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「PB偏重」が加速する食品小売業、NB集約の流れは必然か

ヨーク・ホールディングス(東京都:以下、ヨークHD)は価格訴求型のプライベートブランド(PB)「セブン・ザ・プライス」の拡大を進め、イオン(千葉県)グループはPB「トップバリュ」を商品戦略の中軸に据える方針を打ち出しています。他方、全国的にPBの売上を伸ばす生協では、地域によって売場に並ぶナショナルブランド(NB)を整理する動きが見られています。小売には「PBを売りたい」という必然があり、店頭でPBに割くスペースは広がっていくでしょう。では、この先、NBはどうなっていくのでしょうか。

高コスパ商品として開発が進む「セブン・ザ・プライス」

あらためて考えたい「PBとは何か?」

 そもそも、PBはNBと比べてどれほど儲かるのでしょうか? それを示す珍しいデータを、セブン&アイ・ホールディングス(東京都)が8月に開催された事業戦略説明会で示しました。

 残念ながら国内の事例ではないのですが、米セブン-イレブン(7-Eleven, Inc.)の24年度の商品粗利益率は、PBが51.3%、非PBが33.0%とのこと。国も違えば業態も米国式コンビニと異なるので参考にならないかもしれませんが、これだけ粗利益率が違うならPBを売りたいのも納得です。

 ヨークHDとの資本関係は変わりましたが、セブン&アイのPBの開発体制は変わりません。ヨークHDは食品スーパーに求められるコスパニーズに対応するPBとして「セブン・ザ・プライス」の開発を加速中です。今期中に300アイテムに到達させ、売上高は前期の1.5倍を見込みます。

 イオンの「トップバリュ」も快走を続けています。25年度第1四半期の売上高はグループ計で13.2%増でした。決算説明会の会見でイオンの吉田昭夫社長は、PBが業績改善に寄与しているとし、ここ何年も続く売上拡大の背景には「PBに対する認識の変化」があると指摘しました。

 「お客さまの中でPBとNBの差がなくなり、PBを購入することに何の抵抗も感じられていません。そのような時代の波に乗れたと思います」(吉田社長)

 日本におけるPBの黎明期は1960~70年代でした。小売チェーンの規模拡大とともにPBの販売規模も大きくなり、近年ではチェーン独自のブランディングも進んでいます。

 小売にとってPBとは何か? かつてのように「NBよりも低価格」と定義するだけでは足りません。カテゴリー内の上位価格帯に位置するPBはいくらでもあります。NBが挑戦しづらい価格でも、売場を確保できるPBならトライできる場合もあるからです。

 では、PBをどう定義するか? いろいろな言い方が可能でしょうが、米セブン-イレブンの例を踏まえて、小売にとってのPBのあるべきかたちは「NBよりも粗利益を稼げる商品」としたら単純明快ではないでしょうか。

 チェーン間の競争が激化し、賃金アップのためにも利益を稼ぐ必要性が高まる中で、小売がPBへの傾斜を強めることは必至です。

NBは集約の流れに?

 店舗業務を効率化するために店頭の品数を抑えたい。そのような傾向も見られます。

 コープみらい(埼玉県)をはじめ6つの地域生協で構成するコープデリ生活協同組合連合会(コープデリ連合会)は、品揃えの整理に取り組んでいます。PB「コープ商品」は最大限に展開する一方、NBは選別する方向性です。

 大川昌彦代表理事専務理事に8月にインタビューしたところ、商品の選別は複数の理由から取り組んでいるとのことでした。

 「コスト増に対応するには、値入れ率の改善が欠かせません。とりわけ売上の過半を占める日配・グロサリーの改善が重要です。よい取り引き条件を引き出すために、売れ筋を厚くする必要があります。それは同時に物流業務や店舗業務の作業改善にもつながります。品目を削るというよりは、整理するという考え方で進めていきます」(大川専務理事)

コープ商品は9月下旬~11月末にかけて全国規模の販促を展開

 あわせて大川専務理事は、各カテゴリーの売上は「トップNBに頼るところが大きい」とも言いました。NBは重要ですが、スペース的にも作業的にも、粗利益確保の面からも、なんでも置けるわけではないということです。

 コープ商品自体も、地域間で重複している商品の集約を進めています。こちらのねらいも単品のボリュームを増やして効率を高め、値入れ率の改善につなげることにあります。

 店頭の品目数は、寄せては返す波のように揺れ動くものです。増えていけばやがて減り、減った後には増えます。ただ、値上げの波が繰り返し打ち寄せる現在、しばらくはNBの取り扱いは集約の方向に向かうのかもしれません。

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