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ネットとリアルの融合、
デジタル・マーケティングの革新、
O2O、ビッグデータ分析の最前線
カスタマー・エクスペリエンスを実現するリアルタイム・リテーリング

流通業界は「少子高齢化」といった社会環境の変化だけではなく、「消費増税」を目前にした経済環境の変化、さらには「スマートフォンの普及」、「ソーシャルメディアの利用拡大」によるデジタル環境の変化など、対応すべき多くの課題に直面している。なかでも流通業と消費者(顧客)がよりシームレスな関係で結びつく「オム二チャネル時代」の到来は、流通業の顧客接点の在り方を根本から変える可能性を秘めていると言えよう。ダイヤモンド・フリードマン社は2013年6月11日、東京・表参道の青山ダイヤモンドホールで、「ダイヤモンド リテール・カンファレンス2013 オムニチャネル時代の新・成長戦略ビジョン」を開催し流通業変革の最新動向を紹介。当日は小売業・流通業関係者だけでなくサービス業、消費財メーカーなど幅広い業種から大勢の聴講者が集まった。

 

主催 株式会社ダイヤモンド・フリードマン社
協賛 SAPジャパン株式会社
後援 株式会社ダイヤモンド社

 

 


SESSION1

「ネットとリアルの融合による『Tポイント』の取り組み」

カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 常務取締役

北村和彦 氏

 


SESSION2

「B2C新時代~24時間365日のおもてなしで売上・利益を最大化する『デジタル・マーケティング基盤』とは」

SAPジャパン株式会社 クラウドファースト事業本部
プリンシパルコンサルタント

村田聡一郎 氏

 


SESSION3

「O2Oのプラットフォームとして進化する『Shufoo!』の最新戦略

凸版印刷株式会社 メディア事業推進本部 副本部長

山岸祥晃 氏

 


 

SESSION1

「ネットとリアルの融合による『Tポイント』の取り組み」

 

カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 常務取締役

北村和彦 氏

 

「Tカード」のアクティブ・ユニーク会員数は1年で500万人以上拡大

 

 カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が全国に展開するTSUTAYAは当初ビデオレンタル店として創業し店舗数を拡大してきた。そのレンタル会員証として発行してきたのが現在の「Tカード」である。現在、TSUTAYAは全国に1470店舗あり、昨年度の実績でレンタル売上では国内トップの1837億円、書籍の販売も全国トップの1097億円などとなっている。TSUTAYAでのDVDレンタル枚数は2012年度が7億5540万枚となった。映画館の入場者数はここ数年1億数千万人台でほぼ横ばいの推移だが、DVDレンタル数は1人あたりの枚数が29枚で過去最高となるなど順調に拡大している。

 

 レンタル会員に向けの発行から始まった「Tカード」だが、発行枚数だけならばすでに日本の人口を上回る1億4000万枚以上。それに対して直近一年間に「Tカード」を利用いただいているアクティブ会員、かつ複数枚お持ちの方は一人として数えたユニークな会員数は13年5月末で4560万人で、1年前に比べ515万人増えている。会員数が伸びている理由として、レンタル会員証としての機能だけではなく、クレジット機能を搭載したカード、ポイントカードとしてポイントを貯めるシーンが増えていることが挙げられる。

 

 

佐賀県武雄市の図書館でも「Tカード」が利用可能に

 

 ポイントアライアンスは全体では100社・団体、5万8254店舗あり、そのうちポイントが貯まるのが35社、貯めて使えるのが41社、ポイント交換が24社などとなっている。コンビニではファミリーマートが提携しており、スーパーやドラッグストアの提携企業も増えてきた。従来はTSUTAYAだけが「Tカード」を発行できたが、今では36企業、2万8655カ所で発行可能になっている。提携数で100社・団体と言ったが、最後の団体と言うのは佐賀県武雄市である。その武雄市図書館で4月から「Tカード」が利用できるようになった。

 

 武雄市図書館では、蔵書約20万冊のうち半数程度しか貸出していなかったが、我々が運営に乗り出したことで全ての蔵書の貸し出しを可能にした。さらに本来なら書籍を貸すのが図書館の役目だが書籍・雑誌販売も行っており、図書館の中にはスターバックスも設置した。また、貸出用にセルフレジも導入し、貸出料金は無料だがセルフレジを使用することで省力化に貢献したということで3ポイントを取り加算する仕組みも入れている。それまで武雄市図書館の利用者は1か月2万人程度だったが、4月以降は月間10万人程度まで増えた。また図書館利用登録者のうち「Tカード」を利用した人数は1万3000人にのぼる。

 

