米スーパーマーケット(SM)最大手のクローガー(Kroger)は近年、ネットスーパー事業の強化を図るべく、積極的な投資を行ってきた。その最たる例がネットスーパー専用の大型倉庫(CFC)の設置であり、莫大な投資と時間をかけ、ようやく本格稼働の時を迎えた。コロナ禍でECへの需要が急激に増加しているのは周知のとおりだが、クローガーはCFCを武器にしてリアルとネットの双方で“勝ち組”企業になることはできるか。直近の動向と経営トップの発言から未来を占う。
3年越しにCFCが本格稼働
クローガーは4月14日、ネットスーパーの専用倉庫としてCFC(カスタマー・フルフィルメントセンター)が正式に稼働したことを発表した。
稼働を開始したのは、米中部オハイオ州モンローにある33万5000平方フィート(約9380坪)のCFCである。2018年に資本業務提携を結んだ英ネットスーパー専業のオカドグループ(Ocado Group)が持つAIやロボットをはじめとする自動化技術をフル導入したもので、19年6月に着工、総工費5500万ドル(約60億円)をかけてようやく完成した。すでに3月4日からテスト稼働を始めており、約400人の人員を配置。生鮮食品から日用品まで約5万品目の在庫を保管・処理する能力を持ち、24時間稼働する。
やはり注目したいのは、倉庫内の自動化がどこまで進んでいるかだろう。モンローのCFCでは、最大で1000台以上のピッキングロボットが稼働できるが、今のところは275台が2万7000品目の商品をピッキングしているという。ロボット1台当たり50アイテムを最短3分でピックアップでき、配送準備を完了するまでにかかる時間は5分程度である。
CFCからは、約400台のバンやトラックで半径90マイル(約140km)圏内にある店舗や顧客の自宅に配送。配送車両は冷凍や冷蔵など複数温度帯に対応しており、1台当たり最大で20件分の注文商品を運搬する。
モンローCFCはオハイオ州だけでなく、ケンタッキー州やインディアナ州の一部も配送エリアとしてカバーする。クローガーは同CFCについて、中期的にリアル店舗のおよそ20店舗ぶんに当たる年間6億~7億ドルの収益をあげ、4年後には黒字化を達成したいとしている。ちなみにクローガー社内では、オカドとの提携関係も踏まえてか、CFCを親しみを込めて「オカド・シェド(Ocado Shed)」とも呼んでいるようだ(シェドは「納屋」「小屋」といった意味の単語)。
投資対効果に疑問の声もCFCの設置拡大を継続
CFCは、
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