例年12月になると、「忘年会」や「クリスマスパーティ」、「冬休み」、「年末年始の準備」などを切り口に、どの食品スーパーの店頭でも、当たり前のように派手な売り出しや賑やかなプロモーションが展開されていた。しかし2020年に限っては、違う光景が見られた。どの食品スーパーもふだんの週末と変わらない程度のプロモーションしか見られなかったのである。もちろん、その原因は、現時点でもいつ終息するかまったく見えない、新型コロナウイルスの感染拡大だ。本稿では、2020年末の食品スーパーのプロモーションから、コロナ禍における食品スーパー企業のクリスマス・年末商戦の戦い方を振り返ってみたい。
コロナ禍で迎えたクリスマス商戦
「例年だったら、この時期にはうんざりするほどスーパーの折り込みチラシが入ってくるのに、今年は回数も少ないし、チラシのサイズも小さくなっている」
徒歩圏内に複数の大手スーパーの店舗があり、よく利用するという関西在住の知人はそのように話す。
食品スーパーは日常生活を支えるライフラインであり、顧客の“密”状態を回避しながら、営業を続けていくことが求められている。入店時の手指消毒、マスク着用はもちろん、少人数での来店、キャッシュレス決済の推奨、顧客間の距離の確保(「エスカレーターは前後3段をあけて」という注意書きを掲示しているところもある)など、“密”の回避を強く印象付けている店舗も少なくない。
とはいえ、本音の部分で顧客の密回避以上に、店側がピリピリしているのは店舗スタッフへの感染だ。ある業界関係者は「(感染者が)一人でも出れば、店を閉めなければならない。食品スーパーの売上高は堅調に推移しているとはいえ、短期間でも閉めることになれば、その間の売上は消えてしまう。それ以上に怖いのが、『あの店は……』という風評が長く残ることだ」と語る。
食品スーパー10社のチラシを比較!
こうしたこれまでにない年末を迎えたなか、食品スーパーの売場のどうなっているのか。折り込みチラシ(デジタルチラシ含む)の情報をベースに、クリスマス・年末年始に向けた食品スーパーのプロモーションを振り返ってみたい。今回、折り込み販促チラシをチェックしたのは10社。それらに打ち出されたメーンのキャッチコピーは次の通りだ。
◆ライフコーポレーション
「家族で過ごすChristmas」(コモレ四谷店、売り出し期間:12月23日-25日)
「今年はお家でお手軽Christmas Party」(南津守店、同12月23日-25日)
◆サミット
「おうちでハッピークリスマス」(同12月23日-25日)
◆ダイエー
「今夜はおウチでクリスマス ワイン食で楽しもう」(首都圏、同12月23日-25日)
「今夜はおウチで楽しむクリスマス」(西神中央店、同12月24日-25日)
◆ヨーク
「ちょっと贅沢、今年はみんなでおうちでクリスマス」(同12月23日・24日)
◆文化堂
「クリスマス お家でごちそうパーティー」(同12月22日-25日)
◆プレッセ(東急ストア)
「こだわりの素材で作る本格派料理で心に残る夜を Merry Christmas」(同12月21日-24日)
◆オークワ
「おウチごはんHappy Christmas」(豊橋ミラまち店、同12月24日・25日)
◆フィールコーポレーション
「お家de楽しむクリスマス」(豊橋あけぼの店、同12月24日・25日)
◆ヤマナカ
「お家でHappy Christmas」(豊橋フランテ館、同12月24日)
◆マックスバリュ東海
「今年はおうちDEレストラン気分 Merry Christmas」(豊橋橋良店、12月24日・25日)
これらを見ると、いずれも家でのクリスマスの楽しみ方を提案している(直接的な表現のないプレッセも、「素材で作る」とあり、実質的には、家を意識したイメージだ)点で共通しているの。これが2020年のクリスマス売り出しの実態だ。ただ、その中にあって、東京中心に店舗展開している3社(ヨーク、文化堂、プレッセ)とマックスバリュ東海は、「ちょっと贅沢」(ヨーク)、「ごちそう」(文化堂)、「本格派料理」(プレッセ)、「レストラン気分」(マックスバリュ東海)といった具合に、「家×クリスマス」にちょっとした“ハレ”の要素をトッピングしているのがわかる。
こうしたキャッチコピーのもと、各社は、この冬、どんな商品構成、売り場づくりを行っていたのか。次回は、これら食品スーパー10社がそれぞれどのような商品政策をとっていたのかをみていきたい。