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小売業の感染対策は店舗選びに影響するのか?調査から見えてきた、消費者が利用を控える理由とは

新型コロナ感染が発生以来、店舗では様々な感染予防策が展開されている。それは来店顧客を守るだけでなく、店舗で働く従業員を守ることにも繋がる。主要各社の感染対策を振り返ってみる。

「感染対策に不安がある」

 新型コロナウイルス感染が蔓延してから、1年半。本稿を執筆している8月上旬の時点で、その収束は見えてこない。この間、消費者の購買行動にも大きな変化が現れ、小売業界では客数減に悩まされる状態が続いた。

新型コロナ感染が発生以来、店舗では様々な感染予防策が展開されている。千葉で2020年5月撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 サイバーエージェントは、2020年9月11日と12日に、全国1万340人を対象に、コロナ禍における人々の購買行動の変化と小売店舗の利用意向について、意識調査を実施した。同調査では、「新型コロナウイルス感染拡大後、利用頻度が減少した理由」について聞いている。そこでは各業態とも「不要不急の外出を控えた」ことが理由のトップに挙げられたが、「感染対策に不安がある」の回答率も、多くの業態で2 0%前後、ショッピングモールでは37%と大きなウエートをしめている。

 調査実施時から1年近くが経ち、消費者のコロナ慣れという側面も見え始めているが、小売店舗に対するまなざしに、大きな変化はないと思われる。感染対策の重要性や対策強化は、今後も小売店舗にとって店舗利用促進のための重要なファクターである。

衛生管理の徹底と三密を避ける工夫

 小売各社は、新型コロナ感染が蔓延してから、即座に感染予防対策を講じた。三密を避ける工夫、非接触を可能にするレジ業務などでのオペレーション、入店の際の除菌などである。

 具体的に挙げられるのは、手洗いの励行や作業用の手袋装着などの、従業員の衛生管理の徹底である。また、開店時間を早めて来店ピーク時をずらす、レジ待ちの人の間隔をあけるためのサインの設置、パーテーションの設置やキャッシュレス化の促進、店舗入口での除菌剤の設置なども進めてきた。

 さらに進化した取り組みを、これまでDCSオンラインで掲載してきたなかから紹介しよう。

 イオンスタイルでは、買物カゴの持ち手を1つずつ自動で持ち上げ、紫外線照射で除菌する装置「ジョキンザウルス」を導入した。買物カゴの衛生管理では、昨年11月オープンの「関西スーパー富田林駅前店」で、抗菌仕様のショッピングカートと買物カゴを導入している。

 昨年10月にオープンした「イトーヨーカドー新田店」では、「サニテーションカウンター」を出入口に設け、手洗い場や消毒液、非接触検温システムを設置。さらに、大型モニターを用意し、店内・バックルームで実施している感染防止の取り組みを動画で紹介する。

 今年3月末からイトーヨーカドー全店で、レジに会話補助システムを設置。今年4月にオープンしたイトーヨーカドー大和鶴間店では、バーチャルで試着や使用イメージが確認できる「Vミラー」を、婦人・紳士売場、化粧品売場、ランドセル売場などに導入した。これは、“非接触”ニーズに対応すると同時に、時間のかかる浴衣などの試着を手軽にし、多数試着できるようにする目的もある。

 ユニークな取り組みとして、昨年11月にオープンした「スーパーアークス矢巾店」では、 冷凍ショーケースに、扉を開ける際に手で触れずに開けることができる特殊な取っ手を導入した。コロナ禍の消費者の不安解消のために、地元企業が開発したものだという。

 衛生管理と三密回避は、今後のニューノーマルなオペレーションとして、常態化していくことは間違いない。そのためにはちょっとした工夫で、お客にロイヤルティを与えることが十分に可能である。