ノンアルコール飲料は、健康志向の高まりを背景に需要が拡大している。同カテゴリーに対する認知も広まり、定番のビールテイスト飲料だけでなく、ノンアルコールのチューハイやワインなど、商品のラインアップも多様化している。
ビアテイスト・その他ノンアル、ともに市場の拡大が続く
富士経済の「需要拡大が見込まれるウエルネス飲料・アルコール総市場調査2024~2025」によると、2024年のノンアルコール飲料の市場規模(見込み)は23年比で104.2%の867億円となった。糖質やカロリーのオフゼロ訴求商品が前年から微減傾向にある一方で、プリン体オフゼロ訴求商品は増加しており、市場の拡大に貢献。25年予測は23年比で111.8%の930億円とさらなる成長が期待されている。
KSP-POSによると、ビアテイスト飲料カテゴリーの2024年7月から25年6月の期間通算金額PIは、対前年同期比8.1%増の3698円、数量PIは同3.4%増の13.71と、金額・数量ともに前年に対し微増となった【図表1】。月別の推移を見てみると前期比2ケタ増の月が5カ月あり、中でも24年10月は24.6%増の大幅増となった。一方で25年4、5月は前年割れとなっており振れ幅が大きい。
続いて、ノンアルコールRTDやノンアルコールワインなどの商品群を含む、その他ノンアルコール飲料の24年7月から25年6月の期間通算金額PIは、前年比3.4%増の1337円、数量PIは同3.1%増の11.39と、ビアテイスト飲料同様に金額・数量ともに微増となった。
月別の推移を見ても24年7月、25年3,4月を除いたすべての月で前年超えとなっており、ラインアップの充実やヘビーユーザーの増加により、カテゴリー自体が消費者にしっかりと浸透してきたことが見て取れる。
酒類は飲酒スタイルの多様化に伴い、ビール類からRTDへの流入が進んでいるが、この動きがノンアルコール飲料にも波及。その他ノンアルコール飲料はビアテイスト飲料と比較しパイは小さいものの、毎年拡大を続けている。特に若年層はビール類の苦みが苦手な人も多いことから、その他ノンアルコール飲料の需要は今後も拡大することが予想される。
新ブランドも好調に推移、今秋も各社新商品を投入
ここからは、KSP-POSデータによる2025年1月から6月のカテゴリー動向を見ていく。
ビアテイスト飲料の売上シェアランキングを見てみると、1位にはアサヒビールの「アサヒ ドライゼロ 缶 350ml×6」が入った【図表2】。同ブランドは2位に350ml単品、6位に350ml×6×4のケース、9位に500ml単品、13位に500ml×6缶パックが入り、存在感を示している。
また、シェアを大きく伸ばしているのが、アサヒビールの「アサヒゼロ」だ。同ブランドは4位に350m l×6缶パック、5位に350ml単品、16位に350ml×6×4のケースがランクイン。伸長率でみると、350ml×6缶は前期比217%、350ml単品は同150%、350ml缶ケースは同300%と、いずれも大幅伸長している。同ブランドは25年2月にクオリティアップを実施しており、後味の良さを向上させている。
今秋の新商品を見てみると、サントリーは9月にノンアルコールビールテイストの新ブランド「The BEZERS(ザ・ベゼルズ)」を発売。同品は、味の厚みや飲みごたえを重視しており、ビールユーザーの満足感を高める設計の商品となっている。さらにキリンビールは、「キリン本格醸造ノンアルコール ラガーゼロ」の発売を予定しており、同カテゴリーはさらなる盛り上がりをみせそうだ。
続いて、その他ノンアルコール飲料の売上シェアランキングを見てみると、1位にはチョーヤ梅酒の「チョーヤ 酔わないウメッシュ 缶 350ml」が入った【図表3】。
伸長率を見ると、3位のアサヒビール「スタイルバランス ゆずサワー 缶 350ml」、7位のサッポロビール「濃い搾りレモンサワーノンアルコール 缶 350ml」、10位の「スタイルバランス シャルドネS P 缶350ml」の3品が、対前期比40%以上増とシェアを大きく伸ばした。特に「スタイルバランス」はどのフレーバーも好調に推移しており、その他ノンアルコール飲料カテゴリーの活性化に貢献している。
また、24年秋以降に発売された商品の中では、24年9月発売の「サッポロ 濃い搾りグレフルサワー ノンアルコール」が最上位の15位にランクイン。この秋の新商品としては、アサヒビールが「ウィルキンソンタンサン タグソバー」、キリンビールが「キリン 氷ゼロ スパークリング」を発売するなど、各社選択肢の拡大を図っていく。
バラエティ感のある品揃えで、選ぶ楽しみのある売場提案へ
これまで運転を控えている人や病気・授乳期の人など、アルコールを摂取できない人向けのイメージが強かったノンアルコール飲料だが、近年は健康志向を背景にノンアルコール飲料を手に取る人が増え、ちょっとしたリフレッシュやランチタイムなど、幅広いシーンで飲用されている。
各メーカーもアルコールが飲めないときに仕方なく選ぶ代替品としてでなく、積極的に選びたくなるノンアルコール飲料の開発に注力。多彩なフレーバー展開で拡大を続けるその他ノンアルコール飲料はもちろん、ビアテイスト飲料についても、飲みごたえや味わいにこだわった商品が次々と投入されており、今後もアイテム数は増えていくと推察される。
ノンアルコール飲料のカテゴリーは現状ビールテイスト飲料が主軸だが、近年はビールテイスト以外のフレーバーも増え、ラインアップも多様化していることから、今後は冷蔵ケース内についてもフェース数を増やす必要が出てくるだろう。
ただし、ノンアルコールチューハイをはじめとしたその他ノンアルコール飲料は商品認知度がまだまだ低く、売場でも気付かれないことがある。店頭でもPOPを使った情報発信やバラエティ感のある品揃えを打ち出すことで来店客に気づきを与え、ノンアルコール飲料全体のトライアルを促進していきたい。