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2021年の精肉市場はどうなる?販売データや大手食品スーパーの売場からトレンドを探る!

2020年に内食需要の拡大で大きく消費を伸ばした精肉市場だが、2021年は消費や供給の動向も落ち着き、急増した昨年と比較して反動減の状況も見られる。店頭では需要を着実につかむため、簡便商品の強化や、多様な食べ方提案の発信など、内食需要の継続につながる取り組みが強化されている。

年間を通して着実に成長、今年3月、4月は反動減

コロナ禍では、店頭において試食販売などの従来型のプロモーションが実施できなくなったため、さまざまな戦略で内食需要の取り込みを図る動きが活発化している。 karimitsu/i-stock

 新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大以来、精肉市場も大きな影響を受けてきた。2020年は家庭で食事をする機会が増えたことで、内食需要が増加。外食での畜肉需要が落ち込む一方、量販店における販売実績は前年を大きく上回った。

 インテージSRIのデータから直近の2020年6月~2021年5月のマーケットサイズ(販売金額)のデータを見ると、2020年6月から2021年1月までは、牛肉、豚肉、鶏肉がいずれも前年実績を大きく上回って推移している(参照)。

 21年に入って2月から販売金額が下降し、3月、4月はすべてで前年を下回るも、5月には回復している。これは昨年2月以降に販売金額が大きく伸びた反動減だと考えられる。

 20年の同時期には食品全般の販売動向が急伸しており、店頭では品薄状態も見られた。そうした動向と比較すると、コロナ禍が長引くなかで、市場は一定の落ち着きを取り戻したといえそうだ。

 また、一時需要を伸ばした加工肉や味付け肉などにも反動減の傾向が出ている。

出典:インテージSRIデータ 期間:2020年6月~21年5月 対象:GMS/SM

多様な手法で内食需要の取り込みを図る

 コロナ禍では、店頭において試食販売などの従来型のプロモーションが実施できなくなったため、さまざまな戦略で内食需要の取り込みを図る動きが活発化している。

 店頭に設置したモニターディスプレイなどを活用した情報発信を行うチェーンが増えたほか、QRコードなどを活用したレシピ情報の提供などが浸透している。

 また品揃えの面では、家庭での調理機会が増えたことに対応する簡便商材の充実や、逆に調理に時間をかける層が増えたため、ブロック肉など、本格メニュー向けの食材に力を入れるチェーンも増えている。

 一方、従来からのヘルシー志向に対応するオーガニックや減塩などの商品のほか、昨年からはサステナブルな食生活が注目されるなかで、代替肉を提案するチェーンも増えている。精肉部門や日配部門では、プラントベースフード(植物由来原料食品)の売場が大きく拡大した。

 今後もコロナの影響を見据えながら、こうした需要や関心のトレンドに合わせた戦略が求められていくことになりそうだ。

大手食品スーパーの動向は?ライフは需要拡大中の「簡便」「健康」商品を強化

ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長:以下、ライフ)は、精肉部門において「簡便」「健康」が特徴の商品の販売を強化している。売場でアイテムの充実を図ると同時に、価値訴求にも取り組み、新たな需要の開拓を図る。

豚肉、鶏肉などの需要が拡大

 精肉分野の商品政策を、近畿圏畜産部の前坊智晴部長は次のように説明する。「低価格を打ち出すのではなく、味、品質を重視した品揃えで集客するのが当社の基本的な考え方。競争が激化するなか、他社との差別化を意識している」。

 精肉のうち力を入れる牛肉は、指定牧場で肥育された独自ブランドのほか、各地の銘柄牛を中心に商品を構成。豚肉や鶏肉も同様の方針で、他社には並ばないおいしさにこだわった品揃えを追求する。

 あらためて近畿圏畜産部の畜種、商品別の構成比(2021年3~5月実績)に目を向けると、精肉(生肉)が82%、ハム・ソーセージなどの加工肉が18%。そのうち精肉の内訳は、牛肉3 0 . 4%、豚肉31.8%、鶏肉22.3、ひき肉9%、「生食・バラエティミート」6.5%となっている。

 この1年を振り返ると、コロナ禍で内食需要が拡大したことで精肉部門の売上高は対前年比2ケタ以上増と大きく伸長した。

 なかでも伸び幅が顕著だったのは豚肉、鶏肉、ひき肉で、21年2月期は対前期比約20%増で推移。節約志向の高まりにより割安な畜種が注目されたほか、冷凍保存すれば幅広い料理に使える商品の需要が拡大。とくにひき肉は昨年4月から5月初旬にかけての緊急事態宣言期間中には対前年比50%超と大幅増となった。

 22年2月期に入り、特需は落ち着きを取り戻したが、コロナ禍を経て消費者のニーズは変化している。依然として内食需要が大きいなか、短時間で料理できる「簡便」商材の売れ行きが順調に推移。また近年の「健康」志向がいっそう強まりを見せる。

 ライフでは、これらの傾向を精肉部門の品揃え、売場づくりに反映することで、新たな需要の取り込みをねらっている。

POPを使って価値を訴求

薄切りタイプや少量パックなど「簡便」が特徴の商品を充実させている

 「簡便」需要の高まりを受け、販売を強化している具体的な商品としては、豚肉では薄切り肉や少量といった形態の商品が挙げられる。「『簡便』といえば、一般的には味付け済の半調理品をイメージする人が多い。しかし当社では、短時間で料理できるものも『簡便』と定義し力を入れている」(前坊部長)。

 鶏肉では大きなサイズの素材そのものではなく、小さくカットした焼肉用などを増やしている。忙しい人も台所に立つ機会が増えているのを受け、短時間で火がとおる商品を充実。実際、各店ではそういった商品の動きは好調という。

高まる「健康」志向を受け、ラム肉の販売を強化。PCに、美しくカットできる専用機を導入。商品の見栄えのよさにもこだわる

 一方、「健康」志向が高まっているのを受け、近畿圏畜産部が注力しているのは、人間の体に必要な必須アミノ酸のほか、免疫力をアップさせるリシンなどを豊富に含むラム肉である。

 ただラム肉は肉質が柔らかいため、薄切りにするのは難しいとされる。これに対しては、畜産専業のプロセスセンターで肉を加工しやすくする専用設備を導入することで対応する。肉の表面をマイナス3度で冷却する「パーシャルフリージング」により、美しい商品化を可能にした。

 以前は一部店舗のみの扱いだったが、現在は近畿圏の全158店で販売し、好調に売れている。

おいしさや料理法などを紹介するPOPを添え、商品価値の訴求にも力を入れる

 これらの品揃えを工夫するほか、積極的に取り組むのは商品価値を訴求するための活動である。おいしさの理由や上手に調理するためのワンポイントアドバイスなどを記したPOPを売場に添え、来店客が商品を選ぶ際の参考にできるようにしている。

 ライフの店舗には、レギュラーSMのほか、こだわり商品や圧倒的な品揃えを行う「セントラルスクエア」というフォーマットもある。いずれでも、「簡便」「健康」が特徴の品揃え、売場づくりを強め、地域からの支持獲得をめざしている。

 前坊部長は「お客さまの声に耳を傾けながら、より満足いただける畜産部門になるよう努力を続けたい」と意気込みを語る。

 

※7/28 内容を変更しました。ケーススタディは非公開としました。