2022年12月8日、アイスタイル(東京都/遠藤宗社長COO)が開催する「@cosmeベストコスメアワード2022 下半期ベストコスメ」が発表された。本稿では、今回の受賞商品から見えた消費者のリアルな購買傾向についてフォーカスし、バズるコスメ商品について考えてみたい。
総合大賞は発売から1年半“バズり”続けるKATE「リップモンスター」
コスメ、化粧品、美容の総合情報サイト「@cosme(アットコスメ)」が開催する「@cosmeベストコスメアワード2022 下半期ベストコスメ」において、総合大賞を受賞したのが「花王・KATEリップモンスター」だ。
「マスクにつきにくい口紅」として、2021年5月の発売直後から人気に火がつき、現在でも入手困難が続く同商品。約1年半にもおよぶロングヒットが受賞につながった。
ベストヘアケア賞を受賞したのは、2011年10月発売の「ORBISエッセンスインヘアミルク」だ。販売開始から約10年が経過した同商品の@コスメ上の平均口コミ数は、1年当たり50件弱だったが、2022年は1年間で約950件の口コミを集め、ベストヘアケア賞に輝いた。
発売から長期間が経過しての異例の受賞について、@cosmeリサーチプランナーの西原羽衣子氏は、「流行が一過性でなく長く続く『バズロングセラー』という動きが起きている』と話す。
トレンドとは関係なく“バズる”時代に
アイスタイルが行った独自調査で「バズっている化粧品を買う理由は?」という設問に対し、「流行・トレンドに乗りたいという気持ちがある」と答えたのは全体の約31%にとどまり、「情報収集の手間や時間が省けるから」「いいものが多く、失敗が少ないから」「だれかのお墨つきという安心感があるから」と51%のユーザーが消極的な理由で商品を選択しているという結果が得られている。
これについて@cosmeリサーチプランナーの原田彩子氏は「昨今の消費者は、タイムパフォーマンスとリスク回避を重視する傾向がある。消費者が『バズっているものを使いたい』のは『流行に乗りたい』のではなく『より短い時間でよりよいものを選択し、なおかつ失敗をしたくない』といった気持ちが強くなってきたのではないか」と、必ずしもトレンドと注目度が比例するわけではないと説明した。
古い商品が掘り起こされ“バズる”ことも
今回の受賞では、古い商品が掘り起こされて注目されるという傾向も見られている。たとえば、発売から10年以上が経過する「ORBIS・エッセンスインヘアミルク」がベストヘアケア賞を受賞したのは、同商品の愛用者がSNSで情報発信し、発掘されたことがきっかけだ。
これについて西原氏は、「消費者の中に、『古いものであっても、自分が知らなかったものや新しいと思えるものを発掘したい。その選択自体が自分らしさにつながる』という心理が働いているのではないか」と話す。
その背景には、音楽のサブスクリプションサービスが浸透し、昔の音楽からよいものを掘り起こすリバイバルブームが起きていることが消費者心理に変化をもたらしたのではないかと西原氏は分析。古い商品であっても、消費者に掘り起こされることで流行につながる可能性があることを示唆した。
今回@コスメベストコスメ賞を受賞した全230商品のうち、61商品が、発売から5年以上経過した商品だ。発売から長時間経過していても、昨年より、口コミを1.4倍以上集めている。「流行」はトレンドを踏まえた一過性のものではなく、新旧に関わらず、掘り起こされ“いいもの”が売れる時代なのではないかと西原氏は語った。