優良食品スーパー(SM)として多くの企業がベンチマークするヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)。同社の総菜には自社工場と店内製造を戦略的に組み合わせた商品政策(MD)や顧客ニーズに対応した量目設定、購買意欲を喚起する売場づくり、それらを可能にする徹底した従業員教育など学ぶべき点が多い。本稿では、ヤオコーの新たな旗艦店「ヤオコー和光丸山台店」(埼玉県和光市)の調査を基に、同社の総菜の強さの源泉を分析・解説する。調査日:2022年5月6日(商品写真は調査日に購入したものを撮影)
センター製造でも見栄えがよい総菜
ヤオコーの総菜部門における商品開発力の強みは、まず「デリカ・生鮮センター」(埼玉県東松山市)という総菜・生鮮食品の加工センターを自社で保有している点にある。「かぼちゃのデザートサラダ」「十勝産キヌアと3種豆のサラダ」(いずれも298円:以下、税抜)といったサラダ商品や「下仁田産生芋こんにゃく煮」(198円)などの冷総菜を含め、「デリカ・生鮮センター」が製造する商品はいずれも丁寧に調理され、購買意欲を喚起するおいしそうな見た目に仕上げられている。これと実際の味がより連動すれば、商品のクオリティはさらに高まるだろう。
また、小売業界で慢性的な人手不足が課題となるなか、店内加工の作業を絞り込んだうえで十分な人員を充て、人手をかけるというMDを構築できているのも強みだ。人時生産性を重視したマネジメントが徹底され、きれいな商品をより多く製造するための教育やトレーニングが現場に行き届いており、出来立ての商品を時間帯に合わせてきちんと製造するレベルがきわめて高い。たとえば、「具が凄い!まぐろ・ほたて・サーモンの太巻」(880円)は、たっぷりと入った鮮度のよい具材が俯瞰で見え、一般的な太巻よりも薄くて食べやすく仕立てられている。
ヤオコーは「デリカ・生鮮センター」での製造、店内加工、ベンダーへのアウトソーシングを戦略的に使い分けることにも長けている。一般に、効率よく大量に製造する商品は自社の工場が担うことで利益を内製化しやすい一方、手間のかかる商品や特殊な作業工程がある商品はベンダーにアウトソーシングするのが定石だ。ヤオコーでは温総菜のほとんどが店内加工されており、総菜全体での店内加工の比率は概ね7割程度と推測される。
店舗の人員を確保し、幅広い量目を展開
ヤオコーの総菜は幅広い
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