総菜のSPA(製造小売)化が、大手を中心に食品スーパー(SM)各社で進む今日。サプライチェーンを俯瞰し、横串しを通すという大きなビジョンを実現するためには、どのような工程を踏めばよいのか。そこでヒントにしたいのが、「製造直販業」を標榜し、調達から販売までを内製化して価格と品質の双方で支持される外食チェーンを築き上げたサイゼリヤ(埼玉県)。同社の社長を2022年まで務めた堀埜一成氏に、食のSPA化を実現するためのロードマップについて、製造領域を中心に語ってもらった。
各社のSPA戦略には「技術」が足りていない
昨今、外食や食品小売でSPAモデル(本来であれば「SPF」と表現すべきかもしれないが)を志向する企業が増えてきた。しかし私はこれまでの経験からして、食のSPA化の潮流のなかで、「技術」が圧倒的に足りないと感じている。SPAを実現するための「全体的な枠組み」をつくることは重要だが、これまでと異なる技術の導入にもっと投資したうえで、商品設計を行うべきだ。
たとえば食品スーパー(SM)各社では、総菜の製造効率を上げるため、セントラルキッチン(CK)を設けるケースが多い。しかし私から見れば、多くのSMのCKは「コンロと鍋を店からCKに移し、その規模を大きくしただけ」に映る。SPAを志向して本気で製造の領域に踏み込むのであれば、単機能を有する大型の設備を複数組み合わせた工場の集合体、つまりは「プラント」を形成すべきだろう。
もう少し具体的に説明してみよう。たとえば何らかの食材を「鍋で加熱する」という工程1つをとっても、100℃で煮てやわらかくするのか、160℃で焼き色や香りを付けるのか、180℃で焦げ目を付けるのか、目的別に異なる温度帯が設定される。“プラント化”した製造設備では、これら温度帯別の工程をそれぞれ独立した機械で行うことになる。1つの機械をシェアして、商品ごとに設定を切り替えるよりも、はるかに効率的に大量生産ができる。
言わずもがな、その「機械」というのは大型の鍋や釜などではない。大手メーカーが使うような、専用の製造ラインを指す。鍋や釜では手づくり感は出るかもしれないが、製造量が増えれば増えるほど、加熱にムラが出たり蒸発しやすくなったりと、品質が安定しない。また多くの人出を介することになるが、製造スペースの温度や湿度も上昇しがちで、従業員にとっても労働環境として厳しいものがある。
対して、プラントに導入されるような最新の調理機器であれば、任意の温度を設定することができ、加熱時間を変えることで味のコントロールもたやすい。
ここまでで何が言いたいかというと、結果(生産される商品の出来栄え)ばかりを求めるのではなく、それを実現するための
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