新型コロナウイルス感染拡大で巣ごもり消費が高まるなか、プレミックスやデザートの素などのホームメーキング材料の品薄が続いている。保存ができ、子供と一緒に楽しくつくれることが需要を押し上げたようだ。
デザートの素は11月以降右肩上がりが続く
ホームメーキング材料のなかには、プレミックスやデザートの素、水あめ、はちみつ、シロップなどが含まれているが、今回は、コロナ禍の巣ごもり需要で大きく伸長しているプレミックスとデザートの素を取り上げた。
KSP-POSデータのデザートの素の期間通算(2019年10月~20年9月)の金額PIは、416円で対前年同期比18.1%増。ゼリーやプリン、ぜんざい、杏仁豆腐の素などのデザートの素は、火を使わないので小さな子供でも簡単につくれるものが多く、年間を通して安定した売上を続けている。とくにハロウィンやクリスマスには需要が高まり、11月は同8.2%増、12月は同17.6%増と堅調に推移した。
首都圏で外出自粛要請が出された3月は同17.6%増で、緊急事態宣言が発令された4月には同66.1%増、5月は同62.2%増と、大幅なプラスとなった。6月、7月が前年割れとなったのは欠品が原因と考えられる。8月には徐々に商品が戻ってきたことで、同17.5%増、9月も同17.5%増となるなど、デザートの素の好調は続いている。
デザートの素は、小さな子供でも簡単につくれ、保存ができ、汎用性があるのが人気の理由だ。外に出られず、暇を持て余している子供に「自分でつくる楽しさ」を教えることもできる。
牛乳でつくるデザートや和風デザートが人気
デザートの素でトップシェアを誇るのが、ハウス食品のロングセラーブランド「フルーチェ」。牛乳で混ぜるだけで簡単につくれるデザートで、イチゴやマンゴー、メロン、ピーチなどの種類があり、小さい子供を持つ母親から支持されている。同社ではほかにもプリンの素の「プリンミックス」、ゼリーの素の「ゼリエース」、フローズンデザートの素「シャービック」などを展開し、カテゴリーを牽引している。
同じように牛乳でつくるデザートで伸長しているのが、アスザックフーズの「牛乳でつくる飲むデザート」。お湯での調理が常識だったフリーズドライ業界のなかで、冷たい牛乳で溶かす技術を開発した同社では、2003年に〈ザク切りいちご〉を発売。同商品を使うことで牛乳が苦手な子供も「喜んで飲んでくれる」と母親から好評だ。また、シリアルに混ぜたり、ヨーグルトやアイスのトッピングにするなど、さまざまな使い方が浸透し、子供だけでなく幅広い世代から人気となっている。
和風デザートの素では、井村屋のぜんざい、おしるこが人気で、なかでも濃縮ぜんざいのお徳用パック「ぜんざいファミリーパック」が売れ筋だ。濃縮タイプなので、鍋にぜんざいと水を入れて煮るだけで簡単につくることができ、好みの甘さに調節できるのが特徴だ。
汎用性の高いホットケーキミックス
デザートの素同様に巣ごもり需要で拡大したのが、お好み焼粉やホットケーキミックスなどのプレミックス。KSP-POSデータのプレミックスの期間通算の金額PIは2077円で対前年同期比27.8%増。1月までは前年割れが続いていたが、2月から需要が徐々に高まりはじめ、3月は同42.7%増、4月は122.3%増、5月は83.4%増と大きく伸長した。6月以降も2ケタ近くで推移している。
ホットケーキミックスは小麦粉や砂糖、ベーキングパウダーなどがミックスされているので、簡単にさまざまお菓子がつくれるのが特徴。パンケーキやドーナツ、クレープ、マフィンなどのお菓子のほか、肉まんやたこ焼などにも活用できる。親子で手軽に手づくりのお菓子が楽しめるホットケーキミックスは引き続き好調だ。
簡単・手づくりメニューとして人気のお好み焼粉やたこ焼粉も好調で、一時は品薄になるほど。小麦粉でもつくれるが、鰹や昆布などのだしや山芋が入っているので、手軽においしくつくれる点が支持されている理由だ。
定番のお好み焼粉ホットケーキミックスが上位
プレミックスのランキングをみると、お好み焼粉・たこ焼粉では、オタフクソースの「お好み焼こだわりセット4人前」がトップで、次いで日清フーズの「お好み焼粉500g」「たこ焼粉500g」、ブルドックソースの「月島もんじゃ焼 ソース味98g」、日本製粉の「ニップンお好み焼粉 袋200g」が続く。ほとんどの商品が金額PIの前年比は2ケタ増と大きく伸長した。
ホットケーキミックスでは、森永製菓の「ホットケーキミックス600g」がトップで、対前年同期比72.3%増となった。そのほか、シジシージャパンの「ホットケーキミックス600g」、日清フーズの「ホットケーキミックス 極もち540g」、昭和産業の「SHOWAホットケーキミックス600g」などが続く。国産原料を使った商品やふんわりもっちり感などの食感に特徴のあるもの、たんぱく質や食物繊維を強化した健康志向の商品など、こだわりの商品も登場している。
コロナ禍における需要は“特需”といえるが、トライアルの獲得にもつながったため、継続購入を促進するために、引き続き、メニュー提案を強化していく必要がありそうだ。
アスザックフーズ、牛乳との関連販売が効果的「牛乳でつくる飲むデザート」
お湯での調理が常識だったフリーズドライ業界のなかで、冷たい牛乳で溶かす技術を採用し、2003年に発売した「牛乳でつくる飲むデザート」。冷たい牛乳を注ぐだけで果肉たっぷりのデザートが楽しめる人工甘味料、香料、着色料不使用のフリーズドライ商品だ。熱湯や包丁などの道具を使わないので、「小さな子供でもつくることができる」、果肉感があるので「牛乳嫌いの子供も飲める」など、好評となっている。とくにコロナ禍における“巣ごもり”需要により、店頭配荷が進み消費者に定着した。自粛が明けた6、7月も売上高は順調に上がり、7月は前年同月と比較して〈ザク切りいちご(2食)〉が2.3倍に、〈まるごとベリーベリー(2食)〉は、前年の3倍で伸長した。
同商品は牛乳との関連販売が効果的なので、アスザックフーズではアウト展開しやすいハンガー什器やボード、スイングPOPなどの販促物を用意して積極的に提案。「牛乳でつくる飲むデザート」を使うことで、家庭の牛乳の消費量が増えることから牛乳との関連販売は、牛乳の売上アップにも貢献し、流通からも好評となっている。
また、さまざまなアレンジも可能で、ヨーグルトやパンケーキに混ぜたり、シェイクやアイスキャンディーなどにも活用できる。果実感のあるフリーズドライだからこそできるレシピをクックパッドとタイアップして発信。さらに日常のおやつやホームパーティーレシピなどもリーフレットで提案している。
同商品は小さい子供を持つ世帯をターゲットにした商品だが、アレンジレシピを提案することで、幅広い年齢層からのトライアルが獲得できるため、同社では引き続き需要拡大をめざしてレシピ提案に力を入れていく。