1月14日、22年の恵方巻商品P R会を実施したイトーヨーカ堂(東京都/三枝富博社長)によると、恵方巻のマーケット規模は拡大傾向にあるという。18年には290億円だった市場規模が、20年には316億円まで成長。イトーヨーカドー1店舗あたりの節分当日の売上でも、20年は対前年比120%となり過去最高額を達成した。
海鮮、ヘルシー…恵方巻のトレンドは?
その理由として同社は、コロナ禍での外出控えや内食化に加えて、もともと恵方巻は「無病息災」を願って食べるものであるためコロナ禍で関心が集まったことなどを挙げている。また、過去に恵方巻などをはじめ季節商材の大量廃棄が問題になった背景から店頭販売の量が限られ、「予約しておかないと食べたいものが買えないこと」が、結果として予約数および販売数を引き上げた側面もある。
また、恵方巻の売れ筋にもコロナ禍でさまざまな変化が見られたという。「外食の代わりに自宅で豪華な食事を楽しみたい」というニーズから、海鮮をふんだんに使用した海鮮巻や、数量限定品、有名店の監修商品などに注目が集まった。また、健康意識の高まりからサラダ巻や、雑穀米などを使用したヘルシーな恵方巻の需要が伸びつつあることも近年の特徴だという。ほか、「旅行に行ったつもり」を味わう商品として、ご当地メニューを取り入れた商品が増えている。
SM各社の恵方巻は?
それでは、22年の各社が売り出す恵方巻の特徴を業態別に見ていこう。
まずは食品スーパー(SM)に注目すると、イオン(千葉県/吉田昭夫社長)が今年主力として押し出すのは、有名寿司店監修の「招福 海鮮恵方巻」(長さ18cm・太さ5.5cm/1本1490円/以下すべて税込)。エビ、イクラ、サーモンなど人気の具材を中心に11種類の具材を巻き込んだ商品だ。ほか、大分県産かぼすブリや、土佐沖で漁獲したキンメダイなど、地元自慢の魚「プライドフィッシュ」を使用した6種類販売する。上で述べたイトーヨーカ堂の分析と、概ね方向性が一致していそうだ。
そのイトーヨーカ堂では、25種類の具材を巻き込んだ「豪華絢爛!25種類海鮮絵巻」(長さ18cm・太さ9.5cm/1本6264円)を目玉に据えた。太さ9.5cmのボリューム感と、断面が花の模様になるように具材を配置した見た目の楽しさで話題性をねらった商品。恵方巻としてはかなりの高価格帯だが、同社の予約ランキング(1月14日現在)では第10位にランクインしているという。ほか、料理人監修の恵方巻や、北海道・九州・静岡をそれぞれテーマにし、地域の特産品を使った恵方巻も展開する。
一方、ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)は複数購入して食べ比べるニーズや、家族それぞれが好みのものを選ぶニーズの取り込みをねらう。長さ9cmの小ぶりな恵方巻を「ハッピーサイズ」として計7種類展開、1本537円から購入できる手軽さだ。高級路線としては、予約限定品の「極み海鮮巻」(長さ18cm・幅8cm/3218円、ハッピーサイズ1609円)を用意した。
ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長)は、比較的ベーシックかつ手頃な価格帯の恵方巻を展開する。近畿圏では境港産紅ズワイガニや尾付きエビなどを巻き込んだ「招福 海鮮節分太巻」(1本1058円)を、首都圏では本マグロ赤身など11種類の具材を巻き込んだ「極太 幸福海鮮太巻」(1本3002円)をそれぞれ目玉として予約販売。見た目のインパクトでは他社に一歩譲るが、具材の質やまとまりを重視したラインアップになっている。
恵方巻+スイーツ提案のCVS
次にコンビニエンスストア(CVS)の恵方巻を見てみよう。
業界最大手のセブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長)では、柿安監修の「黒毛和牛の牛すき恵方巻」(レギュラーサイズ1本1020円/ミニサイズ696円)を数量限定品とし、ほか「こだわり海鮮恵方巻」(ミニサイズ1本696円)など計4種類を展開する。CVSの恵方巻きらしく、一人で食べるシーンを想定し、直径4.5cm・長さ8.5cmのミニサイズを充実させているのがポイントだ。
ファミリーマート(東京都/細見研介社長)では、玉子焼きや椎茸煮などを巻き込んだシンプルな恵方巻に加え、海鮮恵方巻きを2種類用意。国民的アニメ「ドラゴンボール」とのコラボ商品も展開する。ローソン(東京都/竹増貞信社長)は、厚焼玉子などのベーシックな恵方巻と海鮮巻、サラダ巻をセットにした「三種の恵方巻セット」(3本入り1150円)を展開。また、恵方巻の上に牛カルビを贅沢に盛りつけた「W焼肉恵方巻」(1本1280円)など、CVSとしては豪華さも価格帯もワンランク上の商品も用意する。
CVSの節分商戦の特徴は、恵方巻以外にもスイーツなどの品揃えを充実させていることだ。各社、恵方巻に見立てたロールケーキや、鬼の金棒に見立てた菓子など、節分に絡めたスイーツを豊富に提案している。SM各社が恵方巻の内容で勝負する一方、恵方巻にプラスアルファの購入をねらうCVSという方向性の違いが見て取れる。
再び感染拡大の中迎えることになる22年の節分。各社が提案する恵方巻はどこまで消費者の心を捉えることができるのか。節分商戦の行く末に注目だ。