家庭での調理機会の増加や健康志向の高まりを背景に、スパイス&ハーブ市場は長期的に伸長傾向が続いている。とくに簡便ニーズに対応したシーズニングスパイスや、生鮮素材からの代替が進んでいる練りスパイスなどが市場を牽引している。
今後もメニュー提案を強化することで、さらなる需要拡大が期待される。
生鮮素材から代替が進み練りスパイスが堅調
KSP-POSデータによると、スパイスの期間通算(2024年7月~25年6月)の金額PIは、6831円で対前年同期比0.9%増となった一方、数量PIは39.78で同2.1%減となった。価格改定の影響により数量ベースは微減となったが、金額ベースでは微増を維持した。家庭内調理機会の増加に加え、スパイスの健康効果への関心の高まりを背景に、市場は堅調に推移している。
カテゴリー別では、練りスパイスの期間通算の金額PIは3374円で同0.3%減。利便性と保存性のよさから生鮮素材からの代替が進んでおり、とくににんにくやしょうがなどの大容量タイプの需要が増加している。エスビー食品は、チューブ調味料を活用して食を楽しむことを「チューバースタイル」としてブランドサイトで提案している。
また同社主力の「本生」シリーズをリニューアル。生鮮素材に近い品質を追求するとともに店頭での視認性を高めたパッケージに刷新した。さらに、訪日客の土産需要を見据えてパッケージ裏面には英語表記を追加し、二次元コードによるレシピ提案も実施するなど、使用シーンの拡大を図っている。
メニュー専用シーズニングはさらなる成長に期待
洋風スパイスの期間通算の金額PIは847円で対前年同期比1.4%増。近年のスパイスカレーブームを受けて、コリアンダーやナツメグ、ターメリックなどのカレー調理に欠かせないスパイスが人気だ。これらスパイスは健康効果でも注目されており、需要を下支えしている。
一方で、瓶タイプのスパイスは「使い切れない」という声も少なくない。これに応え、エスビー食品は「スティックスパイス」を展開。25年3月に〈クミンシード〉〈ヒハツ〉〈ローズマリー〉など6品を追加し、全12種類をラインアップした。スティック1本で小さじ1杯分の個包装形態により、計量不要で開封したての香りを楽しめるため、家庭はもちろんアウトドア利用にも適している。同商品の発売により、洋風スパイスの使用機会拡大が期待される。
一方、スパイスやハーブ、塩などをブレンドしたシーズニングの期間通算の金額PIは468円で対前年同期比5.6%増。時短・簡便調理へのニーズの高まりや多様な食文化への関心の広がりを背景に、メニュー専用シーズニングは堅調に推移している。
エスビー食品は25年2月、日本料理店「賛否両論」の店主・笠原将弘氏監修の和とスパイスを掛け合わせたメニュー専用シーズニング「匠のおしながきシーズニング」シリーズに5品を追加し、全10品を展開。身近な食材を使って本格的な和食を手軽に調理できる点が好評となっている。
また、ハウス食品は新シリーズ「おかづまみの逸品」全5品を新発売。豚肉や卵、豆腐など家庭で常備しやすい食材を使い、おかずにもおつまみにもなるメニュー専用シーズニングで、小料理居酒屋のようなこだわりの逸品を家庭で再現できる商品だ。
和洋中を問わずメニュー専用シーズニングの品揃えは拡大傾向にあり、今後も市場のさらなる成長が見込まれている。