食品スーパー(SM)の重要な収益部門の1つである精肉。しかし新型コロナウイルス(コロナ)禍では試食販売が難しくなり、それに代わる商品の味や価値を訴求する手法の構築が急がれる。また、専門的なレベルの肉総菜の開発やオーガニック商品の販売拡大など、取り組むべきことは多い。
プロの提言!
▶クロスMDを今一度強化し単価アップを図る
▶専門性の高い肉総菜の提案に注力する
▶当面は「代替肉」よりも「オーガニック」を強化せよ
試食販売の代替としてクロスMDの強化がカギ
コロナ禍において、売場対応面へのマイナスインパクトとして挙げられるのは、試食販売ができなくなったことだ。とくに精肉部門における試食販売は、シズル感を演出しながらおいしさをわかりやすく伝えることができる点で大きなメリットがあった。しかしそれができなくなった今、試食に代わる新たな訴求方法を考える必要がある。
では、具体的にどのような取り組みが考えられるだろうか。筆者は大きく2つあると考えている。
1つは、「クロスMD」の手法を取り入れた売場展開である。コロナ禍においては、お客の来店頻度は減少したが、まとめ買い効果などもあり客単価は伸長傾向にある。そうした状況下でやるべきことは、節約意識を駆り立てるような安売り販売ではなく、明確なメニュー提案を行ったうえでのクロスMDの強化である。
より具体的な事例をあげて説明しよう。たとえば、韓国料理の人気メニューの1つ「参鶏湯(サムゲタン)」。寒さの厳しい韓国では冬の定番で、もち米と、松の実や朝鮮人参などを鶏まるごと1羽の肉の中にも詰めてスープで炊き込んだ、薬膳料理の一種である。日本でも複数のメーカーからレトルトの参鶏湯スープが発売されており、これと若鶏手羽元をクロス販売すれば、「家庭で手軽に楽しめる本格的な参鶏湯」を訴求することができる。
筆者がコンサルティングを行っているあるSMの精肉売場では、2種類のスープを販売しており、1つは鶏肉まで入った1500円(以下、本体価格)の商品、もう1つは具なし・小サイズで880円のものである。
1月20日より、後者の商品に対して手羽元600gパックのクロス販売を実施したところ、以前と比べて、平日は日販量平均ベースで3.4倍、土日はおよそ4倍の実績を出した。加えて特筆すべきが、クロス販売の対象ではない1500円の商品も2倍以上の売れ行きを示し、コンスタントに売れるようになった点である。
この事例から何を理解すべきか。客単価アップをねらったクロスMDを行ううえでは、関連販売を行う商品をいかに多く揃えるかがカギになるということだ。たとえば精肉部門で鍋提案を行うのであれば、「鍋スープ」の品揃えは地域一番にしなければならない。
ちなみに同じ店では、「鍋スープミュージアム」と題したコーナーを展開、その品揃えは圧巻である。もつ鍋スープと国産牛ホルモンの組み合わせ販売も好調で、チェーン全店でも断トツの売上を誇っている。
さらにこの店では
・・・この記事は有料会員向けです。続きをご覧の方はこちらのリンクからログインの上閲覧ください。