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アメリカ発酵飲料市場 スタバもコカ・コーラも注目する、モンゴル発祥の“コンブチャ”とは!?

世界では、何世紀にもわたって、発酵食品が楽しまれている。近年、アメリカでも発酵食品が見直され、その市場はここ数年、急成長している。なかでも大きな成長を示している発酵飲料について、その急拡大の背景に迫るとともに、市場拡大をけん引する2つの発酵飲料を巡る市場の動きをまとめた。

アメリカにおける発酵食品の消費量は2018年、対前年比149%と大幅に増加したなか、発酵飲料市場をけん引するのがコンブチャだ

1年で1.5倍拡大したアメリカの発酵食品市場

 アメリカの発酵食品のリーダーとも呼ばれているSandor Ellix Kats氏が、2012年に出した『Art Of Fermentation』(邦題「発酵の技法―世界の発酵食品と発酵文化の探求―」)という本が、ジェームズ・ピアード賞(料理界のアカデミー賞)を受賞し、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリスト入りしたのを皮切りに、アメリカの健康志向の高い層の間で、発酵食品は体に良いという認識が広がってきたとも言われている。

 また、一般的にもプロバイオティックス(腸内フローラのバランスを改善することにより、人に有益な作用をもたらす生きた微生物―英国の微生物学者Fullerによる)の効果が幅広く認知されるようになってきた。プロバイオティックスは腸内細菌を健やかに保つ効果があるとされ、発酵食品の中に多く含まれているといわれている。「“プロバイオティックス入り”と書くだけで、製品の売上が上がる」と広告の消費者保護を専門にするサンディエゴの検察官Tim Bloodは今年、Women’s healthの取材で語った。(https://www.womenshealthmag.com/health/a19902426/know-before-taking-probiotics/

発酵飲料市場をけん引する、モンゴル発祥の“コンブチャ”とは!?

 クラウドベースのレストラン管理プラットフォームであるUpserveの調査によれば、アメリカにおける発酵食品の消費量は2018年、対前年比149%と大幅に増加した。中でもコンブチャの消費量が、特に増加していると発表した。

 コンブチャとは、日本の昆布茶とは違い、紅茶キノコのことだ。元々はモンゴル発祥の飲み物で、砂糖を加えた紅茶や緑茶などのお茶に、スコビーと呼ばれる酵母由来から生まれた発酵菌と酢酸菌を入れて発酵させた植物性の飲み物のことだ。コンブチャが発砲する発酵の過程で、プロバイオティックスが発生する。

 コンブチャはマドンナやミランダ・カーなどのハリウッドセレブも愛用していることから、人気に火がついた。Grand View Researchの調査によれば、世界のコンブチャの市場規模は2025年までに54億5,000万ドル(約6000億円)に達する勢いだ。特にアメリカでは昨年、7億2,880万ドルの売上があり、コンブチャとノンアルコールの発酵飲料は、現在ドリンク全体の売上の10%を占めており、3番目に大きいカテゴリーとなっている。

スタバもコカ・コーラもコンブチャに注目

コンブチャブームは拡大しており、最近ではコンブチャ専門のバーも誕生している

 Journal of Medicinal Foodが2014年に発表した論文によれば、コンブチャは発酵過程に生まれる代謝産物や抗酸化物質が免疫を高め、血行の改善や整腸作用などの健康を促進できる可能性があると結論づけている。マンゴーや紅茶味、ミント味など味も豊富にあるが、ベリー系と生姜味が特に人気だという。最近は食料品店だけではなく、コンブチャの専門バーが出てきたり、特にビーガンやオーガニックを掲げていないレストランやカフェでも、コンブチャがドリンクメニューに一部入ってきている。

 昨年、人気コーヒーチェーンのスターバックスでも、コンブチャの独自ラインを作り、アメリカの一部の食料品店で販売し始めた。その年、スターバックスの最高経営責任者Kevin Johnson氏はCNNのニュースで「スターバックスには、これからもっと健康的な飲み物を売って欲しい。消費者も、機能性飲料を探していると思う。コンブチャはまさに消費者が求めているものだ」と語った。また、アメリカ飲料大手コカ・コーラも、去年MOJOコンブチャ という飲料を手がけるオーストラリアのコンブチャメーカーOrganic & Raw Tradingを買収した。コカコーラは、ブランドのポートフォリオを拡大し、ソーダに替わる、より健康的なブランドに投資をしている。

急拡大するケフィア ヤギのミルクや豆乳からできたものも

コンブチャに次いで人気があるのが、ヨーグルトに似た発酵飲料のケフィア

 コンブチャに次いで人気があるのが、ヨーグルトに似た発酵飲料のケフィアだ。一般的なヨーグルトは乳酸菌のみで発酵して作られているのに対し、ケフィアは乳酸菌と酵母で、主に牛乳を発酵させた発酵乳で、長寿地域として世界的にも有名なコーカサス地方(黒海とカスピ海に挟まれたエリア)では、昔から常食されてきた。アメリカでは、牛乳の販売量が年々減少傾向にあり、乳製品の産業が急速に衰退してきているが、食品調査の世界大手Innova Market Insightsの調査では、発酵乳製品の売上は2011年から2016年の間に、3倍以上伸びているという。

 最近では、牛乳で作ったケフィアだけではなく、ヤギのミルク、アーモンドミルク、ココナッツミルク、豆乳などからできたケフィアも登場。ケフィアはヨーグルトよりも、プロバイオティックスの種類を多く含んでいて、整腸作用、美肌効果、免疫力の向上などに有益だと言われている。次のトレンドとして、UpserveのRyanさんは、「ウォーターケフィアが流行ると思う」と話す。ウォーターケフィア(別名:黒砂糖キノコ)は、ウォーターケフィアグレインと呼ばれる種菌から作られる発酵プロバイオティックス飲料で、ほんのりした甘みと、ヨーグルトに似た酸味があるのが特徴だ。30種類以上の有益なバクテリアと酵母、ビタミンC、ビタミンBなどが豊富に含まれている。

                  

 コンブチャもケフィアもヘルシーな飲料として、アメリカの小売市場では完全に定着している印象だが、昔から数多くの発酵食品がある日本でも、こうした発酵飲料が地位を築くことはできるのか、注目したい。