毎年、数多くの新商品が投入されるなか、既存商品を伸長させるのは容易ではない。生活者のニーズや消費行動は常に変化しているため、こうした変化にあわせて対応していく必要がある。今回は2022年4月~9月までの金額増減率の高かった商品を各カテゴリーから抽出し、ヒットの要因を探った。
健康訴求商品が依然、好調に推移
KSP-POS の中から金額構成比1%以上の商品を対象(CGC 商品および対象期間の前年4月までに出現のない商品は除外)とし、2022 年4月から9月までの金額増減率を調査。主なカテゴリーのトップ商品は下記のようになった。(図表)コロナ禍でますます注目を集めているのが健康を訴求した商品だ。一正蒲鉾の「カリッこいわし」は、魚のすり身をカラッと揚げ、噛み応え抜群の食感に仕上げたお魚スナック。牛乳2本分のカルシウムが含まれ、魚の栄養を手軽に摂ることができる。子供の栄養補給からシニアの骨粗しょう症予防など、幅広い世代から支持されている。また、コロナ禍を機に、運動不足による体型変化で、健康を意識して機能系ビールを選ぶ人が増えており、キリンビールの「淡麗プラチナダブル」も大きく伸長した。
健康志向の高まりに加え、家庭内調理の増加により伸長したのが、サラヤの「ラカントS顆粒600g」。カロリー・糖類ゼロで砂糖と同じように使用できる。レシピ提案により、飲み物だけでなく日常の料理での活用が増え、大容量タイプが伸長した。
理研ビタミンの化学調味料・食塩無添加の「素材力だし こんぶだし」も家庭内調理の増加で伸長している商品。同社では〈本かつおだし〉との2対1での使用や〈こんぶだし〉のベタ付け企画で使用機会の増加を図っている。
井村屋の「お赤飯の素」は、炊飯器で炊くだけの簡単調理で、色鮮やかなおいしい赤飯をつくることができる。ロングセラーながら高い伸長率となった。エスビー食品の「栗原はるみのクリームシチュー」も家庭内調理機会の増加で伸長した商品で、パウダータイプのルウなのでシチュー以外のアレンジメニューに活用できる点が評価されている。
発信力の高い若年層の獲得が売上拡大のカギ
韓国食品ブームが続くなか、農心ジャパンの韓国風ジャージャン麺「チャパゲティ」が人気だ。もちもちの太麺と香ばしくて濃厚な焦がし味噌ソースが味の決め手となっている。昨年はTVやSNSで話題となり、韓国文化に興味のある若年層から支持を獲得している。
夏の需要開拓につなげているのが、キリンビバレッジの「午後の紅茶 レモンティー」。夏場はお茶や水、スポーツドリンクなどの止渇飲料が中心となるが、コロナ以降はニーズにも変化が生まれ、甘くて報酬感のある飲料を求める傾向にある。そのため、レモンのさわやかさと甘みのある〈レモンティー〉が夏に需要を伸ばした。
一方、ビールも好調だ。20年10月にビール類の酒税率が改正され、新ジャンルとの価格差が縮まりビールへのシフトが進んでいる。22年に発売45周年を迎えたサッポロビールの「サッポロ 生ビール 黒ラベル」は、「大人エレベーター」をはじめとした「黒ラベル」の独自の世界観が、若い世代の獲得につながった。今年10月にも2回目の酒税率の改正が行われることからさらにビール需要が高まることが予想される。