米国小売市場は、2023年も堅調な成長を示した。ただ、長引くインフレによる消費マインドの低下や消費行動の変化を受け、企業や業態によって明暗が分かれるようになってきた。また、前年からの成長率が過去数年間と比べて見劣りする企業も散見されており、経営環境は目まぐるしく変化し始めている。最新の販売額ランキングをもとに、企業・業態別の最新動向と今後の展望をまとめた。
EC売上をけん引役に市場規模の拡大続く
23年の米国小売の市場規模(自動車、ガソリン等の燃料を除く)は、対前年比3.7%増の4兆3181億ドル(約647兆円)となっており、18年から23年までの過去5年間の年平均成長率は6.4%で推移している(図表❶)。
ユーロモニターによる今後5年間の予測としては、直近1年とほぼ同レベルの年平均3.9%での成長を見込んでいるものの、今後の経済状況(インフレや景況感など)あるいは今年実施される米国大統領選挙の結果などの影響を受けることも考えられる。
昨今、小売市場の成長をけん引しているのがEC売上の拡大で、23年も対前年比8.6%増と成長基調を維持している。小売売上高全体に占める割合(EC化率)は27.5%に上っており、ユーロモニターの予測によれば28年には34.0%を占めるまでになるとされている(図表❷)。
19年から20年のコロナ禍初期においてEC需要が急増し、それに伴いEC化率も急上昇した。22年以降はコロナ前の水準の成長率に戻しており、今後もしばらくは同様の軌道を描き続けると見られる。つまり、コロナ禍を機にEC化が一気に加速するかと思われたが、現実にはそこまでの“急展開”とはならなかった。加えて、コロナ禍での人々の行動の自粛や制限が解除されて人流が戻り、小売におけるリアル店舗の存在意義は依然として高いことが示された。
米小売市場に関してもう1つ触れておかなければならないのが、世界的なインフレの影響だ。
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