長野県内で30店舗超のスーパーマーケットを展開するツルヤ(掛川健三社長)。同社はオリジナル商品の開発に力を入れており、加工食品・菓子、飲料、酒類、日配品など、ローカルスーパーとしては異例の規模でプライベートブランド(PB)を投入している。その品質の高さは地域住民のみならず、観光客や別荘族からも熱烈な支持を集め、業界関係者からも大きな注目を浴びている。ツルヤのPBはなぜ強いのか。
素材・製法にとことんこだわる!
ツルヤは長野県東部の小諸市に本拠を置くローカルスーパーだ。現在は県内全域に店舗網を広げており、19年2月には諏訪市に「上諏訪店」を出店して店舗数は34店となっている。店舗運営面では徹底的な標準化を追求しており、売場面積は2000㎡前後、売場レイアウトや商品政策(MD)は各店舗で共通したものとなっている。
標準化を図ることで運営コストを下げる一方、力を注いでいるのがPB商品の開発だ。長野県内の生産者やメーカーと共同開発した商品が多くを占め、化学調味料不使用、塩分の低減、有機素材の使用など、素材や製法にとことんこだわっているのもツルヤのPBの特徴である。
こうした品質の高いPBは、顧客から熱烈な支持を集めている。業界関係者からの注目度も高く、ある有力スーパーマーケット企業のトップも「ツルヤさんのPB開発の手法には学ぶところが多い」と舌を巻く。
買って食べてみたら人気の理由がわかった
なぜここまでツルヤのPBは強いのか? 実際に商品を購入して食べてみると、その理由はすぐにわかった。単純明快、とにかく「美味しい」のである。以下、筆者が注目した商品をいくつか紹介しよう。
※以下、すべて税別/2019年2月26日時点の価格
①適度な辛さがクセになる!「バターチキンカレー」(249円)
まずはレトルトカレーから。ビーフカレーやポークカレーなどもあるが、注目したいのはバターチキンカレー(249円)だ。四国産の鶏肉と信州産のエリンギ、リンゴを使っており、化学調味料は使用していない。製造者はキノコの生産で知られるホクト(長野県)傘下のレトルト食品メーカー、アーデン(同)という企業だ。
皿に移してレンジで3分加熱。早速食べてみると、予想外にスパイシーだ。バターチキンカレーといえば甘口が主流だが、この商品は「中辛」。カレーにある程度の”パンチ”を求める人も満足いく辛さだろう。具材の鶏肉とエリンギは大ぶりで、かなり食べ応えがある。
②あの「ヤッホーブルーイング」とコラボした「信州高原地ビール」(179円)
国産クラフトビールのパイオニア的存在である「ヤッホーブルーイング」は、実は長野県軽井沢町に本社がある。そんな同社とコラボ開発したのが「信州高原地ビール」(179円)だ。
いくつか種類があるが、ここで紹介したいのはオーガニックビール。パッケージの文言によれば、有機麦芽・有機ホップを100%使用しており、「有機農産物加工酒類製造者」の認証を受けた醸造所で製造しているという。
飲み口はすっきりとした印象で、ホップやアロマの香りが過度に主張することもなく、良い意味で万人受けしそうな味わいだ。オーガニックビール自体が日本ではまだニッチなカテゴリーであるなかで、それをPBとして展開してしまうのがツルヤの凄みである。
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PBそのものが来店動機となっている!
③モチモチの生地がたまらない「オリジナルピッツァ」(399円)
チルドで注目したいのが「オリジナルピッツァ」(399円)だ。家庭向けピザメーカーのジェーシー・コムサ(東京都)との共同開発品(製造も同社)で、ナポリ風生地にトマトソースとチーズを散りばめたシンプルな商品である。
調理は簡単で、250℃のオープンレンジで約4分温めるだけ。もっちりとした生地と薫り高いトマトソースは専門店顔負けのレベルに感じた。もう少しボリュームが欲しければ、同じくPBの「熟成あらびきウインナー」(259円)を適当なサイズにカットしてトッピングすることをおすすめしたい。
④土産品としても最適!圧巻の品揃えの「ジャム」(279円~)
最後に紹介しておきたいのがPBのジャムだ。レジ近くのゴンドラエンドでボリューム陳列されているが、驚くのはそのラインアップの豊富さ。いちごやブルーベリーといった定番商品のほか、「信州ほおずき」「りんごバター」「ルバーブ」などユニークな商品も多く揃えている。土産品やギフトとしても喜ばれそうな逸品だ。
PBそのものが来店動機を生み出している
ここまで紹介してきた商品はほんの一部に過ぎないが、地元メーカーと手を組みつつ、素材や製法にこだわった質の高い商品をツルヤがつくり出していることがわかるだろう。もちろん、それだけに価格は決して安くはない。ナショナルブランド(NB)と比較しても割高な商品も多い。
それでもツルヤのPBが支持されているのは、品質の高さや安全・安心を打ち出していることに加え、NBはない切り口の商品コンセプトがあるからだ。それが「買物の楽しさ」を生み出し、「ツルヤに行きたい」という来店動機につながっているのである。支持されるPBをつくり上げるうえで、ツルヤのPB戦略は大きなヒントになるはずだ。