コロナ禍の生活様式の変化が逆風となっているコンビニエンスストア業界。商品力に強みを持つセブン-イレブン・ジャパン(東京都)であっても、なかなか巻き返しを図れていない状況だ。そんななか4月末に開催されたメディア向け商品政策発表会で同社は、ワンストップショッピングニーズへの対応を加速させることで、商圏内で必要とされる存在をめざす方針を明らかにした。
コロナ禍1年目よりもさらに客数が減少!
セブン-イレブンの22年2月期の既存店売上高対前期比は100.7%。前期の97.6%に対して、コロナ禍での落ち込みを挽回するには至らなかった。客単価は101.9%と伸長したが、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令などの行動制限の影響により、客数が前期の90.1%からさらに98.8%と落ち込んだことが要因だ。
コロナ禍での生活が3年目に突入した今、コンビニの利用動向について同社商品本部長の青山誠一氏は次のように説明する。「コロナ禍が収束したとしても生活様式は元には戻らないだろう。リモートワークも普及し(自宅のある地域で過ごす人も増えるなか)、ワンストップショッピングニーズに対応していくことが重要だ」。
「顔が見える野菜。」で購入単価を伸ばす
そこでセブン-イレブンが一気に進めているのが、日常使いの商品の取り扱いだ。
まず、同じセブン&アイ・ホールディングス(東京都)グループのイトーヨーカ堂(東京都)で販売する「顔が見える野菜。」シリーズだ。契約農家によって生産されたこだわりの青果で、商品の包材に貼付されたQRコードを読み取るとトレーサビリティが確認できるシステムで安心・安全を打ちだす。すでに、神奈川県を中心に約2000店で販売している。
イトーヨーカ堂(東京都)で販売する「顔が見える野菜。」シリーズ
同野菜シリーズの販売上位120店の特徴を見ると、全国平均よりも教育費や住居代、年収などが高い利用者が多く、これらの層を取り込める商品であると考えられる。
また、同野菜シリーズと併売されることの多い商品群は、上位から順に①野菜・カット野菜、②卵・水物・加工肉・練物、鮮魚・塩干、③パン・ペストリー、④スイーツ、⑤「セブンプレミアム」(デリカ)で、食卓への登場頻度の高いものが購入される傾向がある。青山氏は「さまざまな商品と併売され、購入単価が伸ばせる商材だと考えている」と同野菜シリーズの販売を強化する理由を述べ、23年2期上期には導入店舗を4700店まで広げる方針だ。
棚4段展開店舗を2万店まで広げる
もう1つ、セブン-イレブンが導入を進めるのが100円ショップを展開するダイソー(広島県)の商品だ。ウェットシート、ゴミ袋、水切りネット、ポリエチレン手袋などの日用雑貨を中心に揃え、22年3月時点で、棚4段展開が1万500店、棚3本展開が760店まで広がっている。
ダイソー商品もセブン-イレブン店舗によい効果を与えている。具体的には、ダイソー商品購入者内訳をみると40~60代の女性が多く、コンビニが獲得を進めたい主婦層の需要を取り込んでいる。
またダイソー商品の購入者は、ダイソー商品を店舗で発売する以前と比較して、来店回数が110%、買い上げ点数が103%、客単価が102%と伸長する結果が出ている(栃木県内の761店での数字)。とくに、ダイソー商品のまとめ買いや、フライヤー商品、サラダ・総菜などの併買が多く見られるという。セブン-イレブンは23年2月期にはさらに棚4段展開店舗を2万店まで広げる計画だ。
自前主義を脱却し変化に迅速に対応
イトーヨーカ堂やダイソー商品など、自社以外で開発した商品の販売を強化しているセブン-イレブン。この点について青山氏は「自前主義にこだわって今求められている商品が提供できなければ、お客さまにとって不便な店になってしまう」とその理由を語る。
このようにセブン-イレブンはコロナ禍での生活様式の変化に応じて、青果や日用雑貨などふだん使いの商品を充実させることで、商圏内で必要とされる店になろうとしている。食品スーパーやドラッグストアなど、同じ商品群を扱う業態の各社は、商圏内の新たな傾向として押さえておきたい点である。