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2023年秋・冬 売上伸長率ランキング ロングセラーの新規ユーザー獲得が成長につながる

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2023年5月以降、人流はコロナ禍以前の水準まで戻ってきたものの、昨今の値上げの影響もあり消費者の節約志向が続いている。今回は2023年10月から24年3月までの金額増減率の高かった商品を各カテゴリーからピックアップ。好調の要因と消費のトレンドを探る。

プロモーション強化によりブランド全体が活性化

 KSP-POSの中から金額構成比1%以上の商品を対象(CGC商品および対象期間の前年10月までに出現のない商品は除外)とし、2023年10月から24年3月までの金額増減率を調査したところ、主要カテゴリーのトップ商品は【図表】のような結果となった。

 新型コロナウイルス感染症が5類へ引き下げられたことで人流はコロナ禍以前の状態に戻りつつあるが、ロシア・ウクライナ情勢による物価上昇や円安などの影響もあり、消費者の食品や日用品に対する財布の紐は固い。こうした環境下、売上伸長率ランキングのカテゴリー1位に挙がった商品は、信頼感のあるロングセラーブランドが多くを占めている。

 紀文食品の「紀文 竹笛®」は、1973年の発売以来、多くの消費者に親しまれてきたカテゴリーを代表する生ちくわだ。最大の特徴は香ばしい皮の焼き目と、しなやかでシャキッとした歯ごたえ。天日結晶塩と藻塩をブレンドして使用することで素材の旨みを引き出し、まろやかな風味に仕上げている。

 近年は若年層への認知拡大を狙ったコミュニケーション施策に力を入れており、SNSではちくわの価値とともに簡単なアレンジレシピなどを紹介し、食べる楽しさやおいしさを訴求している。

 カバヤ食品の「ほねほねザウルス」は02年の発売以来、累計販売数量4000万個を突破するロングセラーブランド。恐竜や古代生物の骨をモチーフにしたユニークなデザインが男児に人気で、オリジナル作品を紹介するスペシャルサイトには毎月1000通を超える投稿があるという。

 また、子供向け雑誌とのタイアップやYouTuberとのコラボ動画、キャラクターのライセンスアウトなど、ブランド認知を広げるプロモーションにも力を入れている。

 えんどう豆を丸ごと使用したカルビーの「さやえんどう しお味」の発売は1993年。豆本来の旨みと甘み、ノンフライ製法によるサックリとした食感が人気で、えんどう豆をイメージしたポコポコした形状も特徴となっている。

 23年に発売30周年を迎えた同ブランドは、新規ユーザー獲得に向け期間限定フレーバーや期間限定パッケージを展開し、ブランド全体の活性化につなげている。

独自性のある味わいで高いリピート率を獲得

 長引く原材料費・エネルギー価格等高騰の影響に加え、環境配慮の観点から、メーカー各社は価格や容器・容量の見直しを行っている。とくに調味料関連については、お得感のある大容量品を展開するなど、その動きが顕著となっている。

 竹本油脂の「マルホン圧搾純正胡麻油」は、豊かなごまの香りがしっかりと感じられ、まろやかな味わいが楽しめる王道の定番ごま油だ。1 9 年のリニューアル時は150g、200g、300g、450gの4SKU展開だったが、22年4月に700gの大容量タイプを投入。昨今の物価高騰の影響から、お得感のある大容量タイプを選択するユーザーが増えており、700gの需要も拡大している。

 理研ビタミンの「リケンのノンオイルセレクティシリーズ」は、独自製法の「ハイブリッドクラフト製法」によりノンオイルとは思えない深いコクや豊かな風味が楽しめるノンオイルドレッシング。22年に容量・価格・パッケージのリニューアルを行い、一部の商品は味の見直しも行った。

 全面リニューアル以降、売上は右肩上がりで推移しており、中でもパルメザンチーズの豊かな風味とクリーミーな味わいが特徴の「リケンのノンオイルセレクティ〈熟成チーズのシーザーサラダ〉」は好調に推移している。

 誰もが知る定番ブランドでありながら、打ち出し方を変えたことで好調に推移するブランドも出てきている。

 キリンビールの「キリン 氷結® 無糖レモン」は、糖類・甘味料不使用でありながらさわやかな果実味やすっきりとした飲み口で発売以来、健康的価値とともにおいしさを求める幅広い年代から支持されている商品。「キリン 氷結® 無糖」シリーズはグレープフルーツやシークヮーサーなどのフレーバー展開、食事への合わせやすさに加え、飲みごたえや気分で選べるアルコール度数のバリエーションも特徴のひとつで、無糖チューハイという新たなジャンルをつくり上げた。

 農心ジャパンの「辛ラーメン」は1986年の発売以来、旨さと辛さが調和した独自の味わいで人気のインスタントラーメンブランド。即席めんはコロナ期間中、在宅時間の増加に伴い大きく伸長したカテゴリーだが、「辛ラーメン」はコロナ禍が落ち着いた現在も前年比2ケタ伸長が続く。

 また、即席めんの主な喫食シーンは土日の昼食だが、「辛ラーメン」については平日や週末の夜の利用も多く、農心ジャパンではブランドサイトや公式SNSを通じて多彩なアレンジレシピを紹介している。

 コロナ禍が落ち着いたものの、ロシアのウクライナ侵攻による政情不安、長引く原材料価格の高騰、円安などの影響から、消費者の購買意識は依然として保守的だ。先行き不透明な状況下、変わりゆく消費者の購買行動を分析し、売場づくりに生かすことが求められるだろう。