外出自粛による巣ごもり生活によって、健康感や簡便性、保存性の高さなどシリアル本来の価値が再評価され、市場は引き続き拡大傾向にある。コロナ禍でますます高まる健康志向を背景に、“より健康に、よりおいしく”を追求した新商品が次々と登場。さらなる拡大が期待されている。
コロナ禍で在宅時間が増加 おやつ需要も増えて好調
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、外出自粛を余儀なくされ、買い物頻度も減ったことから、家庭におけるシリアルの需要が大きく伸長している。健康感や簡便性、保存性の高さなどシリアルの基本価値が再評価されたのが要因だ。
KSP-POSデータのシリアル全体の期間通算(2020年5月~21年4月)の金額PIを見ると、2917円で対前年同期比15.1%増。21年3月まで前年を大きく上回っている。一般に、冬場の需要が夏に比べて落ちるといわれているシリアルだが、今期はそうしたこともなく、高い伸びを維持。直近の21年4月は対前年同期比で11.4%減と落ち込んだが、これは20年4月に最初の緊急事態宣言が発出され、巣ごもり生活が始まったことで大きく跳ねた反動といえるだろう。
一方、シリアルのなかでもグラノーラを含む大人向けシリアルの動向はどうか。期間通算(同)の金額PIは2221円で対前年同期比10.6%増。こちらも好調に推移している。在宅時間が増えたことで、朝食だけでなく、小腹がすいた時の間食としての需要も高まっており、第二次ブームの到来といえそうだ。
長引くコロナ禍で、既存ユーザーはもちろんのこと、これまでシリアルを食べたことのなかった新規ユーザーも、以前は食べていた休眠ユーザーも取り込み、シリアル市場は間口も奥行きも拡大、結果として、市場全体が活況を呈している。
より健康においしい機能系シリアルが登場
こうした市場動向を受けて、メーカー各社ではユーザーニーズに応えた商品を次々と投入している。コロナ禍でますます高まる健康志向を背景に、“より健康に、よりおいしく”が共通のテーマといえそうだ。
たとえば、日清シスコでは主力商品の「ごろっとグラノーラ」シリーズから新たに「ごろっとグラノーラ 糖質60%オフ チョコナッツ」を発売した。同シリーズのなかでも人気の高い「ごろっとグラノーラ チョコナッツ」の糖質オフタイプである。“コロナ太り”など巣ごもり生活による体重・体形の変化を気にする人は多いだけに魅力的だ。
一方、腸活という切り口から日本ケロッグが提案するのは、「ケロッグ オートミール」。栄養バランスのよさとアレンジの幅広さで、ご飯に代わる主食として活用できるオートミールは、今注目のシリアルだ。おかゆやリゾットのように温めて食べることもできるため、手軽につくれるオリジナルレシピをサイトで公開し、トライアルを促進させている。
オートミール市場のリーディングカンパニー、日本食品製造も今春「日食 フィンランド産オーガニック オートミール」や「日食 プレミアム ピュア トラディショナル オートミール」を相次いで発売。タイプの異なるオートミールを揃えることで、新たなファン獲得をめざす。
また、今年で発売30周年を迎えた「フルグラ」ブランドを展開するカルビーでは、30周年を記念して、「#みんなでつくるフルグラ」キャンペーンを通じて、ユーザーニーズに応えた味わいのシリアルをつくり、今秋発売する予定だ。
機能に特徴をもたせながらおいしさも両立させた機能系シリアルの登場によって、シリアル市場のさらなる拡大が見込まれる。