メニュー

海の向こうのセブン-イレブンに学ぶ—SCMと販促改革の最前線

 今、日本の小売業はかつてないほど厳しい局面に立たされています。人口減少による市場の縮小と労働力不足、物価高による仕入価格の上昇、そして激化する競争環境。こうした複雑な課題にどう立ち向かうか。その手段の一つとして、進化を続けるAIの活用に更なる注目が集まっています。 

 世界に目を向けると、すでにAIを活用した変革に成功している企業も少なくありません。ここでは、同じ「セブン-イレブン」ブランドを冠する2つの先進事例をご紹介します。

店舗とDCの壁を越えろ──属人的発注から統合SCMへの挑戦

 オーストラリアのセブン-イレブンでは、約750店舗と複数の配送センターを持つサプライチェーン網において、積極的な改革を進めています。

 経営環境が厳しくなる中で、人手に依存した発注業務が限界を迎えており、さらに店舗と配送センターのデータやプロセスは分断しており「それぞれが独立して在庫を積み上げる」状態で、至る所にムリ・ムダが発生していました。

 そこで2023年に、次世代の統合SCMプラットフォーム構築に着手。従来、担当者の経験と勘に頼っていた発注業務を、AIを活用した需要予測と補充の仕組みへと刷新しました。販売実績だけでなく、販促情報や天候、地域イベントなど外部要因も加味し、店舗ごと・商品ごとの精緻な予測を実行。

 発注ロットや物流制約を加味して「最も効率的な発注」を自動で提案する仕組みを構築しました。

 さらに店舗のみならず、3つの自社物流センター、2つの外部委託センターの予測・在庫計画を統合。川下である店舗の需要予測を元に、川上のDC在庫をコントロールすることで、サプライチェーンを横断した改革を実現しました。

 本プロジェクトを通じて同社は、欠品率の改善、廃棄コストの削減、在庫維持費用の縮小、マニュアル作業の効率化などにより、年間数十億円のビジネスインパクトを見込んでいます。

 日本でも、需要予測や発注の最適化に取り組む企業は増えていますが、一定のルールに基づいた静的な仕組みが中心で、チラシなどの販促や地域周辺のイベントによる需要変動には人力で対応していることも多いのが実情です。

 都心型や郊外型など様々なフォーマットを抱え、ドライから日配まで商品カテゴリが増加していく中で、いかに人の負荷をかけずに「きめ細かく予測精度を維持し」「制約条件の中で合理的な発注を行うか」が競争力の鍵となるでしょう。

 さらに店舗発注の効率化のみならず、物流センターまで含めて、最適な在庫の配置、補充計画を整備することが抜本的な改革に繋がります。日本はサプライチェーンが複雑であるからこそ、デジタル化、仕組み化による改善の可能性も大きいと言えます。

販促の成果は“見える化”できる時代へ──AIが導く選択と集中

 続いて、プロモーションの領域にAIを活用している企業の事例をご紹介します。

 セブン-イレブンを含む3つの主要ブランドを運営するスウェーデンのレイタン・コンビニエンスは、AIを活用して販促施策の見直しと最適化を進めています。

 従来、セールや値引きなどの販促は各エリアマネージャーや店舗担当者に任され、経験やセンスに基づく判断が中心で、施策効果を正確に見極めることが難しくなっていました。

 そこで同社は、AIを活用した販促計画プラットフォームを導入。Excel管理だった販促計画を一元化し、過去の実績データを体系的に蓄積。ある施策が他の商品に好影響(ハロー効果)を与えたか、売上を奪ったか(カニバリゼーション)など、カテゴリを超えた影響を定量的に分析できる仕組みを構築しました。


 さらにAIが、分析結果に基づいて優先施策や見直すべき施策を提案。限られた予算・リソースの「選択と集中」が可能となり、販促による利益は15%以上改善しました。施策結果の可視化により、取引先とのリベート交渉も有利に進められるようになりました。

 日本でも多くの販促施策が行われていますが、施策ごとの効果を正確に測定できていないケースが多く、改善の余地が大きい領域です。

 たとえば、おにぎりの販促強化でサンドイッチの売上が落ち、トータルでは利益が減少したケースや、ある販促による売上増が、実際には「ポイント5倍デー」などの全体施策の影響だったケースなどが考えられます。

 こうした影響を正確に把握できなければ、販促が本当に利益拡大につながっているか正しい判断ができません。商品間の影響や、施策間の干渉を適切に分析し、純粋な販促効果を可視化することは、利益改善に直結する取り組みとなるでしょう。

逆境を力に変える──今、小売に求められる変革

 これらの事例が示しているのは、「人手不足=経営危機」とは限らないということです。むしろ、こうした局面こそが、現場の勘や経験に依存した属人的な運用から脱却し、再現性のある仕組みへと変革を進める絶好のチャンスになり得ます。

 こうした変革を支えているのが、小売計画プラットフォームのリーダーである RELEX ソリューションズです。同社は、世界600社以上への導入実績を誇り、今回ご紹介した事例のほかにも、The Home Depot、ALDI、Sephora など、様々な小売企業の業務変革を支援してきました。

 今回ご紹介したケースを始め、統合SCMや販促最適化、棚割など、いま小売業に求められる変革を事例とともに解説しています。ご興味のある方はオンラインセミナーのアーカイブをご視聴ください。

RELEXはNRF APAC 2025に出展

 RELEXは、2025年6月にシンガポールで開催される NRF APAC 2025に、スポンサーとして出展します。現地で、最新のソリューションや事例をご紹介するほか、来場者同士の交流を目的としたカクテルパーティも開催予定です。RELEX NRF公式ページより、イベントのチェックとご参加登録をぜひご検討ください。

 テクノロジーをどう活用するかは、私たちの意思次第です。今こそ、AIと共に現場を進化させ、持続可能な小売の未来をつくっていきましょう。

モバイルバージョンを終了