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強力なトップダウンで売上急増させるも株価低迷で退任…もう1つのホームデポ物語

Sundry Photography/istock
Sundry Photography/istock

家族的・分権的経営からトップダウンの科学的経営へ

 ロバート・ナーデリ(1948年生)という男がいた。

 ゼネラル・エレクトリック(GE)社において、かのジャック・ウェルチ元CEO(最高経営責任者)が自分の後釜として絞り込んだ3人の候補に残っていた1人だ。

 結局、後継者レースではジェフリー・イメルトに敗れ、GECEOになることはかなわなかったが、2000年に米国最大のホームセンター企業ホームデポに迎え入れられることになった。

 ホームデポは1979年の創業。バーニー・マーカスとアーサー・ブランクの共同創業者とともに家族的で分権的な経営で着実に成長してきた企業だった。

 ナーデリは、創業以来続く伝統的な経営の近代化を図るべく、ホームデポの会長兼CEO就任後の2年間で35人の取締役のうち27人を退職させ、外部からのヘッドハンティングで経営者を集めた。GEのシックス・シグマ経営を取り込み、ひたすらコスト削減に努め、各所において統合化や合理化を進めた。

 その結果、在任期間中、ナーデリは売上高を457億ドルから815億ドル(78.3%増)に伸ばした。

 しかしながら、独裁的な手法で合理化を推し進めたことが災いして、消費者サービスは低下し、結果として株価を低迷させ、企業価値を大きく減らした。

 また株主を無視した株主総会のやり方は、各所から非難された。

約280億円の巨額報酬手に、
追われるように退任した男の末路とは

 CEO就任6年後には退職金2000万ドルを含む21000万ドル(約280億円)を手に入れ、追われるようにホームデポを去った。その巨額さは、またまた非難された。

 どんなに優秀であっても、MBA取得者であっても、商売は理論通りにはいかないということをナーデリは見せてくれた。所詮、頭の良さだけでは小売業の経営者は務まらないという反面教師の良い例である。まあ、頭の良さだけでは務まらないのは小売業の経営者に限ったことではないけれども…。

 その後、ナルデリは投資ファンドのサーベイラスの顧問に就任。ダイムラークライスラーから、サーベイラス傘下に入ったクライスラーの会長に就き、再建に注力するも失敗した。

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