 T会員の年代別構成をみると、当初のレンタル会員証の頃は20代から30代が中心だった。提携企業が増えたことで、例えばカメラのキタムラが加わった時には30代から40代の子供を持つ主婦層が増え、さらに趣味を楽しむ50代以上の男性も加わってきた。スーパーの提携企業が増えれば比較的高齢の女性会員が入ってきて、コンタクトレンズの販売会社では女性中心、ファミリーマートでは20代以下から未成年までといったように、アライアンス企業が増えたことで日本全体の人口クラスターに近くなっている。20代では人口の69.3%、30代では58.7%、40代では53.6%、50代39.8%、60代でも24.4%とまで拡大した。県別では、最も保有率が高いのが沖縄県の52.8%、鹿児島県51.9%、茨城県50.6%などが続く。これらの県では県民の2人に1人が「Tカード」を持っているわけだ。また50%以上の県では20代の会員化率が90%以上となっているというデータもある。

 

 

Yahoo! JAPANと業務提携しネットとリアルの融合を推進

 

 これまで提携企業を増やすことで会員数も伸びてきた。給油でもポイント、コインパーキング利用でもポイント、ユニークな例ではスルガ銀行ではカードローンに「Tポイント」を活用しており、返済にも「Tポイント」を使うことができる。またメーカーにも提携企業が広がっている。そして現在取り組んでいるのが、大手企業の提携から地域への展開だ。武雄市図書館もその一例。さらにYahoo! JAPANと12年6月に資本・業務提携で合意した。Yahoo! JAPANとは10年7月に包括的業提携に乗り出したが、今回はそれをさらに強化・発展させた形となる。

 

 Yahoo! JAPANではネット通販よりヤフオクの方が売上規模は大きい。従来、Yahoo! JAPANが扱っていた独自のポイントプログラムを、全て「Tポイント」に切り替えることにしており、システム統合を終えて7月から「Tポイント」に統一されることになっている。これによりヤフオクのようなC2Cの取引でも、ポイントが加算されるようになる。「Tカード」のアクティブ・ユニーク会員が約4500万人、Yahoo!のアクティブIDが2800万。もちろん重複している会員もいるため、単純に足し算はできないが、今後6000万人まで会員数が増えると考えている。

 

 ネットとの融合はO2Oマーケティングには不可欠となる。ネットで情報を検索してリアル店舗で購入するという消費者は多く、Online to OfflineのいわゆるO2Oが重視されている。我々としては、そのほかにもOnline to Online、Offline to Online、Offline to Offlineの3つがあると考えている。ネットとの融合であらゆるシーンに対応できると判断した。メールやネット広告による店舗への送客だけでなく、「Tサイト」や「Tモール」からネットサービスへの送客、POSクーポンによるネットサービスへの送客、クーポンやPOSクーポンによる店舗から店舗への送客などだ。この場合、エリアアライアンスとして地方の中小店舗の加盟店数が増えることで、「Tカード」のデータから分析したPOSクーポンを発行し他の店舗に送客するという効果が期待でき、地域の活性化にも貢献できるだろう。エリアアライアンスの店舗数は12年度末で4812店だが、13年度末には倍増以上の1万店を目指している。

 

提携企業にとっては情報漏えいリスクがないことがメリット

 

 「Tカード」をマーケティングツールとして使用するために、参加企業に対しては我々のDBにあるデータを分析用に開放している。約4500万人分のデータを我々は保有しており、日々新しいデータが集まってくる。こうしたデータを要望に応じてカスタマイズして提供する機能を持っており、参加企業にとってはCCCでデータを管理しているので自社で個人情報を保有しないために情報漏えいリスクが軽減できるというメリットもある。また個人情報を格納したDBとポイント情報のDBは分けており、その点でも安全・安心を担保できている。

 

 こうした「Tカード」のデータを活用することが、O2Oマーケティングには不可欠となる。データを解析してみると、これまで勘と経験から導いていた事が、事実とは異なるということを発見する場合も少なくない。参加企業が拡大し、それも大手流通企業だけではなく地域の流通業にも浸透し、さらにメーカーにも範囲が広がることで、より多くのデータを収集し分析が可能になる。その結果として対象の「T会員」へ直接リコメンドすることで提携企業への送客が促進されるとともに、「T会員」にとってもより顧客価値の高い情報やサービスを得られることになる。 

 


 

SESSION2

「B2C新時代~24時間365日のおもてなしで売上・利益を最大化する『デジタル・マーケティング基盤』とは」

 

SAPジャパン株式会社 クラウドファースト事業本部
プリンシパルコンサルタント

村田聡一郎 氏

 

キーワードは無料、無制限、時差ゼロ

 

