コロナ禍で家庭内需要が増加したことで好調に推移しているシリアル市場。なかでもオートミールの拡大幅はきわめて大きい。その健康価値が注目され、多くのTV番組で取り上げられたことで人気が急上昇。メーカー各社も品揃えを充実させており、今後さらなる市場の拡大が見込まれる。
糖質量が低く栄養豊富、TV番組でも大注目
オートミールがコロナ禍で急伸長している。2020年に入ってからSNSで徐々に話題となり、巣ごもり生活が本格化すると、健康感・簡便性・保存性に優れた食品として認知が一気に拡大。テレビの健康情報番組でも頻繁に取り上げられるようになったことで需要が急激に高まった。
KSP-POSデータのオートミール全体の期間通算(2020年8月~21年7月)の金額PIを見ると264円で対前年同期比113%増。年間を通じて前年を大きく上回っている。確かに、コロナ禍でシリアルの価値が再評価されたが、オートミールの急伸長には目を見張るものがある。なぜここまで高い伸びを達成できたのか。その要因として、栄養豊富なうえに汎用性が高いことが挙げられるだろう。
そもそもオートミールとは、オーツ麦を調理しやすく加工したシリアルの一種。加工の仕方によって、粒が粗くしっかりとした食感のものから、細かく砕かれておかゆ状になりやすいものまでさまざまなタイプがある。
オートミールの原料となるオーツ麦には、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がバランスよく含まれているが、前者は急激な血糖値上昇の抑制、後者は整腸効果があるといわれている。また、鉄分やビタミンB1、たんぱく質も豊富だ。しかも、米に比べてカロリーも糖質量も低いうえに、調理方法が簡単というのも特筆すべき点だ。粒が細かいタイプなら、牛乳やスープなどに入れるだけでよい。粒が粗いタイプのものなら、水を加えて電子レンジで温めるだけでごはんのようになるため、米の代わりに活用できる。そうした点が評価され、美容や健康に関心の高い生活者を中心に支持を集めている。
多種多彩な商品が登場、市場はさらに活性化
こうしたトレンドを受けて、メーカー各社ではオートミール市場をさらに盛り上げようと取り組んでいる。
まず、オートミール市場のリーディングカンパニーである日本食品製造は、今年3月、米の代わりとして電子レンジで簡単に“米化”することができる「日食 プレミアム ピュアトラディショナル オートミール」を発売した。和洋中、幅広いアレンジが可能なため、毎日の主食として利用できるのが魅力だ。
“米化”に適したオートミールといえば、ライスアイランドの「マルチオートミール」も挙げられる。パッケージにも「米・パンの糖質置き換えプログラム」と入れて、視認性を高めている。ごはん料理のベースとして、クッキーなど製菓材料として、文字どおりマルチに使えることを強みにアピールしていく考えだ。
一方、初めてオートミール市場に参入するのが日清シスコだ。日本ではまだまだオートミールは浸透していないことから、手軽にトライできるように、今年9月「おいしいオートミール トマトクリームリゾット風」と「おいしいオートミール チーズクリームリゾット風」の2品を投入した。なじみのある味に仕上げることで、エントリー層が抱くオートミールの食べ方やおいしさの不安を解消する。
ほかにも、多種多彩なオートミールが各社から登場しており、消費者の健康志向の高まりを背景に市場はさらなる拡大が期待できそうだ。