多店舗展開ビジネスのマネジメントシステムを提供するClipLine(東京都)は、新型コロナウイルスの新規感染者が全国で1日100人台まで減少した2021年12月22日~23日に、ポストコロナを見据えた小売業の来店促進施策についてアンケート調査を実施した。オミクロン株の感染拡大が懸念される中ではあったが、まだ日本への影響はほとんどなく、繁華街の人流も回復しつつあったタイミングでの調査である。
第6波収束後の施策を考える
20年と21年の2年近くの自粛営業を余儀なくされた小売業が、人流が回復した年末年始や年度替わりの春の繁忙期に寄せる期待は当然大きい。その「期待される繁忙期」の来店施策について小売店がどう臨む構えかを調査したのだ。
しかし、調査報告(22年1月13日)で「2021年12月時点の回答のため、現状と異なる可能性があります」と但し書きされている通り、実際には1月中旬に入りオミクロン株の感染者が急速に増加し、第6波に突入したとみなされるにいたった。アンケートの中にはオミクロン株の感染動向を加味した質問もあるが、その答えは第6波の渦中にある現在の小売店の意識や施策とは異なる可能性があるのは当然だ。状況が変化する中で小売業界は難しい対応を迫られているが、この調査は来るべきコロナ終息期の小売店の施策について示唆を与えるものである。
<調査概要>
- 調査対象 : 全国の百貨店、スーパー等の小売店に勤務し、1名以上の部下を持つ正社員400名
- 調査方法 : オンライン上でのアンケート調査
- 調査期間 : 2021年12月22日~23日
繁忙期の来店促進施策は63%が実施予定
「 2021年12月~2022年2月にかけて来店促進のためのキャンペーンなどを実施するか」の質問に「実施する」「おそらく実施する」を合わせて63%が来店促進施策を行うと回答した。「しない」「おそらくしない」は合わせて30%だった。
オミクロン株が台頭しても来店促進施策を変えないが49%
「オミクロン株の台頭により、来店促進施策を別施策に変える予定はあるか」の質問に、 約半数の49%が「施策を変 更する予定はない」と回答した。次に多かったのが「わからない」の31%。「他社の様子を見る」が19%だった。
人員補充の課題は「募集をかけても集まらない」が47%
繁忙期に「人員を増やすにあたって課題だと思っていること」の質問(複数回答)には、募集をかけても集まらないという回答が47%とトップだった。アルバイトやパートが中心の小売業において、コロナ禍以前の人手不足状況が再来している様子がうかがえる。時給が高騰しているため、店舗人件費を気にする声も38%と多かった。また、人員を増やしても教育ができないという回答が31%あった。
繁忙期の店舗を円滑に運営するための対策は?
「繁忙期の店舗を円滑に運営するためにどのような対策をとるか」(複数回答) には、「特になし」という回答が最も多く31%だった。
対策を行う場合は「商品の絞り込みやレイアウトの変更」がトップで28%。売れ筋の商品をうまく訴求することが売上向上と運営効率化につながると考えられているようだ。
次いで、人員補充に関する回答が上位に並んだ。「他店からのヘルプ」26%、「アルバイトのシフト回転数の増加を要請する」25%などだ。
現場業務の効率化では「課題はあるが手つかずのまま」が最多
「現場業務の効率化に対して、課題を感じ対策を行っているか」について、下記の6項目で質問した。
- 店舗人員の教育
- 業務オペレーション
- 勤怠管理
- 集客・宣伝
- 決済
- 売上・コスト管理
各項目とも「課題を感じているが現状のまま」の回答がもっとも多く26%~38%におよんだ。次に多かったのが「課題はあるが現状のまま」で14%~29%だった。
先の読めないコロナ禍の中でも来店促進策への意欲は盛ん
本調査の結果を見ると、先の読めないコロナ禍にあっても、販売チャンスの節目には来店促進策を実施する意欲は旺盛である。しかし、その施策を行う上で最大のネックになるのが「募集をかけても人員が集まらない」人手不足だと多くの小売業者が考えている。