 スマートフォンの普及と超高速インメモリ・データベースという「2つのデジタル化」の進展の結果、従来の流通業の概念を覆すまったく新しい顧客接点である「デジタル・マーケティング基盤」が実用段階に入ってきている。

 

 スマホはパソコンと違い、24時間電源を切らず、情報は自動的にプッシュされてくる。外出中も持ち歩き、家庭でも1人1台を所有する完全な個人用デジタルデバイスである。人類史上始めての「消費者の懐に入り込んだITツール」と言える。

 

 このスマホを相手先として情報を送るデジタル・マーケティング基盤の特長は「無料」「無制限」「時差ゼロ」である。いったん作り上げてしまえば、情報を1本送るごとの追加コストはゼロであり、その容量は事実上無限大、リアルタイムに送ることができるので時差もゼロ。チラシやクーポンなど従来のメディアでは考えられなかった施策が可能になる。

 

 消費者にとっては、単なる商品情報や売り手都合のクーポンではなく、自分の好みや関心事に合ったお得感のある情報、買いたいものだけを逃さず教えてくれる、「個人コンシェルジュ」。いっぽう流通業にとっては「無料」・「無制限」・「時差ゼロ」で24時間365日働き続ける「売上・利益最大化マシーン」。こうした2面性を実現するのがデジタル・マーケティング基盤なのである。SAPはこのデジタル・マーケティング・システムの提供を開始しており、その事例を含めて紹介する。

 

 

数千万人に、おもてなしを、全自動で提供

 

 消費者が求める個人コンシェルジュとしての機能は「おもてなし」と言い換えてもいいだろう。例えば昔ながらの魚屋の主人は、常連客との会話や過去に買った魚から、好みや家族構成、財布の具合などを総合的に推し量って、今日買うのに最適な魚を提案(=おもてなし)している。一方で魚屋は、今ある商品在庫を常に頭に入れていて、どの商品を誰に提案するかを考え、結果的に全てが売り切れるように工夫している。

 

 このデマンドとサプライのマッチングは、流通業のみならず、あらゆるB2C業種の基本機能だが、そのマッチングは個人商店の魚屋ならば経験や勘で対応できるが、顧客の数や商品アイテム数が膨大な現代のB2Cビジネスでは、人間には対応できない。これを解決するのがデジタル・マーケティング・システムである。

 

1to1マーケティングのメリットは値引きに限らない

 

 スマホを活用したケースでは、仏の大手スーパーであるカシーノ社と2年前から実証実験を行っている。1 to 1マーケティングでは、いくら購買履歴を分析しリコメンド商品を洗い出しても、レジまで来てしまってはすでに遅い。顧客の購買行動に影響を与えるためには、売場で商品を手に取る前にリーチしなければならない。そこでカシーノとはiPhoneアプリ「mCasino」を開発。「お買い物リスト」機能を提供し、買う予定の商品を入力しておくと、これに顧客の嗜好や購買履歴を加味して、セール品や割り増しポイントなどパーソナライズされたリコメンドを提供する仕組みを導入した。

 

 個客ひとりひとりのニーズに合わせてタイミングよくリコメンドすることができれば、クーポンのような値引きを提供しなくても、顧客は喜んでくれる。結果として客単価の向上や、買い忘れの防止、クロスセルやアップセルにつながる。
結果として、顧客にとっては買物が楽になり、かつお得感を高めることができる一方、店舗にとっては囲い込みにつながる効果が出ている。また、こうした情報を蓄積することで、顧客個人を対象にしたマーケティングに関する詳細なデータが収集できる。それもリアルコマースで実現していることがポイントである。

 

 

HANAクラウド上のSPMで高精度かつパーソナライズされたマーケティングが可能

 

 こうした仕組みを実現しているのが、「SAPプレシジョン・マーケティング(SPM)」である。SPMは、スマホアプリを起点にした1to1マーケティングのデリバリー・プラットフォームであり、クラウド上の超高速インメモリ・データベース「SAP HANA」を用いて提供している。顧客の「プロフィール情報」に加えて、店舗内か店舗の近くかといった「位置」情報、朝/昼/夜や平日/休日などの「時間」、スマホに表示された情報に対する反応から得られる「今現在の関心事」の4つの要素を組み合わせることで顧客のコンテクストを高精度かつリアルタイムに把握することが可能だ。

 

 オファーへの反応から、今現在の関心事を把握できるので、プロフィール情報がなくても高いパーソナライズ精度を維持できるし、それを反映することでオファーを一方通行ではなくインタラクション(双方向)化できる。

 

 

 

