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セブン-イレブン、「冷たい麺」でローカライズ強化の思惑とは

セブンイレブン・ジャパン(東京都/阿久津知洋社長:以下、セブンイレブン)は、年々長期化する酷暑を背景に、冷たい麺カテゴリーの商品ラインアップを強化している。「製麺スペシャリスト」による品質管理体制と、10地区の商品開発チームによる地域密着型開発を両輪に、拡大する「冷たい麺」市場のさらなる取り込みをねらう。

冷たい麺の需要増に対応

  日本の夏は年々長期化し、年間の約3分の1が「夏日」となる気候に変化している。真夏日や猛暑日も増えるなか、ニーズがさらに高まっているのが冷たい麺類のメニューだ。セブンイレブン・ジャパン 商品本部 地区MD統括部 総括マネジャーの鷲野博昭氏は、「今年は6月から急激に気温が上昇し、例年よりも早く『冷たい麺』の需要が動き出した」と話す。

 酷暑が続くなか、冷たい麺の需要は一段と高まっている。こうした市場動向を踏まえ、セブンイレブンは冷たい麺の商品開発を強化している。とりわけ需要拡大が顕著な「うどん」については注力度を高めており、富士経済グループ(東京都)の調べでは、2024年のうどん市場は対前年比7.9%増の2720億円と、活況を呈している。

全国の食文化を生かした地域限定商品を展開

 セブンイレブンでは、冷たい麺の開発を強化するにあたり、地域ごとの嗜好や食文化に合わせた商品開発に力を注ぐ。その一環として、全国10の地域に商品開発担当を配置。各地で商品の試作・評価・改良を進める体制を整えている。

 また、スープ製造専用工場「スーププロセスセンター」を全国9カ所に設置し、各地域のだし文化や味の好みに応じたスープ設計を行っている。こうした開発体制のもと、地域特性を生かした「冷たい麺」シリーズの品揃えを拡充している。

 

地域ごとの嗜好や食文化に合わせた商品を展開

 以下、各地区の注目商品を一部紹介しよう。

北関東地区

 北関東では、群馬県発祥の郷土料理「ひもかわうどん」を再現した「冷やしぶっかけひもかわ群馬県産小麦使用麺」(486円 以下、税込)を販売する。群馬県産小麦3種を配合し、もちもちとした食感に仕上げた。具材には天ぷら、椎茸煮、かまぼこ、薬味などを添えている。

天ぷらは麺に合わせて小ぶりに設計。つゆは鰹節・昆布・鯖節の3種をブレンド

甲信越・北陸地区

 甲信越・北陸地区では、山梨県富士吉田市のご当地うどん「吉田のうどん」をイメージした富士吉田名物 吉田のうどん冷やしたぬき」(486円)を販売する。つゆには5種類のだしを使用し、キャベツ・油揚げ・天かすなどをトッピングしている。

「すりだね」という辛味調味料を加え、味の変化を楽しめる。同商品は、山梨県の学生と共同開発したものだ

関西地区

 関西地区では、だしにこだわった「出汁の旨み広がる冷やかけみぞれうどん」(453円)を販売する。麺は滋賀県産小麦「アミンチ」を100%使用している。

昆布・鯖節・小魚節をベースに、薄口醤油で仕上げた

 

製麺スペシャリスト制度により全国で安定した品質を実現

 「冷たい麺」の品質の維持向上を下支えするのが、15年に導入された、製麺に関する高度な専門知識と技能を持つ人材を育成・配置する「製麺スペシャリスト制度」だ。

 この制度の導入背景について、ニッセーデリカ(東京都)新規事業部製麺開発室副室長の佐々木竜太氏は「過去に麺の品質が安定しないことが課題だった。製麺に特化した人材育成の必要性から制度が誕生した」と説明する。

 「製麺スペシャリスト」の認定には、以下の3種の試験に合格する必要がある。

 これらを突破した人材のみが“麺の門番”として全国26カ所の製麺工場で活躍。257月末時点で、全国に34名が在籍している。

 製麺スペシャリストは、品質確認や製造現場の改善提案、商品リニューアル時の勉強会などを実施。茹で時間・冷却工程など、各工場の調整も担い、全国で均一な品質を保っている。

 年々、厳しさを増す日本の夏において、セブンイレブンは、スペシャリストによる品質担保と、地域ごとの味を生かした商品づくりを両輪として、「冷たい麺」カテゴリーのさらなる充実を図る。

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