近年、食品スーパー(SM)のインストアベーカリーにおいて、オリジナルスイーツの開発が進んでいる。その背景や、オリジナルスイーツがベーカリー部門にもたらす効果はどのようなものか。全国のベーカリーショップのコンサルタントとして多数の実績を持つ藤岡千穂子氏に解説してもらうとともに、SMのスイーツ開発、売場づくりのポイントを聞いた。
利点は原価率の低さと作業負荷の少なさ
近年、SMのインストアベーカリーにおいて、オリジナルスイーツの開発が活発化している。かつてインストアベーカリーのスイーツといえば、ドーナツなどなじみの商品が中心だったが、昨今はバラエティーが広がり、青果部門の素材を使ったタルトやプリンなど、SMならではの強みを生かしたスイーツ開発も積極的に進められている。たとえば有力SMのヤオコー(埼玉県)では、ベーカリー部門の売上の約3分の1をスイーツが占める店舗もあり、重要商品となっている。
スイーツ開発が広がる背景には、インストアベーカリー商品の原価率の高さがある。ベーカリーの原価率は商品当たり30~38%ほどと高めで、商品によっては50%を超えるものもある。加えて現在、バターや牛乳など原材料が高騰しておりさらに上昇中だ。SM各社は値上げに踏み切っているが、ベーカリーで販売するのは朝食やランチ、おやつなどで食される、ふだん使いの商品だ。値上げは消費者の買い控えに直結し、2023年は平日の売上低迷が目立った。
こうしたなか着目されたのがスイーツだ。スイーツは原価率が平均31%未満とベーカリーのなかでは比較的低く、利益を確保しやすい。また、製造効率が高い点も特徴だ。パンは焼き上がりまで平均4時間かかり、手ごね工程など作業負荷も大きい。一方スイーツは、作業負荷の少ない商品なら材料を混ぜて型抜きして焼くだけで済み、売場に並ぶまでに1時間程度しか要さない。簡単なものなら技術力がない人でも製造できる。さらに比較的日持ちもよい商品が多い。ベーカリーの商品は基本的に製造当日が消費期限となるが、スイーツの場合は1週間ほど持つ商品もあるため廃棄率も抑えられる。
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