変化する環境やニーズに対応し、スーパーマーケット(SM)の食品売場は進化を続けてきた。その一方で非食品売場は、ほかの部門と比較して進化が停滞していると言っても過言ではない。本稿では、SMの経営コンサルティングに多くの実績を持つアイダスグループの鈴木國朗氏にSMの非食品売場の改善すべきポイントと手法を解説してもらった。※調査日:2021年10月27日、本文中の商品価格はすべて税抜
非食品と食品の売場に存在する“格差”
地域生活者の生活を便利で豊かにすること──。それは、あらためて言うまでもなく、SMの存在理由である。そもそも食品とそれに関連する商品がワンストップで購入できるSMの存在自体が買物を便利にしてきた。しかもSMは、それらを手頃な価格で提供するという課題に取り組み続けてきた。
SMの食品フロアでは、料理のアドバイスをするコーナーを設けるなど、さまざまなかたちでライフスタイル提案を行うようになった。空腹を満たすための食物という次元を超えた、おいしく楽しく食卓を囲むための食品とアイデアの提供である。米国の心理学者、アブラハム・マズローの「欲求階層説」に倣うならば、SMの食品フロアは“高次欲求”にも対応しているわけだ。
こうした「提案力」、そして前述の「利便性」と「低価格」をかなえようとする食品売場に対して、非食品はどうだろうか。
食材を買うついでに購入する、日常生活に欠かせない日用雑貨を一とおり取り揃えるのが一般的な日用雑貨売場だ。ただし、それに十分な広さが確保できないことから、棚の段数を増やして、多数のアイテムを狭いフェーシングで並べる。棚板の間隔が狭いうえに、日用雑貨のパッケージは、袋、箱、ボトルなど多様だから、どうしても商品が見づらく、探しづらく、選びづらい売場になってしまう。これではお客さまにとって便利な売場とは言えない。
しかも、限られた尺数に多くのアイテムを並べると、よほど工夫しない限り、「価格が高い」というイメージを持たれやすい。食品の各部門では、生鮮や総菜を中心に、効率化・ローコスト化に加えて、安さやおいしさの表現にこれまでにも増して取り組んでいる。ところが、日用雑貨においては、ローコストで管理できる棚割りや品揃えになっていないのが現状だ。加えて、フェーシングが狭いと、商品特性を伝えづらく、提案力の弱い売場にもなってしまいがちだ。
以上のように、SMの非食品売場の多くは、「利便性」「低価格」「提案力」をかなえているとは残念ながら言い難い。つまり、「利便性」「低価格」「提案力」の観点からは、食品と非食品の売場のバランスがとれていないと言える。
コロナ禍で生活者の購買行動が変わり、目的購買比率が高まったといわれている。こうした変化の最中にある今こそ、SM企業は「利便性」「低価格」「提案力」を再検討し、お客さまに満足感と豊かさを提供する価値の高い売場に変える必要がある。まさに“売場再編”の時機なのだ。
限られたスペースをどう活用するか
日用雑貨売場の“売場再編”について論じる前に、いくつかの店舗の日用雑貨売場を調査した結果から、お客さまに便利で豊かな生活を提供できる日用雑貨売場のあるべき姿のヒントを探ってみたい。
今回の調査では、
・・・この記事は有料会員向けです。続きをご覧の方はこちらのリンクからログインの上閲覧ください。