コンビニエンスストア業界が転機を迎えている。これまでは大手3社による出店競争によって拡大を続けてきたコンビニエンスストア市場だが、ここにきて店舗の純増数の伸び率が鈍化。出店による拡大競争から質的な競争に突入する見通しだ。オーバーストアの影響が顕在化するなか、大手は次に何をねらうのか。
コンビニの「変化対応力」に異変?!
「変化に対応していけば、飽和にはならない」
セブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)の育ての親であるセブン&アイ・ホールディングス(東京都)の名誉顧問、鈴木敏文氏の言葉である。
鈴木名誉顧問の発言はつまり、セブン-イレブンが顧客のニーズを捉えて変化に対応していけば、競合他社との差別化が図られ、少なくともセブン-イレブンには飽和は到来しないという意味だったとみられる。
しかし、そんなセブン-イレブンにも“飽和”の兆候が見られはじめている。同社はここ数年、年間1000店以上の大量出店を続けてきたものの、ここにきて急ブレーキがかかり、2020年2月期の純増数は150店に留まる見込みだ。
日本フランチャイズチェーン協会が発表している加盟コンビニチェーンの2018年の既存店ベースの売上高の伸びは対前年比0.6%増と低空飛行であり、今年7月には全店ベースの売上高が77カ月ぶりに前年同月割れとなった。
もちろん、コンビニエンスストア同士の競争だけでなく、ドラッグストアが食品の安売り攻勢を仕掛けたり、食品スーパーがコンビニのお株ともいえる即食商品や総菜を拡充したりと、コンビニエンスチェーンに揺さぶりかけていることも無縁ではないだろう。ある大手小売業の幹部は、「競争激化を背景に、コンビニの変化対応力に注意の黄色信号が点灯している」とも指摘する。
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次のM&Aの主役はどこだ?!
潰えたローソン・ミニストップ経営統合の可能性
これまで、M&A(合併・買収)とは無縁の経営を続けてきたセブン-イレブンが、この先コンビニチェーンを買収することはあり得るのだろうか。それはおそらく「ノー」だろう。だが業界2位のファミリーマート(東京都)、3位のローソン(東京都)はさらなるM&Aに踏み切る可能性が考えられる。
M&Aの主役として、最有力視されていたのがローソンだ。イオン(千葉県)が総合商社の三菱商事と2008年に資本業務提携して以降、くすぶり続けてきたことでもあるが、三菱商事・ローソン連合の切り札と言われていたのがミニストップ(千葉県)との経営統合だった。ファミリーマートがユニー傘下のサークルKサンクスを取り込んで2位に浮上したこともあり、その公算は一段と高まった。
ローソンがミニストップと経営統合すれば、2位に浮上したファミリーマートと店舗数で並ぶ。業界では誰もがこの“足し算”を予想した。だが、昨年12月に三菱商事はイオンとの提携を解消してしまっており、その再編のシナリオは潰えたとみていいだろう。ただ、三菱商事はグループに食品卸大手の三菱食品を保有していたり、食品メーカーに出資していたりと巨大な流通経済圏を形成している。今後も買収相手を物色する動きは続くとみられる。
コンビニエンスストアは装置産業であり、加盟店に対し、情報・物流システムを提供するために、定期的な周期で莫大な投資が必要となる。商品開発、加盟店支援策にもコストがかかるので、規模の利益が必要となる。上位3社と中堅・中小コンビニとの格差が開く現状では、中堅・中小チェーンの“一発逆転”の奇策は考えられず、大手の傘下に入るのが賢明といえるだろう。
コンビニチェーンの多くはフランチャイズ加盟店を抱えており、各加盟店オーナーを説得して統合を進めるハードルは高い。だが、オーバーストアに超業態間競争の激化と環境変化は目まぐるしく、もはや再編待ったなしの様相だ。(次回へ続く)