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地方の大都市出店モデル 「ヤオコートナリエ宇都宮店」 注目のデリカ商品を一挙レポート

 ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)は2月9日、最新店「ヤオコートナリエ宇都宮店」(以下、トナリエ宇都宮店)をオープンした。ヤオコーにとって認知度が低いエリアへの挑戦となる同店は、同社が「北関東エリアのモデル店」と位置付け、今後、地方の大都市に侵攻するうえでの足がかりとしたいとする店舗だ。そのため最新のMD(商品政策)が多くみられ、本稿では総菜、ベーカリーの注目商品をレポートする。

ヤオコーが出店した「トナリエ宇都宮店」

商勢圏の“飛び地”に
出店したねらい

 トナリエ宇都宮店がオープンしたのは、JR「宇都宮」駅西口から約 100mの商業施設「トナリエ宇都宮」の地下1階。栃木県へ出店するのは19年ぶりで、県内の店舗数もこれで6店目と少ない。最寄りのヤオコー店舗でも約40km離れており、認知度の少ないエリアへの出店だ。
 
 ヤオコーは同店を、「北関東エリア最大の都市である宇都宮市への商圏エリア拡大の布石」、および「地方の大都市出店モデル」と位置付ける。
 
 このような商業施設内への出店で思い起こされるのが、2017年11月、JR「浦和」駅東口前の商業施設「浦和PARCO」の地下1階に出店した「ヤオコー浦和パルコ店」(埼玉県さいたま市)だ。駅前の商業施設内への出店という従来のヤオコーにない立地への挑戦だったが、同店は現在、ヤオコーのなかでもトップクラスの売上を稼ぐ繁盛店に成長している。
 
 トナリエ宇都宮店は、ヤオコーのドミナント形成エリアから離れた立地となるが、この浦和パルコ店の成功が後押しとなり出店に至ったという。

デリカ売上高だけで
全体の20%めざす

「トナリエ宇都宮店」のベーカリー・総菜売場

 トナリエ宇都宮店の店舗面積は2341㎡で、取い扱いSKU数は合計1万3060と幅広い品揃えを提供する。とくに販売を強化しているのがデリカだ。全体で340SKUを揃え、売上高構成比で20%を目標に設定する。

 そのため、総菜・ベーカリー部門では多くの新商品や、既存店よりも販売を強化した商品が多数見られた。ここからはヤオコーがとくに業界関係者から注目を集める、トナリエ宇都宮店のデリカ商品を紹介しよう。

ベーカリーの柱に成長
青果と連携するスイーツ

青果部門とベーカリー部門で連携し開発したスイーツの売場

 まず、ベーカリー・総菜売場導入部の冷蔵平台で訴求しているのが、青果部門とベーカリー部門で連携し開発したスイーツだ。青果部門のバイヤーが開拓した、地元栃木県産の苺「とちあいか」を使用したタルト、デニッシュ、ミルフィーユ、プリンを販売する。

 ヤオコー執行役員デリカ事業部長の奈雲春樹氏は「ベーカリー部門のスイーツは業界に先駆けて当社では数年前からスタートし、改良を重ねてきた。今ではベーカリー売上高の3分の1ほどを占めるまでに成長している」と述べ、同店でもヤオコーならではの商品として訴求したい方針だ。

「寄せプリン」は全店展開へ

「とちあいか」をトッピングした「苺の寄せプリン」

 スイーツのなかでも注目したいのが、「なめらか寄せプリン」だ。デリカ生鮮センターで製造したプリンを店内で丁寧に寄せて盛り付けた商品である。すでに最近の新店で販売しているものだが、今後、全店導入を進めるという。「このなめらか寄せプリンに旬の果実を使って、季節ごとに異なる提案ができるようにしたい」(奈雲氏)として、トナリエ宇都宮店では「とちあいか」をトッピングした「苺の寄せプリン」(498円:以下、税抜)を販売している。

ベーカリーではさらに
素材のよさを追求

 ベーカリー部門では、素材にこだわった商品が多数見られる。なかでも、北海道産小麦を使ったフォカッチャや、店頭で3日間ラム酒に漬けたレーズンをシナモンシュガーと合わせたこだわりのレーズンパンを訴求していた。

北海道産小麦を使ったフォカッチャ

こだわりの魚総菜
新ブランド「漁火GRAND」

 次に総菜売場を見ていこう。

 とくに、注目したいのが、ヤオコー最大規模で展開する魚総菜の売場だ。店舗周辺には所得の高い層が多く住むことから、こだわりの魚総菜を提供する新ブランド「漁火GRAND」を導入する。

だわりの魚総菜を提供する新ブランド「漁火GRAND」

 取材日は、パン粉付けも店内で行う特大サイズの「大海老フライ」(1尾398円)や、店内でカットしたするめいかを使ったメニューを、唐揚げや煮物、南蛮酢など多様なメニューで提供している。

特大サイズの「大海老フライ」(1尾398円)
店内でカットしたするめいかを使った唐揚げ

 「大海老フライ」については、同じ素材を使った米飯商品も展開している。「大海老フライ巻き」や「大海老天むす」(ともに598円)などで、素材の特徴を巧みに生かした商品開発は行われている。

高級おにぎりに炙りいなり…
手軽な米飯類を深掘り

 米飯では、おにぎりやいなり寿司など手軽に楽しめる商品でも新しい提案が見られた。

 おにぎりでは、ヤオコーが提案する米のブランド「幸米」と、有明海産海苔を使い“高級おにぎり”と呼ぶ商品を投入していた。「いくら」「銀鮭西京味噌」「焼うに大葉」の3種を各298円で販売する。

ブランド「幸米」と、有明海産海苔を使った“高級おにぎり”と呼ぶ商品を投入している

 いなり寿司では、店内で皮から炊き上げて出汁の“じゅわっ”と感を出した「狐珀(こはく)いなり」を大きくコーナー化した。米飯のなかには天かすを入れることで食感や風味に特徴を出している。スタンダードか「だし香る狐珀いなり」(5個・298円)だけでなく、「炙り・すだち」(5個入り・358円)も展開。ヤオコーではすでに日販5万円を超えるカテゴリーに成長しているという。

「狐珀(こはく)いなり」コーナー
「炙り・すだち」(5個入り・358円)

店内で蒸し上げる
上質素材の茶わん蒸し

  おにぎり、いなり寿司の隣で展開するのが、「寿司屋の茶わん蒸し」コーナーだ。店内コンベクションで蒸し上げるこだわり商品で、すでに新店で販売していたが、トナリエ宇都宮店では、ラインナップを広げて大きくコーナー展開した。うどん入りでボリュームを出した商品や、うに、かにあんといった豪華な具を入れた商品など計4種類を販売している。

「寿司屋の茶わん蒸し」コーナー
「寿司屋の茶わん蒸し・うに」(398円)

 このようにトナリエ宇都宮店は、今後の成長ためのモデル店とするがゆえに、ヤオコー渾身の新MDが多数盛り込まれていた。ヤオコーは同店を、浦和パルコ店のように繁盛店に導くことができるのか、同社の新店のなかでもとくに注目したい店舗である。


【ヤオコートナリエ宇都宮店 概要】
所在地 :栃木県宇都宮市駅前通り1-4-6
開店日 :2月9日
売場面積:約2341㎡
年商目標:19億円(初年度)