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異変!上場小売業決算まとめ 営業収益ランキングトップ10

決算ランキング大

コロナ禍が直撃した小売業の2020年度決算(20年4月~21年3月に迎えた本決算)では、巣篭もり需要をとらえた食品スーパーをはじめ、ドラッグストアやホームセンターなどコロナ禍に伴うニーズ急増に対応できた業態が業績を伸ばした一方で、総合スーパーや百貨店など時短営業や休業要請のあった業態は壊滅的な打撃を受けている。本稿では、2021年7月1日号特集「決算2021ランキング」からデータの一部を抜粋し、営業収益上位企業の動向を見ていきたい。

上場小売業上位10社の顔触れ

 「ダイヤモンド・チェーンストア」誌では、毎年71日号の「決算ランキング」特集で、上場小売業(外食を除く)の営業収益ランキングを掲載している。

 ランクインした企業の顔ぶれを見てみると、国内小売最大手のイオン(千葉県)を筆頭に、CVS大手3チェーン、国内アパレル最大手のファーストリテイリング(山口県)、家電量販店最大手のヤマダホールディングス(群馬県)、「ドン・キホーテ」を擁するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(東京都)と17位までは前年度から変化していない。

 ただ、8位以下の順位は大きく変動しており、8位には前年度11位だった家電量販店大手のビックカメラ(東京都)がランクインした。都市部で店舗展開するビックカメラは、インバウンド消失や客数減少、臨時休業などによって、208月期決算では、減収・営業減益に沈んだものの、前年度8位の三越伊勢丹ホールディングス(東京都:以下、三越伊勢丹HD)、同9位の髙島屋(大阪府)、同10位のエイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府)と、コロナ禍が直撃した百貨店勢が後退したことで順位が繰り上がっている。

 9位には、前年度12位だったツルハホールディングス(北海道)が浮上。10位には、前年度から順位を下げた三越伊勢丹HDがつけている。

コロナ禍直撃で業態間格差が鮮明に

 ランキング上位企業の動向を見ていくと、首位のイオンの21年2月期業績は、営業収益が前期からほぼ横ばいの86039億円、営業利益は同30.1%増の1505億円だった。

図表●上場小売業営業収益ランキングトップ100

社名 営業収益 増減 営業利益 増減 決算期 ROA 業態
イオン 8,603,910 0.0 150,586 ▲ 30.1 21/2 1.2
セブン&アイ・HD 5,766,718 ▲ 13.2 366,329 ▲ 13.7 21/2 5.5
ファミリーマート 2,764,356 ▲ 6.8 43,230 ▲ 21.5 21/2 ▲ 0.5 CVS
ローソン 2,349,704 ▲ 6.3 40,876 ▲ 35.1 21/2 2.8 CVS
ファーストリテイリング 2,008,846 ▲ 12.3 149,347 ▲ 42.0 21/8 6.9 AP
ヤマダHD 1,752,506 8.7 92,078 140.2 21/3 8.2 CE
PPIH 1,681,947 26.6 75,997 20.4 20/6 5.8 SP
ビックカメラ 847,905 ▲ 5.2 12,066 ▲ 47.4 20/8 3.4 CE
ツルハHD 841,036 7.5 45,013 7.6 20/5 11.8 DgS
三越伊勢丹HD 816,009 ▲ 27.1 ▲ 20,976 21/3 ▲ 1.4 DP

単位:百万円、% 
※連結対象子会社は親会社の下に順位をカウントせずに掲載
※CVSの営業収益はチェーン全店売上高を使用
※ファミリーマート、ファーストリテイリングはIFRS
※時価総額は2021年6月4日株価終値から算出

 GMSを中核に、SMDgSCVSHC、各種専門店と多数の業態を展開するイオン。グループの主要上場小売11社の業績を見ると、図表の業態別業績と同様に、業態によって大きく明暗が分かれていることがわかる。

 好調だったのは、SMDgSだ。首都圏におけるSM事業の中核をなすユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都:以下、U.S.M.H)の212月期業績は、営業収益が同6.1%増の7338億円、営業利益は前期から約2.1倍の191億円だった。巣ごもり需要の恩恵を受けて業績が大きく伸長した格好だ。

