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市場規模拡大、寡占化進行!小売業12業態、最新市場規模&占有率2024

市場占有率1280

人流回復とインフレで市場規模は回復・拡大

 過去数年にわたり、小売業の業績によくも悪くも大きな影響を与えたコロナ禍がついに収束に向かい、かつての日常が戻りつつある。巣ごもり需要のあった一部業態では反動減が残るものの、人流が回復したことにより小売業の業績は回復基調にある。中でも、百貨店や総合スーパー(GMS)など、コロナ期間中に行動制限の影響を大きく受けた大型店業態はとくに大きく業績を回復させており、過去最高業績を更新したところもあった。

 2021年頃から続く物価上昇も小売業の業績押し上げに一役買っている。とくに食品では22年後半から値上げラッシュが続いており、店頭価格への転嫁が比較的順調に進んだこともあって一品単価が大きく上昇。23年度決算では、食品を扱う小売業の多くが売上を伸ばした。ただ、インフレによって建築費や物流費、水道光熱費や人件費といった各種コストも高騰しており、コストコントロールできた企業とそうでない企業とで利益面の格差が広がっている。

 そうしたなか、各業態の市場規模、マーケットシェアはどう変化したのだろうか。ダイヤモンド・チェーンストア誌毎年恒例の「市場占有率」特集では、小売を中心とした12業態の市場規模および売上上位企業の寡占化率をまとめている。なお、本特集は例年、ダイヤモンド・チェーンストア誌5月1日号で行っていたが、本年から10月1日号に移行した。これに伴い、掲載企業の決算期を最新のものに更新するとともに、外食と通信販売を除いた10業態については22年度、23年度と2カ年の市場規模とマーケットシェアを掲載している。

 23年度の12業態の市場規模に注目すると、巣ごもり需要の反動減の影響が続いたホームセンターを除く11業態が22年度から市場規模を拡大している。主要小売のマーケット変化を見ていこう。

小売主要7業態の市場規模の変化は?

 ダイヤモンド・チェーンストア誌調査による、食品スーパー(SM)業態の23年度の市場規模は19兆4296億円で、前年度から3.2%増加した。SMは、多様な食文化や商習慣を背景に、地域に根ざしたローカルチェーンが存在感を持つ非寡占化状態が長年続いてきたが、近年はイオン(千葉県)を筆頭とする大手グループによる再編が進行中で、23年度の上位10グループの合計シェアは約45%まで高まっている。

 GMS業態の市場規模は同4.8%増の5兆1694億円だった。23年度は経済正常化による業績回復効果があったほか、イトーヨーカ堂(東京都)が22年度までSM業態としてカウントしていたヨークを吸収合併した影響で市場が拡大した。ただ、後述するイトーヨーカ堂の店舗譲渡などもあり、次年度以降は縮小に転じる可能性が高そうだ。

 大手3チェーンのシェアが9割を超える超寡占市場が広がるCVSの市場規模は、同4.3%増の11兆6593億円だった。大手中心に業績が好調で、3年連続の市場拡大となっている。

 近年最も成長している業態であるドラッグストア(DgS)の23年度市場規模は、同5.6%増の9兆2022億円で初めて9兆円を突破した。23年度決算では、ウエルシアホールディングス(東京都:以下、ウエルシアHD)に続くかたちでツルハホールディングス(北海道:以下、ツルハHD)とマツキヨココカラ&カンパニー(東京都)が1兆円チェーンの仲間入りを果たした。大型再編が相次ぐDgSでは上位集中が急速に進んでおり、上位10社のシェアは79.7%と8割が目前に迫っている。

 小売業態で最も高い伸び率を示したのが百貨店市場だ。23年度の市場規模は同9.2%増の5兆4211億円で、コロナ前19年度の水準まであと少しのところまできている。冒頭で述べた人流回復にインバウンド需要の復活も手伝って、業績を急速に回復させた百貨店各社。ただ、そうした恩恵を受けたのは都市部の一部百貨店に限られ、地方百貨店では店舗閉鎖が相次いでおり、この先の市場成長は不透明だ。

