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ライフにヤオコーはすでに強化!スーパーの「非食品」強化がドラッグストア対策になる理由

非食品がスーパーを強くする メインイメージ

SMにとって「非食品」はどのような存在か

 コロナ禍という空前の異常事態を経験した食品小売業界。外出を控えたい消費者の「まとめ買い」のニーズが高まり、来店頻度は減ったものの買物1回当たりの購入金額が大幅に増え、売上・利益を押し上げた。コロナ禍は長期戦に入り、2020年度の食品スーパー(SM)各社は“巣ごもり特需”に沸いた。

 21年度に入ってからもその流れは大きくは変わっておらず、21年11月に出揃った主要上場SMの中間決算を見ると、前期比較で減収あるいは減益となったところもあるが、19年度比でみれば増収・増益の企業が多い。21年も終盤に入り、“特需”はようやく一服した感があるものの、SM各社の業績はおおむね好調に推移中といってよさそうだ。

 コロナ禍の食品小売の世界でよく使われるようになった言葉がある。それが「ワンストップショッピング」だ。「1 つの店舗ですべての買物を済ませる」ことを意味するこの言葉を、コロナ禍によって変化した消費者の購買行動を示すキーワードとしてよく目にするようになっている。

 本特集では、「食」を主戦場とする小売業のワンストップショッピングにおいては、「非食品」の扱いが今後より重要になると考え、関係各所への取材と各種調査でSMの非食品部門の在り方に迫っている。

 SMにとっての非食品、いわゆる日用雑貨はどのような存在なのだろうか。

 食品と比べて購買頻度が低く、保存期間が長い日用雑貨品は、青果売場の通路沿いにある冷蔵ケースの裏側、店舗の中でも回遊率が悪い場所に配置されているケースがほとんどだ。SMは食品をメーンに扱う業態であるため、当然、売場面積も狭い。しかも昨今はコロナ禍を背景に食品強化を打ち出す企業が増えており、食品売場拡大のあおりを受けるかたちで日用雑貨が縮小傾向にあるSMも少なくない。

 一般的なSMの日用雑貨部門の売上高構成比は、4~5%ほどと言われる。構成比の低さもあって、同部門にかけられるオペレーションコストも低く、「商品を並べているだけ」の状態となってしまっている日用雑貨売場も多い。

 SMの経営コンサルティングを手掛けるアイダスグループの鈴木國朗氏は、「S Mの食品売場が地域生活者の生活を便利で豊かにするために進化を続けてきたのに対し、非食品売場はそれほど進化していない」とし、「今こそ非食品の“売場再編”を検討するべきだ」と指摘する。

非食品の強化が食品売上を拡大する!?

 コロナ禍によって、本当に消費者はワンストップショッピングを志向するようになったのか。SMの来店客は日用雑貨を購入するようになったのだろうか。

 その答えはどうやら否であるようだ。本特集ではソフトブレーン・フィールドが保有するレシートデータをもとに主要SM・総合スーパー(GMS)チェーンにおける非食品の購入実態を調査している。同調査では、「食品以外の生活必需品も買い揃えることができる」という動機で来店しているお客は少数派であり、そのチェーンをメーンで利用するお客の8割以上がドラッグストア(DgS)やホームセンター(HC)といった他業態で非食品を購入していることが判明している。

 一方で、SM各社は自社の非食品部門をどうとらえているのだろうか。本特集では主要SM企業を対象にアンケート調査を実施し、非食品部門の方針について聞いているが、「強化している」と答えた企業は全体の約4割にとどまった。「現状維持」「縮小傾向にある」と答えた約6割の企業に対し「今後、同部門を強化する考えはあるか」と聞いた別の質問では、8割以上が「ない」と回答。非食品を強化している企業とそうでない企業のあいだに“温度差”が見られた。

 これら調査結果からは、SM企業の多くは非食品強化に積極的に取り組んでいるとはいえず、消費者側も「日用品はDgSやHCで買うもの」と思っているのが多数派であるということがわかる。ではSMは今後も食品に特化した業態として、食品だけを強化していけばいいのだろうか。

