隣の桑野店は23年1月の開業以降、好調に推移している」(大髙社長)という。1㎞圏内の人口は7447世帯/1万5025人、3㎞圏内は6万5266世帯/13万7248人となっている。
競合店としては西友(東京都)が運営する商業施設「ザ・モール郡山店」が南東約1.2㎞にあるほかは、同じうねめ通り沿いに600m南に離れた「ヨークベニマル桑野店」をはじめ、自社店舗が多い。ただし20㎞圏内からの来店を考慮すると、「スーパーセンタートライアル郡山八山田店」や、イオンモール(千葉県)が旧「ショッピングモールフェスタ」を全面建て替えするかたちで27年春をめどに開業を予定する「イオンモール郡山」などとの競合も予想される。

こうした条件下でヨークベニマルは西ノ内店を新たな旗艦店モデルに位置付け、初年度年商目標を42億7000万円に設定。大髙社長は「高いレベルの売場に挑戦するいい機会。イトーヨーカドー時代の特徴であった豊富な品揃えに、ヨークベニマルが得意とする『地域性』と『鮮度・出来立て・ライブ感』を加味できれば、(年商目標の)達成は可能だ」とした。
先行オープンした食品売場の面積は2942㎡。大髙社長が言うように、売場各所で「新たな挑戦」が行われている。以降、各売場の特徴を見ていこう。
青果●ジャンルごとの幅広い品揃えとインストアのカットフルーツで集客
売場トップの青果売場は平台の高さを抑えて開放感を演出するほか、各柱には縦型のサイネージを導入し、売場に並ぶ商品などに関する情報を発信する。
各カテゴリーのラインアップは既存店よりも大きく広げている。たとえば旬のイチゴは平台正面で「国産いちご」(1パック398円:オープニング価格)を訴求する一方、エンドでは「あまりん」(同2500円)、「しなのベリー」「さくらももいちご」(各同980円)など高級イチゴを提案する。
さらに売場の一角には、ガラス越しに加工スペースを設けたカットフルーツのコーナーを配置。各種サイズの盛り合わせのほか、フルーツを盛り込んだ「おはぎ」「杏仁豆腐」「プリン」など多彩なアイテムを並べる。
和日配●価格、品揃え、地域対応に全力!
青果と鮮魚の間には和日配売場を配置。プライベートブランド「セブンプレミアム」「セブン・ザ・プライス」で価格訴求しつつ、豊富なナショナルブランド(NB)のほか、各カテゴリーで地元商品も差し込んでヨークベニマルならではの「地域性」を打ち出す。
鮮魚●”市場のライブ感”で新鮮な魚介類を売り込む
食品売場の第1コーナーにあたる鮮魚は、圧倒的なライブ感を打ち出す。対面コーナーは壁面のサイネージ、活魚が泳ぐ生け簀、そして平台ケースに並ぶさまざまな種類の丸魚が相まって、見るだけでも楽しい雰囲気だ。
刺身は「朝〆お刺身」など鮮度を追求したアイテムのほか、地元郡山の味噌を使った「自家製なめろう」や、福島県葛尾村で養殖された「活バナメイエビ」など希少な商品も販売する。
精肉●「福島牛」を軸とした価値提案型の売場づくり
精肉は地元の銘柄牛「福島牛」をメーンに据え、売場最前部では冷蔵ショーケースに部位ごとの塊肉を並べる。ステーキ肉や焼き肉用のスライスに加え、挽き肉を店内で手ごねした「生ハンバーグ」や、もも肉に独自調合のスパイスを使って仕上げた「ローストビーフ」など加工肉でも福島牛を推している。
総菜●全店最大級の売場で専門性をさらに追求
総菜はヨークベニマル全店でも最大級の売場面積で展開し、西ノ内店限定商品も投入した。洋総菜の「グラティネ」、健康志向の米飯「穀八屋」、魚総菜「潮菜」、アジアン・鶏総菜の「紅鶏」などジャンルごとに屋号を掲げて、専門店が集積した”デパ地下”のような空間づくりを志向する。
なかでも注目したいのは「グラティネ」の商品。郡山市内にある有機農場の野菜を一部使用した素材にこだわった各種サラダのほか、「スモークサーモンのキッシュ」(880円)、「ミートソースのカルツォーネ」(798円)、さらに石窯を使って店内で焼き上げたピザ(各種598円)など、専門店レベルのアイテムが並ぶ。
また、「いなほ屋」では、店内で蒸しあげたおこわを盛り込んだ弁当類のほか、蒸し立ての「赤飯」「山菜おこわ」などの量り売りも行う。
その他●冷凍フルーツ、スパイス、銘店コーナーも充実
このほか、冷凍食品はおかず・弁当商材など日常づかいのアイテムを値頃感ある価格で販売。それに加え、店内で急速冷凍したカットフルーツや野菜のほか、スイーツ類も充実している。
加工食品では各カテゴリーで幅広い価格帯・ラインアップを追求。とくにスパイス類やオリーブオイルなどの調味料はPB、NBの定番品から、国内外の専門メーカーによる高質アイテムまで取り揃える。
また、食品売場外の1階中央部には、イトーヨーカドー時代に好調だった銘店コーナーを引き継ぐ形で直営の売場を配置。地元のメーカーや専門店の商品を中心に、菓子、酒類、塩干など多様なジャンルを扱う。
ベニマル社内にとっては「考える」ための店に
ヨークベニマルとしても過去に類を見ない規模とレベル感で、各部門で新たなチャレンジを盛り込んだ西ノ内店。大髙社長は「ヨーク・ホールディングス全体のモデル店舗としても成長させていく」と意気込む。そのうえで、「(ヨークベニマル)社内では25年度は『考える店』を目標にしている。”西ノ内店まるごと”は無理だが、一つひとつの売場の取り組みを見て、何か役立つものがあれば自店に持って帰ってもらいたい」とした。
西ノ内店を起点に、ヨークベニマル、そしてヨーク・ホールディングス全体の店づくりの方向性に革新が起こるのか。3月14日の全館グランドオープンを含め、今後の動向から目が離せない。
◆ヨークベニマル西ノ内店の詳細なレポートや大髙耕一路社長のインタビューなどは雑誌「ダイヤモンド・チェーンストア」および「DCSオンライン+」で近日公開予定です。ぜひご一読ください。