 もうひとつの事例はカナダのモントリオール交通局(STM)が導入したスマホアプリ「STMメルシー」のケース。STMは交通系ICカードを導入しており、そのIDを「STMメルシー」に入力してログインすることで、顧客がいる場所の近くや降車予定駅周辺のショップやレストランなどの情報を個人宛に配信する。モントリオール市内の1240の店舗やイベントはそれぞれのオファーを設定しているが、顧客の位置や嗜好に合わせて、最適なオファーが送信される仕組みだ。

 

 乗客にとっては自分の属性や好みに合ったオファーを受け取り、お得に買い物ができる。広告主や店舗は、高精度にターゲッティングされたオファーにより駅広告より効率よく集客できる。またSTMは利便性で乗客を増やし、SPM利用料や駅ビルの集客拡大による売上拡大など非運賃収入を増大することにつなげている。

 

 こうした事例は今後も確実に増大していく。これらのほかにも米ではガソリンスタンド事業者がスマホをカーナビとして利用するアプリを無料で提供し、現在位置の近くのガソリンスタンドを表示して来店誘導するために使用したり、地方銀行が地域の店舗を顧客の嗜好に合わせて紹介するアプリを提供するなど、導入事例が増えている。

 

日本でのパイロット実施企業を募集

 

 こうしたSPMの事例と比較して、一般的なO2Oはスマホの機能のごく一部しか使用していない。一般的なO2Oは来店誘導を最大の目的としているが、「デジタル・マーケティング基盤」は来店の前後や来店中を含めた24時間の顧客リレーション作りが目的だ。しかもターゲッティングは1to1であり、提供された情報への反応の違いによりリアルタイムにオファーを変えていくことも可能になる。

 

 SAPでは今後、日本でもSPMの導入事例を作りたいと考えている。そのために興味のある企業とともに、「デジタル・マーケティング基盤」のパイロット事業をまず展開していく考えで、参加する企業を募集していく方針だ。

 

[関連リンク]  SAPプレシジョン・マーケティング(SPM)ブログ記事
■外出中のお客様に「全自動でおもてなし」を提供するモントリオール交通局

 


 

SESSION3

「O2Oのプラットフォームとして進化する『Shufoo!』の最新戦略

 

凸版印刷株式会社 メディア事業推進本部 副本部長

山岸祥晃 氏

 

国内最大の電子チラシポータルサイトに成長

 

 凸版印刷がチラシの閲覧サイトとして「Shufoo!」を立ち上げたのが2001年。当時はまだ家庭のインターネット利用が普及しておらず、2004年にブロードバンド化が急速に立ち上がるまではそれほど大きな事業ではなかった。しかし、インターネットの普及とともに「Shufoo!」の利用者数もPVも急速に拡大してきた。現在では月間PV数は1億1000万、ユニークユーザー数は月間460万、チラシ掲載企業数2000社超、チラシ掲載店舗数も9万店を超えている。従来からのパソコンや携帯電話に加えタブレットやスマートフォンでの利用が急速に伸びている。また東京など一部の地域ではデータ放送によりテレビでもチラシを見ることができるようになった。

 

 利用するユーザーも当初、90%以上が20代から40代の主婦だったが家電店のチラシも掲載するようになり男性のユーザーも増えている。最近公表された「電子チラシの利用状況」に関する外部の調査結果によると、最も利用されているのは「Shufoo!」で57.5%、二番目が「店舗の公式サイト」で48.6%であった。流通企業のホームページに掲載されているチラシも「Shufoo!」から情報提供を行っているケースが多々あることから、電子チラシ利用者の80%程が「Shufoo!」を介してチラシを閲覧していると推定できる。

 

 

2011年からビジネスモデルの変革に着手

 

 順調に拡大している中で、変革を起こさなければ衰退していく可能性もある。そこで2011年に従来からの閲覧パワーを強化することに加えて、収益モデルについても大きく変更を加えて媒体化を図っている。従来の掲載料がいくらというビジネスから「チラシPV」という新しい指標を導入し、チラシを見た実績から課金する仕組みに換えた。またGISと連動したレポートを提供し、チラシ閲覧者の見える化も図っている。

 

 こうしたビジネスモデルの変革を行った背景には、生活者の大きな変化がある。個人のライフスタイルや嗜好の変化は早くて大きい。そうした個人をターゲットにする流通業は、まさに変化対応業だと思う。例えば、高齢者の新聞購読率は高いが40代をみると新聞購読率は50%程度に落ちる。これでは新聞の折り込みチラシを見る人も少なくなる。これは印刷会社としては非常に厳しい状況だとも言える。印刷物としてのチラシの70%は見られずに廃棄されているというデータもある。

