ドールでは、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向け、The Dole Promiseを表明しており、今年は新たに「バナナエシカルバリューチェーンプログラム」を始動。その第一弾の活動として、バナナの「量り売り企画」と、バナナの皮などの家庭で排出される生ごみを原料とした「コンポスト企画」を実施している。同企画を導入しているヤオコーとイトーヨーカ堂の取り組みを紹介する。
必要な量だけ購入できる バナナの量り売り企画
1968年にフィリピン産バナナを輸入開始して以来、バナナの輸入・販売はドールの主力事業となっている。同社ではより高品質なバナナを安定供給するため、栽培技術に加え、管理体制などを整えてきた。そのため今ではバナナは日本で最も消費されるフルーツとして親しまれている。
そのバナナは、1房4~6本がプラスチックの袋に入った状態で販売されているのがスタンダード。これは約30年前にドールが日本に導入したシステムで、産地で袋詰めされるため、店頭での手間が省け、輸送時の傷みを軽減できるなど、メリットも大きい。ただ、少人数世帯の増加でユーザーからは「袋入りのバナナは量が多すぎて、家庭内で余らせてしまう」「プラスチックごみの分別が手間」などの声が寄せられている。
そこでドールでは、SDGsの実現に向けて、未来の世代のためによりよいものに変えるべくThe Dole Promiseに即したさまざまな活動を行っており、そのひとつとしてフルーツロスの削減と同時に、プラスチックごみを削減するための「バナナエシカルバリューチェーンプログラム」を始動した。その第一弾として、ドール初となるバナナの「量り売り企画」を実施。今回の「量り売り企画」では、袋包装されていない2~3本で1房のバナナを陳列し、必要な量だけ購入することができる。
購入方法は、バナナを専用の秤に乗せ、重さと価格が表示されたら、プリントボタンを押し、バーコードが印字されたラベルを紙袋に貼るだけのシンプルな仕組み。ユーザーにとっては、一度体験すると、操作の簡単さや自分で実施することの楽しさ、そしてバナナを余らせることなく消費することができるのでリピートにつながりそうだ。ユーザーとドールにとってはプラスチック包装の削減につながり、双方にとってプラスとなる。
これまで量販店では実現が難しかった量り売りの環境をドールが整えることで、ユーザー、量販店それぞれにとって利用しやすいサービスを実現した。6月から主要チェーンでのバナナの量り売り企画がスタートしており、使い方をサポートするマネキンの導入で、スムーズに受け入れられている。
また、同プログラムは、環境省が食品ロス削減と食品リサイクルを実効的に推進するための先進的事例を創出し、広く情報発信・横展開を図ることを目的とした、「令和4 年度 地方公共団体及び事業者等による食品廃棄ゼロエリア創出の推進モデル事業等」に採択された。
バナナの皮を使って堆肥づくり地球資源循環をめざす
フルーツロスをゼロにするドールの課題と、家庭で出る生ごみを減らしたいというユーザーの課題を実現するため、バナナの量り売り企画に合わせて「コンポスト企画」を実施。同企画は、家庭から出るバナナなどの生ごみを原料としたコンポスト(堆肥)づくりにチャレンジすることで、地球資源循環をめざすプロジェクト。バナナの皮を堆肥にして、家庭菜園などの農作物を育てることで、食べ物の大切さを知るきっかけにつながりそうだ。
コンポスト企画は、バナナの量り売りを含む、税込1000円以上のレシートでWEBから応募ができ、当選者にはLFCコンポストのセットが送られる。その後当選者は、オンラインでのコンポストのつくり方セミナーに参加し、3ヵ月ほどかけて堆肥づくりを行う。堆肥ができたら、家庭菜園で使用するか、指定の場所に送ると果物や野菜の苗木がプレゼントされる。
バナナの量り売り企画とコンポスト企画は、ユーザーと量販店の理解を得ながら今後拡大していく予定だ。
導入事例ケース1 ヤオコー
量り売りのメリットを生かし、食品ロス削減へ
最近のバナナはプラスチック袋の包装が主流になっているが、昔のようにバナナを袋に入れずそのまま販売することで、環境問題の取り組みにつなげられると考え、今回ドールさんの「バナナの量り売り企画」を導入することを決定した。必要な量を購入できる量り売りのメリットを最大限に生かし、食品ロス削減につなげたい。
バナナの量り売り企画の導入店舗として選んだのが、2021年10月にオープンしたヤオコー和光丸山台店。積極的に新たなMDにチャレンジしている店舗で、パイナバーの機械を導入していることもあり、お客さまがご自身で機械を操作し、商品を購入することにも比較的慣れていることが決め手になった。
導入後、お客さまからは「必要な量(適量)で購入できるのが便利」という声をいただいている。バナナはカラーチャート(色目)青、黄色の状態で試験的に販売しているが、毎日、買い物ができないお客さまはバナナの色をミックスして購入されている。それにより、熟しすぎてムダにすることがなくなり、食べたい時に、食べ頃を食べていただけるようになった。ただ、初めて購入されるお客さまからの操作がわかりづらいというご意見もあるので、量り売りの購入方法について、ドールさんとともに改善を図っていきたい。先行して取り組んでいる和光丸山台店の事例を広く発信し、ひとりでも多くのお客さまに共感していただき、SDGsの実現に向けてさらに理解を深めたいと考えている。
導入事例ケース2 イトーヨーカ堂
バナナの購入頻度や来店頻度アップに期待
イトーヨーカ堂では、さまざまなSDGsの取り組みを行っているが、とくに力を入れているのがフードロス削減。店舗や家庭で捨てられる食糧を減らす取り組みを行っており、そのタイミングでドールさんから食べ切れる量のバナナを販売する「バナナの量り売り企画」の提案があり、フードロス削減のため導入を決定した。またバナナの皮を堆肥にすることで家庭ごみ削減につながる「コンポスト企画」も素晴らしい取り組みだと思った。
最近、若い世代は学校でSDGsを学んでおり、バナナメーカーさんのお客様相談室に「なぜバナナはプラスチック包材に入れて販売しているのか」という若い世代からの問い合わせが寄せられているそうだ。アリオ北砂店は若いお客さまが多く来店することもあり、今回の「バナナの量り売り企画」のテスト店として最適と考えた。従来のバナナの売り方は販売する立場での提案だが、「バナナの量り売り」は、お客さま視点。お客さまに欲しい量だけを買っていただき、食べ切ることで、フードロス削減につながる。それにあわせて、バナナの購入頻度や来店頻度が上がることも期待のひとつ。こうしたSDGsに関する取り組みは今後も積極的に続けていきたい。