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『夏至カレー』からみる販促プロモーションの成功事例

大手GMSのチラシ制作事業からスタートし、2004年12月に設立された電通tempo(でんつうてんぽ)。52週365日販促で培ったプロモーション力を強みに、現在はさまざまなメディアを使いながら、流通小売業を中心としたプロモーション領域の課題解決に取り組んでいる。その成功事例のひとつが「夏至カレー」だ。

SNS上で話題の夏至カレーとは?

今回の施策を担当した統合ソリューション部の市川敦子氏(左)と永野薫氏(右)

 そもそも「夏至カレー」は、ある一人の女性がSNSで発信したことに端を発する。夏を満喫するために、まずは夏至を楽しもうと思ったが、冬至とは違って夏至にはこれといった慣習がない。ならば、自らが提案者となり「夏至の日はカレーを食べよう」と発信したのである。これがじわじわと浸透し、2018年にはSNS上で賛同する投稿が相次ぎ、大阪では「夏至カレーフェス」も開催された。

「夏至カレー」の販促プロモーション発動

 こうした動きにいち早く気づいたのが電通tempoだ。同社には、消費者のインサイトやトレンドを把握・分析し、消費の兆しを発掘するマーケティングプロジェクトチーム「キザシ発掘Lab」※1がある。「夏至カレー」の広がりを電通グループで共有したところ、第二のバレンタインデーやハロウィンになる可能性があると判断。提案者である中田絢子氏と電通が共同で「夏至カレー」の商標登録を出願※2することになり、これに合わせてロゴマークを制作。日が一番長くなる夏至に太陽の恵みを感じながら、カレーをおいしくいただき、今年前半を労うとともに、残り半年の健康を願う「ネオ季節行事」、それが「夏至カレー」と定義した。

 早速、流通でもプロモーション施策として展開しようと、電通tempoではイトーヨーカドーに提案した。

 「夏至のある6月は流通にとって催事の話題が少ないため、『夏至カレー』は大いに響くと考えました」と話すのは、プロジェクト・ディレクターの市川敦子氏。初の試みは旗艦店の大森店で展開することに決まり、2019年6月22日の夏至を挟んだ17日~23日の1週間実施されることになった。

二十四節気をテーマに、試食だけでなく、調理法も伝えるクッキングサポートコーナー。ここでも「夏至カレー」に合わせて、カレーを取り上げた

※1 電通tempoの登録商標。
※2「 夏至カレー」は、夏至カレー大使である中田絢子氏と㈱電通が共同で商標登録出願中。

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夏至カレーのプロモーションが成功したポイントとは?

夏至カレーの販売プロモーションが成功したポイントとは

売場でもひときわ目立った「夏至カレー」のA3POP

 今回の施策のポイントは3つある。まず、消費者トレンドを踏まえたテーマ策定だったということだ。すでに「夏至カレー」を認知している消費者がいたことはプロモーションを実施するうえで有利に働く。

 また次のポイントは、流通とメーカーの双方に有益なプロモーションだったという点だ。流通にとっては、売上減少の時期に新しいトレンドを発信できるだけでなく、カレーは生鮮を含め買い上げ点数が増える。もちろん、メーカーにとってもメリットは大きい。通常、こうした施策はメーカー主導のケースが多いが、1社のみの提案では実現しにくい。しかし今回は、流通から働きかけたことで、多くのメーカーが賛同・協力し、マネキンも入れるなど売場全体が活性化した。

 最後のポイントは、新しいソリューションを取り入れながら売場とウェブを連動させ、統合的なプロモーションとして実施された点だ。

 「売場では、ペッパーを導入。双方向のコミュニケーションがとれるように、当社でコンテンツまで制作。足止め効果を高めました。また、集客ツールとしてカレーの匂いを展開し、体験型店舗をめざしました」とプランナーの永野薫氏は話す。一方、オウンドメディアでも「夏至カレー」を訴求し、それを動画化したものをイトーヨーカドー全店の店頭サイネージで発信。合わせて、ネットスーパーのトップバナーでも展開した。

 この取り組みにより、カレー・シチュー部門で大森店が全店トップを記録した。来年はさらなる盛り上がりをめざす考えだ。

ペッパーに触れると、カレーメニュールーレットが回り、おすすめのカレーを教えてくれる。子供も大人も楽しめる店頭演出