 SM事業会社も増収・営業増益を達成。DgSのウエルシアホールディングス(東京都)、HCのサンデー(青森県)も、営業収益・営業利益ともに前期実績を大きく上回った。

 一方で、中核企業のイオンリテール(千葉県)の営業収益は、同10.3 %減の19672億円で、218億円の営業赤字を計上。CVSのミニストップ(千葉県)、カジュアル衣料のコックス(東京都)、靴専門店のジーフット(東京都)も減収・営業赤字となっており、業態間格差が鮮明となっている。

 2位のセブン&アイ・ホールディングス(東京都:以下、セブン&アイ)の212月期業績は、営業収益が同13.2%減の57667億円、営業利益が同13.7%減の3663億円の減収・営業減益だった。

 祖業のGMS、イトーヨーカ堂(東京都)は減収・営業増益と営業利益は前期を上回ったものの、売上規模を考慮すると前期に続いて低水準のままだ。百貨店のそごう・西武(東京都)は、減収・営業赤字となっている。

 そのほか、「決算ランキング2021」特集では、ROAROE、総資産回転率、売上総利益率、在庫回転率、時価総額といった経営指標のほか、既存店売上高や期末店舗数といった小売経営において重要なデータを主要業態別にまとめている。

 ここでは、その中から企業の収益性を示す、ROAに注目してみたい。「総資産経常利益率」であるROAは、「企業に投下された総資産を使ってどれだけ効率よく収益(経常利益)を得ているか」を示し、企業の収益性を評価する指標として広く使用されている。

 図表で示した企業のROAを見ると、セブン&アイ傘下のセブンイレブン・ジャパンが13.8%と最も高かった。セブンイレブンは、212月期決算で減収・営業減益となったものの、収益性の高さは健在で、食品を扱うリアル小売ではトップクラスの水準にある。もちろん同社をはじめとするフランチャイズ方式のチェーンは自前で資産を使うことなく効率的に店数を増やし、利益を増やせるので、直営の小売業よりもROAが高くなる傾向がある。

 「決算2021ランキング」特集では、通信販売企業を含めた全上場小売業のROAランキングを掲載している。セブンイレブンを超えるROAを叩き出したのはどんな企業だったのか。本特集を参照されたい。

 また、特集内では時価総額のランキングも掲載している。株価に発行済み株式数をかけあわせて算出する株式時価総額は、企業価値を評価する指標として広く知られている。

 小売業の時価総額トップ(202164日の株価終値から算出)は、営業収益ランキング5位に入ったファーストリテイリング(山口県)だ。212月には、世界最大の衣料品専門チェーンであるスペインのインディテックス(Inditex)を超え、初めてアパレル時価総額世界首位に立った同社。昨年に続いて、本特集の時価総額ランキングでもトップとなっている。2位はセブン&アイ、3位にはイオンがそれぞれランクインした。

 全体を見ると、営業収益ランキング上位の企業が時価総額ランキングでも上位につけているが、神戸物産(兵庫県:時価総額ランキング8位)のように、それらの企業ほどの売上規模ではないものの、時価総額ランキング上位に入っている企業もある。株式市場から高く評価されているのはどの企業か。こちらも本特集掲載データをご一読いただきたい。

 2021年度決算の焦点となるのは、コロナ禍収束の行方だ。

 商業施設に対する営業短縮要請がこの先も継続されればGMSや百貨店などは引き続き大きな影響を受けることになるだろう。

 消費者の価格感度の高まり、財布の紐が固くなっていくことも懸念される。SMをはじめ、巣ごもり特需に沸いた業態は、21年度決算ではその反動減が待ち受ける。また、コロナ禍が一定程度まで収束した場合、「回復する消費が、小売ではなく、旅行のようなサービスに向かうのではないか」という見方もある。

 各業態各社の2021年度決算はどうなるかは現時点ではまったく見通せず、アフターコロナの勝ち組はどの業態になるのかはまだ誰にもわからない。不透明な状況に備え、次ページからまとめている各業態の業績指標を再確認しておきたい。

 

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