ハレの日需要とメリハリ消費によって、コロナ禍以降、おせち市場は好調に推移している。とくに今期(2024~25年)の年末年始は最大で9連休となるため、帰省して家族と過ごす機会が増えると見込まれる。小売業においては早出し展開による販売機会の拡大を図り、売上アップをめざしたいところだ。
年末年始は最大9連休、地方への帰省も増加の予想
コロナ禍をきっかけに、日本の伝統的な行事食であるおせちの価値が再認識され、おせち関連品は好調が続いている。それを示すのが、下記のKSP-POSデータだ。おせち関連品を購入すると見られる11月から翌年1月の3カ月間を対象にはじき出してみると、2020~21年の金額PIは約5883円だったのに対し、23~24年の金額PIは約6345円と伸長。近年の物価上昇のあおりを受けて、数量PIは微減傾向にあるものの、「正月のおせちくらいはよいものを食べよう」というハレの日需要とメリハリ消費の傾向は根強い。
では、最大で9連休となる今期(24~25年)の年末年始はどうなのか。かつては海外旅行に出かける生活者も多かったが、国際情勢が一段と不安定で、円安・物価高も続いているだけに、海外旅行者数が極端に増えるとは考えにくい。代わりに、国内で家族と過ごすケースが増えると見込まれる。遠方への帰省が増え、親戚や友人・知人と会食する機会も増加。「ちょっと奮発しておせちを揃えたい」、「正月だからこそ、いつもより贅沢なごちそうを食べたい」と考える生活者は少なくないだろう。
加えて、従来の伝統的なおせちだけでなく、洋風や中華の味も取り入れた自分らしいおせちを用意して、SNSで発信する若い世代も多い。また、和食文化を継承する食育ツールとしてもおせちは重宝されており、人気キャラクターを活用した子供向け商品もラインアップが増えている。おせちをオードブル風に盛り付けるなど、カジュアル化が進みながらも、おせちの需要は依然として高く、市場は引き続き活性化することが予想される。
売場づくりと早出し強化でおせちの売上アップへ
おせち需要が高まる中、今期も多様化する消費者ニーズに応えた商品が多数登場している。
まず、「国産」という価値を追求したのが、一正蒲鉾の「国産原料100% 純」シリーズだ。背景には、国産や地産地消を重視する生活者が増えていることが挙げられる。これまでは「純国産100% 純」というブランド名だったが、副原料まですべて国産であることをわかりやすく伝えるために、商品名を一新。生産者の顔写真とメッセージを添えたPOPを用意し、売場づくりをサポートする。
一方、食育ツールとしての役割を担いながら、新たな顧客獲得に貢献するのが、紀文食品の「おせち詰合せ/ディズニー」と「サンリオキャラクターズのおせち詰合せ」の新商品だ。子供や若年層に人気のキャラクターを取り入れることで、これまでおせちに馴染みの薄かった層にもアプローチしていく。
こうした多彩なおせち関連品を売上拡大につなげていくには、充実した売場づくりはもちろん、早出しの強化が欠かせない。実際、EC市場では8月からおせちの予約を受け付けており、早期割引特典によっておせちの需要をさらに掘り起こしている。早めに正月の準備をする生活者が一定数いるだけに、店頭でも早出しを図ることでお試し購入を促せば、リピート購入が期待できる。おせち売場においては販売機会を拡大することが何よりも重要といえそうだ。