メニュー

アマゾンのドローン配送が拡大フェーズへ!認可された「目視外飛行」とは?

米アマゾン(Amazon.com)は2024年5月末、オペレーターがドローンを目視しない状態で飛行させる「目視外飛行」(BVLOS:Beyond Visual Line of Sight)の許可を連邦航空局(FAA)から得た。これまで同社は米国の一部の都市でドローン配送の試験を実施してきたが、目視外飛行の認可に伴い配送エリアの拡大が可能になった。

認可のカギとなったのは「障害物検知・回避システム」

 アマゾンがドローン配送を開始したのは20年のことだ。米国で航空運送事業許可を取得し、22年にカリフォルニア州ロックフォードとテキサス州カレッジステーションで配送をスタートさせた。さらに、23年には傘下のオンライン薬局「アマゾン・ファーマシー(Amazon Pharmacy)」との連携で、処方薬の配達を始めている。

 一方、こうしたドローンを利用した配達は、オペレーターがドローンを直接目視できる範囲での運用に限られていたため配送エリアの拡大が困難だった。しかし今回、目視外飛行の許可が下りたことで、アマゾンは「顧客向けのドローン配送を拡大するための基盤を築いた」とし、「カレッジステーションでの業務を拡大し、より人口密度の高い地域も配送エリアとしていく」との声明を出している。 

 目視外飛行の認可取得のカギとなったのは、ドローンに搭載された「障害物検知・回避システム」だ。同システムは、障害物検知・回避システムは煙突のような静止物体を認識できるほか、水平方向にある飛行機のような移動物体も検知できる。障害物を特定すると、自動で進路変更し安全に回避する。

 同社は目視外飛行の承認を得るにあたって、まずFAAにシステムの技術情報や技術検証分析データなどを提出した。次にFAAの検査官立ち会いの下で実飛行デモを実施。実飛行デモでは、ドローンを飛行機、ヘリコプター、熱気球とともに飛行させ、それぞれを安全に回避する様子を披露している。FAAは、データと実飛行デモを確認したうえで、テストサイトでの技術実証を検証し、目視外飛行を許可した。

「障害物検知・回避システム」開発の経緯

 アマゾンが「障害物検知・回避システム」を開発した経緯は以下の通りだ。同社は13年にドローン配送システム「プライムエアー(Prime Air)」を研究・開発。19年には約2.3㎏までの荷物を運び、30分以内に届けるように設計した自律飛行型ドローンを披露している。しかし、その後試験中に何度か衝突・墜落事故を経験。そのため、試作機の設計・改良を重ね、障害物検知・回避システムの開発に至った。

 同システムを活用した配達では、40~120mの上空を飛行させるドローンにセンサーとカメラを搭載し、飛行物体や送電線などを回避する。カメラで捉えた映像は、物体を識別するよう訓練されたニューラルネットワーク(NN)に送られる。顧客宅の庭の上空に到着すると空中停止し、地上の構造物や人や動物などの物体を検知。降下経路を妨げていないかを確認する。その後、配達マーカー(荷物の落下地点)の約4m上まで降下して、荷物を投下し、最後に再び高度を上げ、配送センターに戻っていく。なお、顧客は事前にアマゾンのドローン配達サービスに登録し、配達マーカー位置などのチェックを受けておく必要がある。

英国とイタリアでもドローン配達を計画

 米経済ニュース局CNBCなどの海外メディアによると、アマゾンは244月にカリフォルニア州ロックフォードのドローン配送拠点を閉鎖した。アマゾンによると、その理由は「将来を見据え、事業の成長を持続させるためのリソースを確保すること」だという。

 一方で、同社は24年内に米アリゾナ州フェニックス西部の都市トルソンに新拠点を開設するほか、英国とイタリアでもサービスを始める計画だ。25年には米国内の他の都市にも拡大する。これらを通じて、30年までに年間5億個の荷物をドローンで配送することをめざしている。