秋冬期に最盛期を迎えるシチューは近年、ホワイトシチュー、ビーフシチュー以外のメニューも増えたことで選ぶ楽しみが広がってきている。また料理のソースやスープなどルウ商品を使ったシチュー以外の使い方も訴求することで、ユーザーの拡大につなげていきたい。
2・3月も売上が伸びルウシチューは好調に推移
KSP-POSによると、2023年9月から24年8月のシチュールウカテゴリーの期間通算金額PIは対前年同期比1.4%増の1618円、数量PIは同9.0%減の6.94となった【図表】(次ページ)。
同じ定番棚で展開されることが多いカレールウの金額PIは前年同期比5.7%増、ハヤシルウの金額PIも同6.0%増となっており、ルウ商品全体が好調に推移していることがわかる。
一方、シチューレトルト・缶の期間通算金額PIは同7.4%減の231円となった。カレーレトルト・缶やハヤシレトルトの金額PIは前年同期比プラスで着地しており、即食性の高い分野ではカテゴリーによって数値に差が出る結果となっている。
秋冬の煮込み料理の定番であるシチュールウは、同じくルウタイプのカレーやハヤシに比べると気温や天候等の影響を受けやすいカテゴリーだ。
例年、秋冬商材の立ち上がりとなる9月から数字が伸びはじめ、気温の低い10月から翌年2月までが山場となる。最も需要が高くなる10~12月と最も低くなる7・8月では、金額PIの値に4~5倍近い差が生じる点も大きな特徴だ。
月別の前年比推移を見ると23年9月は大きく数字を落としたものの10・11月は堅調に推移。山場である12月と翌年1月は微減となったものの、24年2月は3.4%増、3月は21.2%の大幅増となっている。
ホワイト・ビーフに続く新たな味わいのシチューも
シチュールウのカテゴリーはハウス食品の「北海道シチュー」シリーズや、エスビー食品の「濃いシチュー」シリーズといった、誰もが知るロングセラーブランドが市場を支えている。
またこのカテゴリーは長年、ホワイトシチューとビーフシチューの2大メニューをメーンとし、各ブランドが商品をブラッシュアップさせることで売場を盛り上げてきた。
しかし近年は厳選した4種のチーズに鶏がらと香味野菜のブイヨンを合わせた「濃いシチュー 4 種のチーズ」、オマール海老のだしを贅沢に使用した期間限定商品「濃いシチュー オマール海老」のように、新たなフレーバーのルウシチュー商品も発売されている。
今期も新機軸のシチュールウ商品が登場している。
ハウス食品では大箱ルウシチューとしては12年ぶりとなる新ブランド「休日のシチュー」を発売。大人世代にマッチした新たなおいしさをめざしルウのベースにでんぷんや米粉を使うことで軽やかな味わいに最適化した。
また〈クリーム〉にはホワイトペパー、酒粕、焦がしバター、〈ビーフ用〉にはオレガノをはじめとした、11種類のスパイス・ハーブを使い、香り高く仕上げている。
一方、エスビー食品は定番の「濃いシチュー」をリフレッシュした。〈クリーム〉〈ビーフ〉はパッケージを改良したほか、〈4種のチーズ〉は、明治とコラボレーション。「明治北海道十勝チーズ」4種をブレンドすることで、まろやかで濃厚なコクを表現している。
さらにシチュー以外のアレンジレシピ提案に力を入れており、商品パッケージやブランドサイトで、「濃いシチュー」ならではの味わいを生かした幅広いメニューを紹介している。
新商品やアレンジメニューの訴求を強化し、トライアルを創出
シチューはこれまで調理時間の長さが最大のネックとされてきたが、メーカー各社は溶かしやすいパウダータイプのシチュールウや、単身世帯やランチ需要にも対応しやすいレトルトタイプのシチューなど簡便・時短を訴求する商品も展開している。
エスビー食品では料理家・栗原はるみさんとの共同開発によるパウダータイプのルウシチュー「栗原はるみのクリームシチュー」「栗原はるみのビーフシチュー」が好調に推移。今年2月には「栗原はるみ トマトのハヤシ」が発売され、ブランドの勢いが加速している。
ハウス食品は名店の味わいを再現した人気のレトルト食品シリーズ「選ばれし人気店」から東京・入谷「レストラン 香味屋(かみや)」監修の〈老舗のビーフシチュー〉を発売。
さらにレトルトシチューブランド「ほっとシチュー」からは、新フレーバーとしてなめらかな口あたりとやさしい味わいの〈コーン〉を発売し、新たなユーザーを獲得している。
シチューは、青果や精肉といった生鮮品との相性もよいことからクロスMDも仕掛けやすく、買上点数アップにつながる商品として、加工食品売場にとってもなくてはならないカテゴリーのひとつだ。
カレールウに比べて季節や天候の影響を受けやすいシチューだが、新たなフレーバーも登場しており、家族全員で楽しめる煮込み料理の定番として市場を広げるチャンスはある。とくにレトルトシチューはレトルトカレーのように認知度が上がれば、売上を大きく伸ばすチャンスがあるだろう。
シチューは長年、クリームシチューとビーフシチューの2大メニューのみを展開してきたこともあり、新フレーバーやアレンジメニューについては消費者にあまり知られていない。
今後、ユーザーを拡大していくためにも、最需要期である秋冬はエンドや主通路沿いで新商品の露出を増やし視認性を高めるほか、試食販売やアレンジメニュー提案など来店客の気付きとなるプロモーションを仕掛けることで、シチューカテゴリー全体の活性化につなげたいところだ。