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海外最新トレンド、ローマのHCに学ぶ「ルロイ・メルラン」

6月11~13日、第10回グローバルDIYサミットローマ大会が開かれた。同イベントはEDRA(ヨーロッパDIY協会)/GHIN(グローバル・ホームインプルーブメント・ネットワーク)/HIMA(ホームインプルーブメント製造業協会)による共同開催である。日本からはカインズ(埼玉県)、DCM(東京都)、コーナン商事(大阪府)、グッデイ(福岡県)の経営幹部をはじめ、約50人が参加した。

イタリアのHI市場の特徴

 イタリアのホームインプルーブメント(HI)市場は、DIYインターナショナル社「世界のHI統計レポート2023」によると約63億ユーロ(約1兆円)である。日本市場は約4兆円でそのうち、約半分が日用品などソフトラインの商材が含まれることを考慮すると、イタリア市場は日本の約2分の1の大きさと言える。

 特徴的なのはHI企業の上位3社がすべて外資企業である。

 最大手ルロイ・メルランは仏アデオグループの主力フォーマットの1つで、22年度売上高が約3000億円である。約50店舗をイタリアで展開しており、1店舗当たり平均売場面積が9350㎡と広いのが特徴である。

タリア最大手のHIルロイ・メルラン

 2番手テクノマットも同様にアデオグループ傘下で、プロに特化したフォーマットだ。売上高は約2700億円でルロイ・メルランに続く。

 3番手はドイツの大手HI企業OBIで、イタリア国内の売上高は約800億円。店舗数は56店舗ある。この3社でイタリアHI市場の約6割を占めており、上位寡占が進んでいる。

優れたVMDで1つ上の提案

 ルロイ・メルランは売上の約7割が一般消費者で、約3割がプロである。最も得意としているのはリフォーム、リノベーションで、提案型の売場に多くの面積を割いている。

 では実際、どのような売場づくりを行っているのだろうか。郊外型の大型単独店舗、ショッピングセンターの核テナントとして出店している2フロア型の店舗をそれぞれ紹介する。

 日本のホームセンター(HC)と異なる最大の特徴はビジュアル・マーチャンダイジング(VMD)だろう。あるHC経営幹部は「このVMDはまだ日本でできておらず、参考になる点が多い」と話した。

VMDを意識した売場づくりを行っている

 

 入口から入ってすぐに、リビングを想起させるようなソファとインテリアグリーン、雑貨を組み合わせたシーン提案のコーナーが見られた。その奥にはガーデニングコーナーがあり、天井からグリーンを吊るした空間演出を行う。工具やDIY売場ではゴンドラ什器の上部には遠くからでも、何の売場なのか視認できるように商品をディスプレーしている。

 また、リフォーム売場ではショールームのように、実際のバスルームや収納スペースを想起させるようなブース型の売場を展開する。このような売場づくりは日本のHCではほとんど見られない。

得意とするリフォーム売場。実際の家の中を想起できるようなショールームのような売場になっている

接客ブースが10カ所以上

 ルロイ・メルランのもう1つの特徴は接客である。「OBIなど競合店とどのように差別化しているか」と店長に質問したところ、「商品の選び方から買物後のサポートまでしっかりとスタッフが対応する点だ」と回答が返ってきた。

 その答えは本当だろうと売場からも推察される。売場には随所に相談カウンターが設置されている。視察した2店舗にはそれぞれ10カ所以上設置されていて、日本と異なるのはそこに専属のスタッフがいることである。平日午後の視察だったが、相談カウンターで質問しているお客も多く見られ、同コーナーがしっかり機能していることがわかる。

店内10カ所以上に相談カウンターを設置。平日昼間でも実際に相談しているお客が多い

 同社が得意としているリフォーム売場では予約制でバス、キッチン、タイル、ドアでそれぞれ専門的な知識を持つスタッフに相談できるようにしていた。

 このように売場づくり、接客に手間をかける一方で、効率性も重視する。多くの商品には電子棚札を導入し、価格変更などの作業の省力化を実現。また、欧州最大のHI企業であるアデオグループのネットワークを活用することで、商品を安価に供給する。棚割りはフランス本国のルロイ・メルランをベースにしながら、イタリアの地域特性にも合わせて構成している。