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アングル:ユーロ圏、ワクチン接種進まず景気回復も米国に遅れか

独ウォルフスブルクの自動車工場
2月5日、 ユーロ圏諸国は米英に比べて新型コロナウイルスワクチンの接種が遅れているが、このままではその影響で景気回復でも後れを取る可能性がある。写真は2020年4月、独ウォルフスブルクの自動車工場で代表撮影(2020年 ロイター)

[ロンドン 5日 ロイター] – ユーロ圏諸国は米英に比べて新型コロナウイルスワクチンの接種が遅れているが、このままではその影響で景気回復でも後れを取る可能性がある。

国際通貨基金(IMF)は先月、中国の力強い景気回復をたたえ、米国と日本の経済は今年末までにコロナ禍前の水準に戻ると予想。しかしユーロ圏がこれに追いつくのは来年にずれ込むとの見通しを示した。

バイデン米政権が1.9兆ドルの追加経済対策を目指しているのに対し、欧州連合(EU)は新型コロナ復興基金をどのプロジェクトに使うかを未だに交渉中だ。

一方、EUはワクチン接種の遅れと変異ウイルスへの懸念から、感染拡大抑止のための制限措置を緩和するのが難しくなっている。

S&Pグローバル・レーティングスのEMEA(欧州・中東・アジア)首席エコノミスト、シルベイン・ブロイヤー氏は「ウイルスの変異とワクチン接種との競争が続いている。そうした中、ユーロ圏諸国はワクチン接種で後れを取っているのが現実だ」と語った。

発表されたデータによると、ユーロ圏の景気は1月に一段と悪化した。制限措置がサービス業を直撃した格好。多くの欧州諸国では、現在の制限措置が3月か、あるいはそれ以降、例えば一部措置は9月半ばまで続くとの見方もある。

GDPを押し下げ

EUは昨年12月27日に鳴り物入りでワクチン接種を開始したが、未だに実施が進まず、ワクチン不足にも苦しんでいる。

貿易保険グループ、ユーラー・ハーミーズの計算では、EU主要国のワクチン接種率は1日当たりで人口の平均0.12%と、英米の4分の1にとどまっている。

「アワ・ワールド・イン・データ」によると、EU諸国でこれまでに1回目の接種を受けたのは人口の約3%なのに対し、米国は9%、英国は14%に達している。

ユーラーによると、これは5週間の遅れに相当する。このまま是正されなければ今年の域内総生産(GDP)は900億ユーロ近く失われ、四半期成長率にして2%ポイントの押し下げとなる計算だ。

同社は「(ワクチン接種)競争で最初にゴールした国々では、今年後半に強い正の乗数効果が働いて消費と投資を押し上げるだろう。一方、接種の後方走者は危機モードから抜け出せず、経済的にも政治的にも多大な代償に直面する」とみている。

欧州の景気回復ペースが遅いと、経済に「傷跡」、つまり長期的な打撃が残る恐れがある。特に心配なのは若年者の長期失業者だ。こうした失業者は2008/09年の世界金融危機後に増え、ようやく近年になって改善し始めたところだった。

欧州有力シンクタンク、ブリューゲルの推計によると、EU諸国では昨年第2・四半期に15―24歳の労働者の失業率が前年同期の14.9%から16.4%に上昇。一方、55―64歳の層では5.1%から4.8%へと、逆に下がっていた。

金融政策がかい離

ユーロ圏の景気回復が遅れると欧州中央銀行(ECB)としては、米景気の回復で世界的に金利が上昇した場合でも超金融緩和策を維持するという難しい状況に追い込まれかねない。

欧米の金融政策の分離状態は、既に市場に表れ始めている。10年物米国債利回りが年初から20ベーシスポイント上昇した一方、ドイツの10年物国債利回りはマイナス0.46%前後で推移している。

ジェフリーズの欧州エコノミスト、マルチェル・アレクサンドロビッチ氏は「今はどの中銀も同じ事を行っているが、22年にはECBが依然としてより緩和に傾くことで、他の中銀との政策のかい離を巡って多くの問題点が出てくるだろう」と述べた。

もっとも、欧州諸国は米国ほどではないにせよ積極的な財政・金融政策を行っているため、世界金融危機の後に比べれば回復の遅れが小幅にとどまるかもしれない。

ベレンバーグのアナリストらは、経済がコロナ禍前水準への回復に要する期間はユーロ圏が約9四半期、米国が6四半期と予想。世界経済危機の後はユーロ圏が回復に7年かかった一方、米国は3年半で元に戻っており、当時に比べると差は小さくなるとみている。