単身世帯や高齢者の増加により、個食化が進行していることから、お湯をかけるだけで手軽に1人前をつくれるフリーズドライ(FD)商品が好調だ。味噌汁やスープを中心に、さまざまなカテゴリーに広がりをみせており、今後も安定成長が予想されている。
マーケットトレンド
巣ごもり需要の拡大により2月から味噌汁、スープ類ともに好調
フリーズドライ製法は、過度に加熱をしないため、栄養成分の損失が少なく、具の再現感や量の多さなどが特徴。軽くて持ち運びに便利で長期保存ができるため、非常食としても注目されている。
FD食品はふりかけやお茶漬けの素、カップ麺の具材、鍋つゆなどさまざまなカテゴリーで展開されており、なかでも大きなボリュームを占めるのが味噌汁だ。
インテージのSRIデータによると、味噌汁の販売金額の期間通算(2019年6月~20年5月)の対前年同期比は12.5%増と好調に推移。月別にみると1月から5月まで2ケタ増で推移している。健康志向の高まりを受けて積極的に味噌汁を摂取する傾向にあり、なかでも手軽に本格的な味わいで、具の種類も多いFDの即席味噌汁が好調に推移している。それに加え、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い“巣ごもり”需要が拡大したことで、家庭内ストックとして即席味噌汁のニーズが高まったようだ。2月~3月は同20%以上と高い伸びとなっている。
味噌汁は、FD食品の老舗のアマノフーズやアスザックフーズ、永谷園、味の素など競合が多いカテゴリーだ。
一方、スープ類の販売金額の期間通算の対前年同期比は0.7%増と微増。8月~1月までは前年割れとなったが、2月からは前年を上回り、3月と4月は2ケタ増となった。味噌汁同様に新型コロナウイルスの感染拡大により、内食化が進行したことでスープ類の売上も拡大している。FDのスープ類は具の再現度が高く、バリエーションが豊富なのが特徴だ。そのままスープとして楽しむのはもちろん、リゾットやドリア、パスタなど、アレンジメニューがつくれるのも魅力のひとつだ。
ご飯ものやデザートまでラインアップが充実
ご飯ものやデザートまでラインアップが充実FD食品は味噌汁やスープ類だけでなく、種類が豊富で、アマノフーズでは味噌汁のほか、親子丼や中華丼などの丼ものや炊き込みご飯、リゾット、中華粥、雑炊などのご飯もの、パスタシリーズなどを展開している。
アスザックフーズでは、味噌汁やスープのほか、だしにこだわったシリーズやだし巻き卵の素、あと1品足りないときに最適な総菜、卵1個でつくれる茶碗蒸しの素を展開している。なかでも好評なのが、「牛乳でつくる飲むデザート」。お湯での調理が常識だったFD業界の中で、冷たい牛乳で溶かす技術は世界初で、2003年に発売した「ザク切りいちご」は、いちごの果肉感が人気でロングセラー商品となっている。同社ではFD製法を生かした新たな商品開発に取り組んでいる。
野菜の栄養を損なうことなく、手軽においしく味わえるFD食品のニーズはさらに高まることが予想されている。
注目メーカーマーケティング アスザックフーズ
果肉たっぷりの「牛乳でつくる飲むデザート」が好調
乾燥食品のパイオニアとしてフリーズドライを中心に展開しているアスザックフーズ。フリーズドライ製法を生かし、人に喜ばれる新しい商品を開発し市場を活性化してきた。そのひとつが2003年に発売した「牛乳でつくる飲むデザート」シリーズ。お湯での調理が常識だったフリーズドライ業界の中で、冷たい牛乳で溶かす技術は初。冷たい牛乳を注ぐだけで果肉たっぷりのデザートが楽しめる。
2018年には一部の地域でテレビCMを投下したことで認知が広がった。また、子供と一緒にデザートをつくる楽しさがあるため、新型コロナウイルス感染拡大による“巣ごもり”需要により、5月は前年同月と比較して1.8倍にまで拡大している。
今年も6月まで一部エリアでテレビCMを投下するほか、今後は新型コロナの状況を踏まえながら、店頭での推奨販売を提案していく考えだ。また、牛乳売場との関連販売も効果的なことから、牛乳売場で展開できるハンガー什器なども用意している。
一方、卵一個を加えて電子レンジで2人前の茶碗蒸しがつくれる「たまご1個で茶碗蒸しの素」も発売当初から売上が伸びている商品のひとつ。茶碗蒸しを家庭でつくるのはなかなか難しいが、同商品なら電子レンジで簡単に本格的な味わいの茶碗蒸しがつくれる。50~60代の女性からの支持が高くなっている。
茶碗蒸しの最需要期である11~12月を目安に一部地域でテレビCMを投下するほか、卵売場で関連販売が可能なハンガー什器を用意して提案していく。同社ではユーザーニーズに対応したフリーズドライの新たな商品を引き続き提案していく考えだ。