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顧客と店頭をつなぐ次世代プロモーション「リテールメディア」の強み

亀田製菓ではサイバーエージェントのバックアップを受け、イオンリテールの「お買物アプリ」でスプラッシュバナー広告を配信する販促企画を実施。消費者の購買行動が急激に変化するなか、次世代のプロモーション手法として注目されているリテールメディアが持つ可能性を探る。

リテールメディアは売場に最も近いデジタル施策

(左から)
亀田製菓 営業企画部 販売企画チーム マネージャー 吉田 知樹氏
サイバーエージェント リテールメディア事業本部 局長 川邊 りら氏
イオンリテール 営業企画本部 デジタル企画部 部長 天池 志光氏

サイバーエージェント・川邊(以下、川邊) まず、亀田製菓様にお伺いします。御社は近年、デジタルを活用したマーケティングに注力されていますが、そのねらいはどこにあるのでしょうか?

亀田製菓・吉田(以下、吉田) 米菓カテゴリーは主に50代以上の方に支持されています。今後市場を広げていくにはメインの購買層を維持しつつ40代以下のユーザーを拡大することが求められます。

 当社では若年層向けの商品を開発しつつ、店頭での売場演出に注力して販売していましたが、最近では値上げやお客さまの購買行動の変化により消費のメリハリも出てきて購買につながりにくくなっています。 

 「リーチしたい人に、どうやって商品を届けるか」という課題について、この数年社内でも議論してきましたが、そこにはデジタルの活用が必須だと思っています。小売業様もデジタル活用に力を入れていることから、今回はイオンリテール様のアプリでの広告配信施策を実施させていただきました。

川邊 数あるデジタル施策の中でリテールメディアを選ばれた理由は?

吉田 当社のビジネスは売場に商品が陳列されることで成り立つものですので、小売業様との協業は必要不可欠です。SNSやマスメディア等での情報発信も大切ですが、売場に近いリテールメディアはわれわれメーカーにとって重要なデジタル施策と考えています。

川邊 イオンリテール様では「お買物アプリ」をはじめ、リテールメディアに力を入れていらっしゃいますが、サービスを構築するうえで重視している点をお聞かせください。

イオンリテール・天池(以下、天池) メーカー様から商品を大量に仕入れ、大量に陳列し、POPなどの販促物をつけてお客さまに販売する。こうしたやり方が従来型の小売業のビジネス手法でした。

 しかし消費者の購買行動が急激に変化するなか、今回の亀田製菓様のように「誰に、何を、どんな風に届けたいか」を考えるメーカー様がでてこられました。小売業はお客さまの購買データをはじめ、居住地域や属性情報などさまざまなデータを持っています。こうした顧客情報を蓄積し、可視化し、活用することで、最適なプロモーションを仕掛けることができる時代が来たと感じています。

 リテールメディアには、外部メディアやオウンドメディア、デジタルサイネージなどさまざまなかたちがありますが、お客さまに気持ちよく商品を届けるための新たな手法として非常に期待しています。われわれもメーカー様との協業のなかで、時代に合ったよりよいプロモーションを提供していきたいと思っています。

イオン木曽川店

広告効果を可視化できるリテールメディアの強み

イオン「お買物アプリ」のスプラッシュバナー配信イメージ

川邊 サイバーエージェントでは2017年からこの領域に取り組んでおり、流通企業のデータを活用しメーカーが想定するターゲット層にリーチするためのサービス開発に注力してきました。

 5月に実施した亀田製菓様「ハッピーターン」の販促企画では、イオンリテール様の「お買物アプリ」起動時に4秒間表示されるポップアップ広告「スプラッシュバナー」を配信し、効果検証を行いました。こちらを実施した経緯と、その成果について率直な感想をお聞かせください。

吉田 当社はグループ企業を含めこれまでもイオンリテール様と包括的な取り組みを行ってきましたが、米菓カテゴリー活性化のためもっと貢献させていただきたいと考えたのがきっかけです。またイオンリテール様がアプリをはじめデジタル施策に積極的に取り組んでおられる点、当社が求めている30・40代のファミリー層が多く来店される点も魅力に感じました。