 SMとDgSの経営コンサルティングを手掛ける有田英明氏は、「ハウスキーピングニーズ(日々の生活を豊かなかたちで維持するという需要概念)こそ、SMが次に獲得すべきターゲットマーケットである」とし、これを早急に強化すべきだと指摘する。人口減少時代、消費者の胃袋は小さくなる一方であり、食品中心の商品構成では需要の先細りに対応できず、赤字に転落するリスクがあるというのだ。

 また、DgSへの対抗策という意味でも、非食品強化の意義は大きい。近年は食品を強化するDgSが増えているが、DgSの来店客は主に日用品を求めて来店し、食品を「ついで買い」しているとされる。したがって、SMは非食品の利便性や安さによってお客を呼び込み、商圏内にあるDgSに行く機会を少しでも奪うことができれば、自店の食品シェアと客単価を高めることができる。つまり、非食品の強化は、食品の売上拡大にもつながるのである。

 当然、スペースが限られるため、SMの日用雑貨売場にすべてのカテゴリーの日用雑貨を総花的に品揃えするのは不可能である。SMが強みとする「食」に関連したカテゴリー、あるいはあまりかさばらない商品群などを戦略的に強化することで、効率的にマーケットシェアを高められるというわけだ。

人口減少時代の利益確保そしてDgSへの対抗策という観点からも非食品強化の意義は大きい(写真はイメージで本文とは関係ありません)

PB開発にクロスMD……先進SMは非食品を強化中!?

 そのような背景もあってか、先進的な食品小売はすでに非食品の強化に動き始めている。

 たとえば、SM大手のライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長:以下、ライフ)では、同じノンフーズでも「価格」と「価値」のどちらを強く訴求するのか、その役割をカテゴリーごとに明確化するという考えのもと売場づくりを行っている。トイレタリー用品ではDgSに負けない安さを打ち出す一方で、化粧品のような機能が重視されるカテゴリーでは楽しさや豊かさといった「価値」を訴求する、といった具合だ。

 非食品の商品政策(MD)を検討していくうえでは、どうしても売場面積の問題がついてまわる。カテゴリーごとに価格や商品ラインアップにメリハリをつけることで、限られたスペースの中で売場の魅力を最大化するというのがライフの考えだ。

 こうしたアプローチはヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)などでも実践されているとみられ、同社が注力していると思われるオーラルケア用品や、プライベートブランド(PB)で豊富なラインアップを展開するペットフードなどでは、実際に利用者から高い支持を得ていることが消費者調査で明らかになっている。

 また、バロー(岐阜県/田代正美社長)やアクシアル リテイリング(新潟県/原和彦社長)グループのように、日用品PBの開発に力を注ぐ企業もある。一般的に日用雑貨はナショナルブランド(NB)が強い分野だが、購買頻度の高い消耗品などをPBに置き換えることで利益確保を図るという考えだ。実際に前述の両社では、台所消耗品などSMが得意とする「食」や「料理」に関連したPBを投入し、着実にお客から支持を集めている。

 売場づくりでは、食品との関連販売、いわゆる「クロスMD」に力を入れる企業も見られた。精肉売場にフリーザーバッグを配置したり、サツマイモの近くにアルミホイルを置いて焼き芋を提案したりといった具合に、スペースが限られる日用雑貨売場から飛び出して、食品売場に商品を並べることで露出を増やすという手法だ。オペレーションコストがかかるという問題はあるものの、いずれの商品も販売は伸びているという。

 ここ数年のSMは、食品強化型のDgSやフード&ドラッグなどにお客を奪われてきた経緯がある。今後もDgSは食品を強化する構えを見せており、競争激化は必至だ。そうした中で、SMはDgSからお客を“奪い返す”というストーリーを描くことができるか。

 足元では、大型M&A(合併・買収)が続いたHC業界から従業員が流出し、日用品をはじめ非食品販売の知見を持った人材が他業態に流入していると言われている。また、ある生鮮特化型のディスカウントSMが非食品を強化すべく水面下で準備を進めているという噂もある。いつの間にか非食品の強化がSMにとって重要な生存要件になっている、という可能性はゼロではない。

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