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「2023年秋・冬」新商品、ロングセラーのブラッシュアップやリニューアル品が上位に

新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い人流は戻りつつあるが、昨今の物価上昇の影響から消費者の購買意識はいまだ保守的となっている。こうした状況下、2023年秋・冬の新商品ヒットランキングを見ながら生活者のインサイトを探ってみたい。

信頼感のあるブランドのラインアップを強化

 2023年7月~12月に新商品・リニューアル商品として発売された商品を期間金額PIでランキング化したところ(販売店率20%以上の商品が対象)、主要カテゴリーのランキング1 位商品は【図表】のようになった。

 新型コロナウイルス感染症が5類へ引き下げられたことで、人流はコロナ禍以前の状態に戻りつつあるが長引く物価上昇や円安などの影響もあり、生活者の食品や日用品に対する財布の紐は堅い。

 こうした環境下、新商品ヒットランキングのカテゴリー1位に挙がった商品は、信頼感のあるロングセラーブランドのブラッシュアップや、人気ブランドのシリーズ品が多くを占めている。

 1990年発売のエスビー食品の「カレー曜日」は、レトルトカレーカテゴリーを代表するロングセラーブランド。同品は時代のニーズに合わせて、継続的にリフレッシュを行っており、23年8月のリニューアルでは、牛角切り肉、じゃがいも、にんじん、玉ねぎを追加して具材量をアップさせた。また、パッケージのままでの電子レンジ加熱調理が可能となったことで利便性が向上し、新たなユーザー獲得につながっている。

 日本コカ・コーラは、2023年春にコーヒーブランド「ジョージア」の大規模リニューアルを実施。これまで「ジョージア」を手に取ってこなかった若年層・女性層などのトライアル獲得に成功し、RTD(Ready to Drink)コーヒー市場の拡大に貢献した。

 特に、猿田彦珈琲監修によるPETボトルコーヒーシリーズは好調で、糖類・砂糖ゼロでも贅沢なラテ感が楽しめる「ジョージア THE ゼロ」はコロナ禍以降広がる健康志向ニーズにも対応し、好調に推移している。

 キッコーマン食品の「いつでも新鮮」は、1滴から欲しい分まで注ぐ量を自在に調節でき、鮮やかな色や風味が変わらず新鮮なままキープできる密封ボトルシリーズ。新商品の「こく旨リッチ 特選丸大豆しょうゆ」は大豆を丸ごと使うことで、まろやかなコクと旨味を実現した。独自の発酵技術により先味がやわらかで後味までコクと旨味、まろやかな味わいが続き、煮物などの調理メニューにも活用しやすい。

主要カテゴリーにおける新商品ヒットランキング1位の商品

出典:KSP-POS(食品SM)に基づき弊社にて集計。2023年7月から12月までに発売された新・リニューアル商品の期間金額PIをランキングで抽出。期間は23年7月から24年2月までの8ヵ月間。販売店率20%以上が対象

家飲み時間を充実させるRTDやスティルワイン

 コロナ禍以降広まった家飲みの習慣は、昨今の物価上昇による生活防衛意識も影響し、2024年に入った現在も継続している。

 サッポロビールの「濃いめのグレフルサワー」は、グレープフルーツ果汁やグレープフルーツ漬け込み酒を一部使用し、居酒屋で飲む手搾りのグレープフルーツサワーのようなジューシーな果実感が味わえる数量限定のRTD。前回「2023年春・夏新商品ヒットランキング」では、炭酸水で割って飲むタイプのRTS(Ready to Serve)「濃いめのグレフルサワーの素」がその他リキュール部門の1位となっており、グレープフルーツフレーバーの人気の高さがうかがえる。手軽に楽しめるRTDの発売により多くのエントリー層を獲得した同社の「濃いめ」ブランドは、リピーターによるRTDからRTSへの移行も多く見られたようだ。

 国産スティルワイン部門では、メルシャンが展開するロングセラーブランドの新商品「おいしい酸化防止剤無添加赤ワイン 濃厚ストロング」が1位となった。コロナ禍以降、食品や調味料で濃い味わいの商品が数多く発売されており、ワインでも「濃い味」ニーズが高まっているが、同品は既存の「おいしい酸化防止剤無添加赤ワイン」と比較し、ポリフェノール量を25%アップさせることでブドウの濃厚さと飲み応えを実現している。

 一方、スパークリングワイン部門ではメルシャンが世界各地のワイナリーとともにつくるワインブランド「メルシャン・ワインズ」から初のスパークリングワインとして発売された「カンティアーモスプマンテ ブリュット」が1位となった。日本のユーザーに合わせた「飲みやすさ」「食事に合う味」に加え、華やかな香りや際立つフレッシュさにこだわっており、〈ブリュット〉は、洋ナシやメロンを思わせるフルーティな香り・さわやかな味わい、〈ロゼ〉は、フレッシュなイチゴやサクランボの香り、ピュアな果実味が楽しめる。

味の新奇性や用途拡大で新たなユーザーを獲得

 健康への関心が高まる中、減塩は中高年を中心に幅広い年代に刺さるテーマの一つだ。

 味の素冷凍食品の「白チャーハン」は、独自の減塩技術によりおいしさと減塩を両立させた冷凍チャーハン。直火焼豚と卵、白葱を使用したシンプルな具材・味付けで、塩分40%カット(同社従来品比)を実現した。「白チャーハン」1食分(250g)の食塩相当量は約1.8gとなっており、厚生労働省が推奨する1日の塩分摂取目標値の1/3以下。黒いパッケージの同社人気商品「ザ★チャーハン」とともに陳列することで冷凍ケース内でも存在感を放ち、新たな冷凍米飯カテゴリーの提案にもつながっている。

 ハム・焼豚部門およびベーコン部門では、プリマハムの連パックの新ブランド「スマイルUP! ロースハム(4連)」「同ハーフベーコン(4連)」がそれぞれ1位となった。「スマイルUP!」のブランドコンセプトは「おいしい笑顔が、毎日のしあわせを連れてくる。」。パッケージデザインは太陽や笑顔に見えるモチーフをアイキャッチとし、オレンジや黄色を配することで家族の笑顔があふれる楽しい食卓を伝えている。

 その他ソース部門で1位となった桃屋の「桃屋のおいしい唐がらしソース」は、日本人になじみ深い鷹の爪系と、刺激的な辛さとフルーティな辛さを持つハバネロ系の2種類の唐辛子を使用したペッパーソース。りんごを主原料とし、すりおろした野菜をバランスよくミックスすることでさわやかな後味を実現。さらにすりおろしにんにくとローストにんにくを加えることで、辛さの中にもコク深さや香ばしさが味わえる。

 ピザやパスタにかける従来のペッパーソースの使用方法だけでなく、カクテルソースやパスタソース、スープのベースなど料理の基礎調味料としての汎用性も高く、メニュー提案次第でさまざまなクロスM Dが展開しやすい点も魅力となっている。