 【図表】のように、広告配信中の購入者数は配信前の約640%と非常に好調でした。また配信終了後に関しても、配信前と比較して120%ほど購入者数が上昇しており、一過性の施策ではなく継続効果にも寄与していることが計測できました。

図表●広告接触者_配信期間前/中/後での購買推移

 ねらっていた40代以下ユーザーの獲得もでき、デジタル施策に懐疑的だった当社の上層部もこの結果に驚いており、大きな手ごたえを感じています。

川邊 広告の配信方法やKPI、効果測定の項目については、亀田製菓様、イオンリテール様双方と協議してきましたが、亀田製菓様が求める実績を出せたことを嬉しく思います。リテールメディアを活用したデジタル施策はまだまだ事例が少なく、亀田製菓様としても大きなチャレンジだったと思いますが、その点はいかがですか?

吉田 当社はデジタル施策についての知見がまだまだ少なく、サイバーエージェント様にご相談しながら社内で検討を重ね、今回の施策にこぎつけました。効果測定に関しては、新規ユーザーやリピート率など後の範例となるようなお客さまの購買データの分析を行うことに重きを置き、社内はもちろんのこと、イオンリテール様にどうすれば伝わるかを念頭に置いて試行錯誤しました。

 プロジェクトを進めるうえで最も重要な点は縦割り組織に横串を挿して取り組むことです。営業本部は「売上」、マーケティング部は「認知率」といったように数値目標は異なりますが、最終的なゴールは既存ユーザーを維持しつつ、新規ユーザーを増やし、小売業様の売上に貢献することです。今回の取り組みは部門を超えた共通の目標を持って動けた点も大きな成果と感じています。

川邊 イオンリテール様は今回の施策についてどのような感想をお持ちですか?

天池 リテールメディアという言葉は歴史が浅く、サイネージなどデジタルメディアを使って情報を届けるといった曖昧なイメージを持つ方がほとんどです。

 ですから今回のようなID-POSに基づく配信と広告効果を可視化し分析するという販促手法は、リテールメディアならではの強みと大きな可能性を感じました。

 「お買物アプリ」はダウンロード数約1491万(23年10月時点)と業界有数のアプリであると自負しています。またクーポンが常時50~100種類掲載されており、購買への影響度が非常に高い点も特色となっています。

 今回のスプラッシュバナーはアプリ立ち上げ時に表示されることもあり、買物時の直前に見られることが多く、購買意思決定時にリーチできる点が魅力です。今回の販促企画で結果を出したことでよい事例ができましたし、今後の売場づくりや販促企画にも生かしていきたいと考えています。

メーカー・流通の協業でより魅力的なメディアへ

川邊 今後、リテールメディアをどのように活用していきたいとお考えですか?

天池 当社は幅広い商品を扱っていますが、食品に特化していうならばEC比率は5%程度で、まだまだリアル店舗での購入が中心です。そうした状況下、われわれが持つリソースはメーカーおよびお客さまのお役に立てると思っています。

 今回の取り組みについてはサイバーエージェント様がフラットな立場で、メーカー様・流通業双方の意見を取り入れ、効果検証を行ってくださったことも成功の要因だと思っています。

 「お買物アプリ」は利用者も多く当社にとって重要なコンテンツとなっていますが、さらに魅力的なメディアにしていきたい。今回、ひとつの事例ができましたが、リテールメディアの本格的な活用は道半ばです。お客さまにとって魅力的なメディアにするためにもメーカー様および代理店と協力体制を取りながら、継続的に取り組んでいきたいと思います。

川邊 当社としては、リテールメディアの構築と広告効果の最大化の両方を実現できるパートナー企業として在りたいと考えています。リテールメディアの活用事例はまだ少なく、手探りで進めている状態です。今後もメーカー様・流通企業様と協力しながら、よりよいサービスを提供していきたいです。

吉田 今回の取り組みを通じ、リテールメディアは米菓カテゴリーの課題解決につながるソリューションであると感じています。今後も小売業様と協力しながら、強みである店頭演出とリテールメディアを活用し、市場の活性化に貢献していきたいですね。