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ブランドバックで急成長 ラクサス児玉昇司社長が教えるサブスクリプション成功のポイント

2019年5月8日から10日の3日間、東京ビッグサイトにて、第28回「Japan IT Week春(後期)2019」が開催された。そうしたなか、セミナーおよび展示内容を通じ、流通小売業にとって気になるキーワードに関する動向をレポートする。第2回は、多くの企業が導入を進めたい、サブスクリプション(定期購入)モデルについての成功のポイントを解説しよう。

ブランドバッグのサブスク「ラクサス」で急成長を遂げているラクサス・テクノロジーズ

初回トライアルから有料サービスへの移行率は90%以上 

 「定額で継続して提供されるサービス」、サブスクリプションサービス(以下、サブスク)を活用する企業が増えている。今回の出展にはサブスクモデルへの対応をウリにしているITサービスも数多く見られた。

 現状、サブスクサービスには、大きく分けて、モノのサブスク、コトのサブスクがある。このうち、モノのサブスクとして成功を収めている企業があるカテゴリーには、コンタクトレンズ、電動歯ブラシ、女性服、食材、コスメ、カ―シェア、絵本、ブランドバッグなどがある。

 ブランドバッグのサブスクで急成長を遂げている企業といえば、ブランドバッグのシェアリングエコノミー「ラクサス」を提供するラクサス・テクノロジーズ(東京都/児玉昇司社長)だ。

 ラクサスは月額利用料6800円(税別)で、エルメス、シャネル、グッチ、ルイ・ヴィトンなど、平均で30万円程度するブランドバッグを、無期限、個数無制限で利用できるサービス。現在、会員数は30万人超、サービスを開始して51カ月になるが、その間の累計利用額は350億円にのぼっている。

 57の高級ブランドを取りそろえ、在庫は3万個にも及ぶ。しかしこれらの所有者は、同社ではなく一個人だ。個人で所有しているブランドバッグを、ラクサス・テクノロジーズが預かり、それをサブスクサービスとして貸し出すシェアリングエコノミーであり、シェアリングエコノミーとしては国内で№1の実績になるという。

 ラクサスを利用するには専用アプリのダウンロードが必要になるが、会員登録をすると1万円分のポイントがプレゼントされ、当初の1カ月は実質無料で、ブランドバッグを「とっかえ、ひっかえ」借りることができる。有料サービスへの移行率は90%以上、登録後9カ月以上の会員が98%で、一度、利用すると、ほとんど脱落することがない。

 

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サブスク成功のための3つのポイント!

サブスク成功のための3つのポイント!

 同社の児玉昇司社長は「次世代Eコマース」をテーマにしたセミナーにおいて、自社のケースをもとにサブスクモデルを成功させるためのポイントをあげている。

 その第一に、だれにもまねしやすい仕組みとして、
・「〇回」使わせる(回数は提供サービスにより異なってくる)
・コアバリューを理解させる
・継続的に利用できる価格設定

 を考えることをすすめている。

 ラクサスの場合、2ヵ月利用する(無料期間含む)と、98%が有料会員に転換するという。これには児玉社長が考えたロジックがベースにある。

 無料会員に登録すると、1万円に相当するポイントが付与される。1カ月の利用料は6800円だから、1カ月後には3200円分のポイントが残る。ここがポイントで、大半の人は、この3200円をムダにするのは損をした気分だから、3600円を追加してもう1カ月利用してみようと考える。こうなると、3ヵ月目、4か月目も使ってみようというモチベーションが保たれるというのだ。

無料期間中にサービスをどれだけ利用してもらえるかが後々重要に

 次に「コアバリューを理解させる」ということだが、ラクサスを利用するメリット(=顧客にとってのいいこと)を理解させ、体験してもらうということだ。

 ラクサスを利用するメリットは、30万円もするブランドバッグを「とっかえ、ひっかえ」借り放題、にできるということ。無料会員登録をして1カ月以内に、このコアバリューを体験してもらえるかどうかが重要だという。

 いまから5,6年前、サブスクサービスが世に出始めた当初は定額を支払ってくれれば、「サービスを利用するかしないかは気にしなくていい」といわれていた。サービスを利用しなければ、提供側のコストも発生せず、「定額分がまるまる利益として残る」からという理屈だ。「寝た子(定額サービスを利用していることを忘れている)を起こさない」のがサブスクビジネスで成長する基本と言われたことさえあったそうだ。

 この考えに対して、児玉社長は真っ向から否定し、無料サービス期間中に「とっかえ、ひっかえ」を楽しんでいない会員にはプッシュ通知を送る。利用し続けてもらえることが、ラクサスの価値(=コアバリュー)だからだ。

 価格は顧客の身の丈の範囲内に収める

 そして最後が「継続的に利用できる価格」だ。

 サービスを提供するターゲットが、毎月、払い続けたことのある金額設定にすることがポイントになる。

 男女という違いだけでも、その金額は大きく異なる。男性の場合は、車のローンを考えればわかりやすいが、1万円程度を払い続けることにさほど抵抗はない。それに対し女性の場合は、せいぜいがスマホの毎月の支払だ。そこからラクサスの月額使用料を6800円の設定にしたという。

「身の丈以上の価格設定はドロップしやすい」(児玉社長)のだ。

 そして、もしドロップしそうな徴候を見つけたら、すぐに手を打つことだ。

 ラクサス・テクノロジーズではAIを実装し、会員の行動をデータとして把握し、継続的に利用しやすい環境を常につくり続けている。