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特殊卵市場、栄養面やSDGsの観点でも注目度大、メニュー提案でトライアルを促す

栄養面や味わいに加え、環境配慮の観点でも注目されている特殊卵。今後需要を拡大していくには、それぞれの特殊卵が持つ価値を改めて訴求するほか、さまざまなメニュー提案を通じユーザーの拡大をめざす必要がある。

鳥インフルや飼料価格の影響を受けやすいカテゴリー

 KSP-POSデータによると、2023年6月から24年5月の特殊卵カテゴリーの期間通算金額PIは、対前年同期比12.4%増の8168円、数量PIは同3.5%減の33.4となった【図表】

 特殊卵とは通常の普通卵と比較し、特殊な飼料を配合したり、飼育環境を変えたりすることで品質を高めた卵を指す。

24年は鳥インフルエンザの影響が落ち着き、普通卵の不足や価格高騰が解消されたこともあり、特殊卵は前年を大きく割り込んでいる(i-stock/krblokhin)

 特殊卵を含む卵のマーケットは、鳥インフルエンザの流行や飼料価格変動の影響を大きく受ける。鳥インフルエンザが発生した場合でも、発生した養鶏場の鶏はすべて殺処分対象となり感染が確認された鶏肉や卵が市場に出回ることはないが、鶏の減少によって卵の生産量も減少するため、これが卵の品薄や価格の高騰につながっている。

 特殊卵カテゴリーの金額PIの月別動向をみると、23年6月から12月にかけては前年の鳥インフルエンザの反動や普通卵ユーザーの流入もあり、前年を大きく上回る数値で推移。一方、24年に入ると、鳥インフルエンザの影響がある程度落ち着き、普通卵の不足や価格高騰が解消されたこともあり、特殊卵は前年を大きく割り込んでいる。

 卵は多くの家庭で備蓄する食品ということもあって年間を通じ一定の需要はあるが、気温が上がってくる6月から鍋料理の喫食率が上がり、お菓子づくりなどで需要が伸びる12月までがゆるやかな山場となっている。

 JA全農たまごのWEBサイトでは卵料理のレシピをはじめ、豊富な栄養素や卵にまつわる豆知識などを紹介している。

環境配慮の観点から平飼い卵が徐々に浸透

 特殊卵はビタミンEやヨウ素などの栄養素を含む機能性に特化したもの、平飼いをはじめとした飼育環境に配慮したもの、味や色つやにこだわったものなどがあり、近年はサステナブルの観点から平飼い訴求の卵が伸長傾向にある。

 JA全農たまごではα-リノレン酸や葉酸、ビタミンEを豊富に含んだ「しんたまご」をはじめ、鶏たちが自由に動き回れる環境で飼育した「平飼いたまご」や持続可能性に配慮した鶏卵・鶏肉JASを日本で初めて取得した「サステナブルエッグ」など特殊卵の開発に力を入れている。

 なかでも「とくたま」はコクのある黄身のおいしさと色にこだわった卵かけご飯に最適なたまごで、消費者や流通バイヤーからも高い評価を得ている。

 栄養豊富な卵は食品スーパーにとってなくてはならないカテゴリーだが、日常使いの商品ということもあり、店頭では安易な価格訴求に陥りやすい。

 しかし付加価値型商品である特殊卵は、豊富な栄養価や飼育環境へのこだわり、味わいの違いを伝えることで、カテゴリーの単価アップも期待できるだろう。

 卵は目玉焼きやオムレツ、ゆで卵といった朝食メニューの定番だけでなく、和食・洋食・中華など、どんな料理にも使える万能素材でもある。特殊卵そのものが持つ魅力に加え、消費者が興味を持つメニュー提案で気付きを与え、トライアルの獲得やカテゴリーの活性化につなげていきたいところだ。