 一方で、市場を縮小させたのがホームセンターだ。巣ごもり需要の反動減、インフレなどの要因により、23年度の市場規模は同0.9%減の4兆21億円と3年連続の市場縮小に沈んだ。家電量販店も反動減の影響が色濃く、節約志向による買い控えも広がっていることから各社の業績は停滞。市場規模は同0.8%増の9兆8190億円と微増にとどまった。

経営統合にエリア分割、大型再編が目白押し

 各業態のマーケットシェアはこの先どう変化していくのだろうか。小売業界では、この先も市場占有率に大きな影響がありそうな再編が目白押しだ。

 その筆頭が、DgSトップ2社による経営統合だ。ウエルシアHDとツルハHDは24年2月、経営統合に向けた協議を開始することを発表した。イオン主導のもとファンド経由で段階的にツルハHD株を取得し、27年末までに統合を完了させるという。最新期決算の両社の売上高合計は2兆2448億円で、仮に統合が実現すれば、23年度のDgS市場換算で24.4%のシェアを握る巨大DgS連合が誕生する。DgSはコモディティ商品の取り扱いが中心で、スケールメリットを生かした大量一括仕入れが競争力に直結する。大型再編により競争が激化し、さらなる再編を呼ぶ可能性は非常に高い。

 さらにイオンはSMでも再編を仕掛けており、23年11月にいなげや(東京都)を連結子会社化。この先は24年11月をめどにいなげやとユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都:以下、U.S.M.H)が経営統合し、いなげやはU.S.M.Hの傘下に入る予定だ。これにより、国内最大規模、売上高9000億円超のSM連合が生まれることになる。

 特定のエリアの店舗を他チェーンに譲渡する「エリア分割」の動きも広がっている。

 グループ戦略の転換を進めるセブン&アイ・ホールディングス(東京都:以下、セブン&アイ)はイトーヨーカ堂の店舗の閉鎖を進めており、一部の閉鎖店舗は同じセブン&アイグループのヨークベニマル(福島県)、ダイイチ(北海道)のほか、急成長チェーンのロピア(神奈川県)親会社であるOICグループ(神奈川県)が承継することが決まっている。

 このうちロピアが承継するのは7店舗で、24年9月時点で青森に初出店しており、24年中に北海道、25年中に岩手、新潟、長野にそれぞれ進出予定だ。ロピアは近年猛烈な出店攻勢で売上規模を拡大しており、近い将来、SM市場の上位シェア争いに食い込んでくる可能性が高い。

首都圏に経営資源を集中させるべく、店舗閉鎖を進めるイトーヨーカ堂。写真は「イトーヨーカドー五所川原店」(青森県五所川原市:24年3月末閉店)を転換して24年8月にオープンした「ロピア五所川原店」

業界関係者が驚いた“再編劇”とは

 もう1つ業界関係者を驚かせたのが、西友(東京都)のエリア再編だ。西友は24年8月に九州5県で展開する69店舗をイズミ(広島県)傘下のゆめマート熊本(熊本県)に、10月には札幌市内の9店舗をイオン北海道(北海道)にそれぞれ売却している。これにより西友は北海道と九州から撤退し、今後は本州に経営資源を集中させるという。

 企業買収に詳しい業界関係者によれば、「一般的な企業買収では店舗の不動産賃貸借契約もそのまま引き継ぐというケースが多いが、店舗譲渡というかたちであれば譲渡する側が違約金を払って店舗を引き渡すということもある。つまり、譲り受ける側に(M&Aと比べて)コスト面のメリットがある」と話す。再編が進んでいく過程では、店舗譲渡による「エリア分割」も今後見られるかもしれない。

 新たな再編の火種となりそうなのが人件費や人手不足などの人に関わる問題だ。小売業界では24年の春闘で2年連続の過去最高水準の賃上げが行われた。

 さらに政府は30年半ばまでに最低賃金を1500円まで引き上げる目標を掲げている。つまり、最低時給が現在の約1.5倍になる計算で、小売業は「時給1500円時代」を前提としたビジネスモデルを構築しなければならない。原材料費や物流費といった各種コストも含めて自社ビジネスの収益構造の抜本的な見直しを迫られるなかで、さらなる再編・淘汰に発展していく可能性もありそうだ。

 この先も事業環境が激変していくことが確実視されるなか、シェア争いの主役になるのはどの企業か。本特集で示したマーケットシェアから読み解いてほしい。

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