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苦境のTポイントに急成長のPayPayポイント……共通ポイントサービスの現在地

経済産業省が2022年6月1日に発表した2021年のキャッシュレス決済比率は32.5%となった。また、矢野経済研究所の推計では2021年度のポイントサービス市場の規模は2兆1001億円で、2022年度には2.5%増の2兆1533億円を見込んでいる。
政府はキャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度、将来的には8割までに上昇させるという目標を掲げている。コロナ禍を経て、非接触・非対面での購買行動が増加しており、キャッシュレス比率は今後も高まることが予想される。
そのような環境下で業種や業態に縛られず、日常生活において現金ではなくキャッシュレス決済を行う上でのメリットとして挙げられるのが「ポイント還元」である。「ポイ活」という言葉が定着してきていることからも、企業が提供するポイントサービスの充足化は経済活動や購買体験の変化に伴いより一層注目されている。本稿では、共通ポイントサービスに着目し、Tポイント・楽天ポイントを中心に、その他ポイント事業の現状と動向についてまとめていく。

苦境のTポイント、SMBCとの提携で起死回生なるか

 「TSUTAYA」などを擁するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(東京都:以下、CCC)が2003年にサービスを開始した「Tポイント」は、国内共通ポイントのフロントランナーともいえる存在だ。

 直近の大きな動きとしては、2012年6月から提携関係にあったヤフー(東京都)が、22年3月末をもって各種サービスで行ってきたTポイントの付与および利用を終了した。一部サービスでのTポイント利用は継続されるが約10年間の蜜月は終了した。

 そのほかにも近年は、18年末に三越伊勢丹(東京都)グループが、19年にはドトールコーヒー(東京都)がTポイントの扱いを終了するなど有力加盟企業は次々と離脱。同じく19年にはファミリーマート(東京都)もTポイント運営会社への出資を引き揚げ、「楽天ポイント」「dポイント」を導入して「マルチポイント」化するなどTポイントは苦しい状況にあるとされていた。

 そうした中、CCC は2022年10月にSMBCグループとの資本・業務提携を発表した。SMBCグループのカード会員数5200万人(「Vポイント」会員2000万人)に加えCCCグループのTポイント会員7000万人という膨大な会員数を誇る新ポイントサービスが2024年春頃より開始する予定である。

 キャッシュレスの拡大およびVisa加盟店で貯まるVポイントの強みと提携店舗15万店、5000を超える提携企業で貯めて使えるTポイントの強みを活かし、ポイントと決済分野における新たな経済圏構築に向けて再始動している。

支持絶大の楽天ポイント、各種小売業との連携も!

 J.D.パワージャパンが行った「2022年共通ポイントサービス満足度調査」、MMD研究所の「2022年10月経済圏のサービス利用に関する調査」と、最近の消費者調査で軒並み人気トップのポジションにあるのが、楽天グループの「楽天ポイント」だ。

 人気の要因は、「楽天経済圏」の確立である。「楽天カード」「楽天Edy」「楽天ペイ」などでの支払いでポイントが付与されるだけでなく、「楽天市場」や「楽天トラベル」などの楽天グループが提供するサービスを利用することで、段階的にポイント還元率が向上するのが楽天ポイントの最大の特徴だ。

 直近では、小売との提携が続いている。2022年12月1日より首都圏を中心に88店舗を展開する食品スーパーのコモディイイダ(東京都)において楽天ポイントカードおよび楽天Edyが使用可能になった。また、山口県を中心に中国・九州地方で89店舗のSMチェーンを展開する丸久でも2022年12月より楽天ペイアプリによるコード決済が利用可能になっておる。

 2022年7月には、楽天ポイントの累計発行ポイント数が3兆ポイントを突破しており、昨今の断続的な商品の価格高騰や経済の先行きが不安定であるほど、生活防衛という観点から「楽天経済圏」の積極利用やポイ活が勢いを増すことも想定される。

存在感増すPontaポイントとdポイント

 三菱商事やローソン(東京都)、KDDIなどが共同出資するロイヤリティマーケティング(東京都)の提供する「Pontaポイント」も有力ポイントの1つ。2022年11月末の会員数は1億1000万人超で、提携店舗数は26万店舗に上る。

 ローソンを中心軸とした共通ポイントであるPontaポイントだが、直近では阪神阪急百貨店(大阪府)やイズミヤ(大阪府)などを運営するエイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府)と2022年11月よりデータマーケティングで協業することを発表している。

 NTTドコモ(東京都)が提供する「dポイント」も近年その存在感を大きくしている。ドコモユーザーで携帯電話の通信料金の支払いでポイントが貯まるという利便性もあって、ユーザーが深く定着しているのを強みとするdポイント。成長を続けるフリマアプリ「メルカリ」との連携を皮切りに、実店舗の加盟店拡大のみならず今後はECでの連携拡大も視野に動いている。

PayPayポイントも急拡大中!

 これらポイント大手4社に加え、昨今勢いを増しているのが「PayPayポイント」である。ソフトバンクグループとZホールディングス(東京都)が要するスマホ決済の「PayPay」は、2018年のサービス開始時から「100億円あげちゃうキャンペーン」をはじめとした大規模なポイント還元キャンペーンを展開し、利用者および知名度を高めてきた。

 2020年7月からは、自治体とPayPay(東京都)が対象店舗として指定する加盟店で「PayPay」を利用すると20~30%のPayPayポイントを付与する「あなたのまちを応援プロジェクト」を全国自治体と発足。同プロジェクトは2023年1月以降も継続される予定で、すでに416の自治体でキャンペーンの実施が決定。2回目以降のキャンペーン実施を決めた自治体は222、全国46都道府県(2022年11月30日時点)、374万カ所超(2022年6月時点)となり、地方経済の活性化と基盤構築を着実に進めている。

 直近では、ヤフー、LINE(東京都)、PayPayの3社で、ポイントマイレージ型の販促プラットフォーム「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ」を2023年3月に開始している。サービスの概要はこちらで解説しているが、商品の購入に応じてPayPayポイントが還元されることになるため、さらなるサービス拡大が期待される。

 キャッシュレスの加速と生活様式の変化、巣ごもりからの消費回復によって実店舗とオンラインのシームレスなつながりは今後いっそう進んでいく。そうしたなかで、利用者に「お得感」を訴求する手段として、共通ポイントが果たす役割は大きい。