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チーズ市場、直食系チーズは苦戦する一方、料理用チーズは堅調に推移

価格改定の影響により、金額PIでは前年並み、数量PIで前年割れとなった家庭用チーズ市場。料理用チーズは堅調に推移している一方、直食系チーズが苦戦しているようだ。各社では食べ方提案を強化して需要拡大を図っている。

シュレッド、スライス、パルメザンなどが好調

 KSP-POSデータのプロセスチーズの期間通算(2022年10月~23年9月)の金額PIは、9135円で対前年同期比2.6%増、数量PIは50.26で同8.3%減。価格改定により、金額PIは前年並みとなったが、数量PIでは前年割れとなった。そのなかでも堅調に推移しているのが料理用チーズだ。外食の機会が増えているとはいえ、物価高による節約志向で、内食傾向は続いている。料理の素材などで節約する一方で、食事の質を落としたくないと考える人が多く、味のアクセントになり見栄えもよくなるチーズは、料理には欠かせない存在となっている。

料理用チーズは堅調に推移している一方、直食系チーズが苦戦しているようだ。食べ方提案を強化して需要拡大を図っている。(i-stock/IgorDutina)

 外食メニューでも見栄えよく食欲をそそるチーズがトレンドとなっていることから、雪印メグミルクではこの秋に、料理にかけるだけでチーズの風味を楽しめる「torochi(トロチ)モッツァレラチーズ入り」を新発売。冷蔵庫から出してすぐ、加熱しなくても「とろりとした」チーズ味が楽しめるこれまでになかったソースだ。同社では料理用チーズの新しい価値を提供していく。

 スライスチーズでは、明治から濃厚なのにクセのない風味の「明治北海道十勝スライスチーズ濃い味」を今年3月に発売。従来品と差別化された味わいが好評で、順調な出足となっている。

 その一方で、直食系チーズが苦戦している。チーズといえばワインといえるほど切っても切り離せない存在だが、ワインの消費量が減少していることが直食系チーズ減少の一因となっている。そこで森永乳業では、ビールに合うことをコンセプトにした「クラフト魚Chee(ウオチー)」シリーズを新発売。魚介とチーズの旨みと、食感のある魚介珍味の具入りで、ビールとの相性にこだわったひとくちサイズのチーズ。ビールのおつまみとしてチーズが広がれば、喫食機会はさらに拡大しそうだ。

プロセスチーズとナチュラルチーズの金額PIおよび金額PI対前年推移

モッツァレラチーズは調理やおつまみなど喫食機会が増加

 ナチュラルチーズの期間通算の金額PIは、7320円で対前年同期比1.3%増、数量PIは23.80で同7.4%減。ナチュラルチーズも同様に金額PIでは前年並み、数量PIは前年割れとなった。

 ナチュラルチーズで堅調に推移しているのが、もっちりした食感が特長のモッツァレラチーズ。ボールタイプのほか、サラダなどにそのまま使えるひとくちタイプの伸長率が高くなっている。市場をリードする森永乳業ではバジル液に入った味付き「クラフトバジルフレッシュモッツァレラ」を新発売した。一方、明治では手でちぎって調理する「ちぎりモッツァレラ」を提案し、日常的な喫食機会を促進している。

 価格改定の影響で厳しい状況が続いていたカマンベールチーズだが、新しい価格が定着したことで徐々に需要は戻り始めている。明治では、フライパン1つで“豪華見え”する「ワンパンカマン」を提案。雪印メグミルクでは、冷蔵庫から出して15分程度食べるのを我慢する「15分ガマンベール」などの食べ方提案を行い、喫食機会の拡大を図っている。