コロナ禍の家庭での調理機会の増加で、複数のスパイスを使った料理に挑戦する人が増え、スパイス市場は堅調に推移。需要が一巡したことで2022年度は微減となったが19年対比では確実に成長している。今後はスパイスを使ったレシピ提案で、引き続き需要を拡大する必要がある。
練りスパイスは生鮮からのシフトが続く
KSP-POSデータによると、スパイスの期間通算(2022年6月~23年5月)の金額PIは、6224円で対前年同期比2.2%減。月別金額PIをみても全体的に微減となっているが、大きく落としている月はなく堅調といえる。長引くコロナ禍で料理をする機会が増え、新たにスパイスを購入することでスパイス市場は堅調に推移している。需要が一巡したことで22年は微減となったが、確実に間口は広がっている。
カテゴリー別にみると、練りスパイスの期間通算の金額PIは3043円で同4.2%減となった。練りスパイスは、その利便性と保存性のよさから生鮮素材からの代替が進んでおり、なかでもエスビー食品が展開する「きざみ」シリーズが好調だ。生鮮の品質に近く、手軽な味つけ調味料として評価されている。同社ではこの春に「きざみ」シリーズの〈ねぎ塩〉〈レモン〉〈バジル〉の3品をより生鮮に近い味わいにブラッシュアップ。食感や素材の香り・旨味が高まった。
また、「わさび」や「しょうが」「にんにく」など、使用頻度の高い定番の練りスパイスは、通常サイズの約4倍の大容量サイズの発売により、成長を加速させている。エスビー食品では、この春に「お徳用 梅肉」「お徳用 柚子こしょう」を発売し、ラインアップの強化を図った。
手軽に洋風スパイスに挑戦できるメニュー専用シーズニングが好調
洋風スパイスの期間通算の金額PIは763円で対前年同期比1.6%減。月別金額PIでは6月~9月は前年割れとなったが、10月からは微増で推移している。近年のスパイスカレーブームにより、コリアンダー、ターメリック、ナツメグ、クミンなどが人気となっている。
ただ、レシピなどをみて洋風スパイスを購入したが、使い切れずに家庭で眠らせているケースが多いようだ。洋風スパイスを使った料理のレパートリーが少なく、他の使い方がわからない、という意見も見受けられる。こうしたユーザーに向けて、レシピ提案を継続的に行っていく必要がありそうだ。
一方、スパイスやハーブ、塩などをブレンドしたシーズニングは期間通算の金額PIは406円で同2.4%減。なかでも市場を底上げしているのがメニュー専用シーズニングで、初めて使うスパイスも手軽に使用することができ、スパイスを余らせたり、味つけに失敗することなく調理できるため、利用する人が増えている。毎日の献立を考えることに疲れた人からも人気だ。50種類以上の豊富なラインアップを展開するエスビー食品の「SPICE&HERBシーズニング」では、料理家の栗原心平さんを起用した特設サイトで短時間かつ少ない材料で複数のおつまみをつくることができるレシピを訴求している。
また、ハウス食品では、メーン食材から副菜、サラダ、おつまみまで幅広いメニューが揃った「スパイス クッキング」や、アジアの屋台メニューがつくれる「アジアン屋台街」、家飲みのおつまみに「スパイスクッキング バルメニュー」、にんにく料理の素「にんにく族」などを展開。各社ともにラインアップを広げているため、メニュー専用シーズニングは今後も拡大することが予想される。