 

最大の変化はスマホの急速な普及

 

 生活者の情報接触の変化で大きいのが、スマホの利用。今年中にはスマホの台数が7500万台を突破すると言われており、もはやスマホ対策なくしてマーケティングを語ることはできなくなっている。我々のアンケートの結果では「Shufoo!」ユーザーの中で、スマホを利用している人で新聞を読まない人は約75%。スマホユーザー以外で、今後スマホに買い換えたいという人は55%を占めている。それだけスマホを活用して情報を収集、利用する人が増えているわけだ。

 

 流通業の変化では、スーパーやGMSにとってはドラッグストアやホームセンターなど競合店が日替わりで変わるなど、業界をまたいだ戦国時代にあると言えるだろう。さらにコンビニに対抗して早朝や深夜営業など開店時間の延長、ネットスーパー参入など戦場は24時間化している。またネット通販では在庫確認もできる機能が提供されるなど、リアル店舗を買いまわらなくても済む便利さからも顧客の支持を受けているのが実態だ。

 

 こうした変化に対応していくために重要になるのが、コミュニケーション施策である。当初、「Shufoo!」は新聞折込チラシを補完する存在だった。しかし電子チラシに加えて情報を電子ポストにプッシュ配信することで独自性を打ち出してきた。そして先ごろイオンが高いテレビ広告を使って「今週末、総合スーパーからチラシが消える」と宣伝したように電子チラシへのシフトを明確に打ち出し、電子チラシへの移行を進める企業も出てきている。流通業では電子チラシをメインとし、スマホで閲覧しやすいように、横長の電子チラシを作る企業もある。最初は東急ハンズが実用化し、その後続々と横長のチラシを導入している。

 

 

 

電子チラシの「24時間365日化」は当たり前に

 

 電子チラシならば制限がない。イトーヨーカドーは月間40本の電子チラシを配信している。つまり1日に1本以上ということだ。また前の晩に翌日のチラシを配信するケースもある。この機能はとくに告知しなかったのだが、ユーザーには浸透している。従来の「Shufoo!」は午前10時が閲覧のピークだったが、今では午後10時以降に翌日のチラシを見るユーザーが増えている。24時間化で求められるのは、タイムリーな情報発信。「Shufoo!ミニチラシ」で実現しているミニチラシは、店長レベルに権限を与えることで夕方に見切り商品の特売情報などを配信することを可能にした。もはや52週で組み立てたマーケティングではなく、変化する毎日を対象にしたマーケティング戦略の構築が不可欠と言ってもいいだろう。

 

 今後も「Shufoo!」の機能拡張は続けていかなければならない。扱っている商品アイテム数が4万点、その中でチラシに掲載できるのは400点程度、しかし顧客が欲しい商品はわずかに数点である。顧客に刺さる情報を発信し続けるためには、十人十色のマーケティングを実践しなければならない。これもスマホ起点ならば十分に実現可能。また、電子チラシを見て実際に来店したのか、購入したのかというデータを収集する仕組みも考えている。

 

 ひとつには音声認識や画像認識技術の活用や、スマホのアプリを起動しておけば人の耳には聞こえにくい周波数の音波を流すことでスマホが反応し、来店ポイントが加算できる仕掛けも考えられる。その一例として凸版印刷のO2Oソリューションとして、Bluetoothを使ってスマホと自動交信する「Cylsee(シルシー)ジオ」がある。店舗内や店舗の近くに来ればスマホと交信して情報配信や来店誘導が可能になるというものだ。

 

「Shufoo!」を分析ツールとしても活用できるように

 

 デジタル・マーケティング基盤としての機能では、IDポストによるパーソナルサービス配信にも期待できる。すでにカルチュア・コンビニエンス・クラブと連携し、「Tポイント×Shufoo!」アプリをリリースした。これによって、「T会員」の属性に応じて、配信する情報を選別して電子DMが配信できるようになる。例えば電子DMを配信する企業が、年齢や性別、住所などでターゲットを限定する場合、カルチュア・コンビニエンス・クラブが持つ個人情報から配布先を絞り込むことが可能だ。もちろん個人情報を扱うのではなく、属性に応じたターゲットとして提供を受ける形になる。今後、カルチュア・コンビニエンス・クラブ以外にも多数の会員を保有する企業と提携することも考えている。

 

 スマホの普及でO2Oへのシフトは加速する。そのために流通の24時間365日のマーケティングは、顧客のロケーションやタイミングなどを判断して送客からクロスセル、さらに再送客という循環を構築していくことが重要だ。そのためのキーデバイスとして、普及が進むスマホへの対応を主眼としていかなければならないだろう。